自称「孤高」の松田えいるは友達がいない2話

麻麻

第2話 お友達になってあげる!



昨日の嵐が通り過ぎ、翌日は晴れだった。

とにかく雨が嫌なのは人間も猫も同じである。


ガサガサと夜のアパートの脇にあるゴミ捨て場のゴミを噛んで何か食べ物ないかと1匹の毛玉が漁る


その後から『お前野良か?』と中年の雄猫が声をかける。


『のらって?』

そう聞くとその猫は

『1人かって聞いているんだ』と言ってきたから

『1人じゃないわ』と答えた。


すると雄猫が不思議そうに

『1人じゃねえか?』と聞いてきた。


『ちがう。ウンメイノヒトを探しているの』

と言うと『番が欲しいって事か?』

と聞いてくる。しかし今は梅雨。猫の恋の時期には遅い。


『ちがう。人間のお友達を探しているの』と言うとおじさん猫は冗談だろうと笑った。


『よせよ、人間なんて。お前捨てられたんだろう』

『なんのこと?』と聞き返すと『お前人間に捨てられたんだろう』

そうだろう、そうだろうとおじさん猫は笑っている。


『ちがうわ。人間のお友達になってくれる人を探しているの。

そしてその人とずっと暮らすの。だから1人じゃないわ』


そう言うとおじさん猫はまた笑って

『そいつぁ無理だな』

と自信満々に言い切る。


『なんで?』と聞くと

『まず、お前は汚い。いつから野良になった?』


(いつからだっけ?)と考えていると

『ざっと2、3週間だろう。お前にしては上手くやってんじゃね。お前トロそうだもんなあ』と

ジロジロおじさん猫はあたしを見ながら話す。


『汚いと人間に好かれない?』


汚いと言われたからあたしはからだをなめてキレイになろうとした。


『お前みたいな奴は変わり者にしか好かれねえ』

『変わり者?』



『あ、でもいるなあ変わり者』


『どこに?』


『やめておけ!変人がいるって言っただけだ。

ジッと俺たちを見つめて敵か味方かも分かんねー』


その言葉を聞く前にあたしは走り出す。

おい!待てとさっきのおじさん猫の声が後ろから聞こえた。


『待っていて、変わり者さん』

『あたしがお友達になってあげるんだから!』


そういってあたしはお月様の方向に走り出した。


えいるは魔女宅を見ていた。

「ジジかわええ」


えいるは魔女宅が好きだ。



好きな理由は様々だが理由の一つに『黒猫』がある。


しかし実家の祖母がアレルギーなので実際に飼った事はない。


両親に小さい頃猫を飼いたいとせがった時もごめんねと言われたっきり。

唯一、金魚は飼わせてもらった。


黒猫のいいとこはなんと言っても「孤高」なところである。


それだけじゃない。時にネズミ取りや魔女の相棒で日本では不吉だが外国ではラック(幸運の)キャットと呼ばれているのだ。


「孤高」を自負しているがぼっちなだけな自分と大違いだ。


「飼いたい」 

しん・・・。

独り言がえいるの1kの部屋に消える。


まあ、うちはペット禁止だけど

言ってみただけ。

想像は自由だ。


じゃあせめて「猫になりてー」

なんて。


と願望は増していくばかりである。

明日も講義終わったらバイトだ。

もうすぐ梅雨だ。てかもう梅雨だ。



あるゲーム好きと宇都宮が話を振ってくれて公言してから話しかけてくれる人は増えたがグループに入れない。


まあ宇都宮はあいもかわらずも話しかけてくるけど。


猫でも飼ったら友達も釣れるだろかー。


うわ、最低だ。


ふいに外からにゃ‥と声が聞こえた気がした。


(猫いたんかーい)

と驚いた。


近所の野良だろうか。


せめて心の中で思った事はさっき鳴いたであろう猫に心の中で謝った。



翌日、講義が終わってバイトも終わった。


「今日は意外と少なかったなあ」


ウーバーをしているがやはりこの梅雨の時期は雨の日に配達が増える。


決まった曜日にバイトに入って雨の日にあたる時がある。


そうゆう時は雨ガッパを着ての自転車配達だ。 


このままグループの輪に入れず季節を越すのは嫌だが雨はこたえる。



(近くでお茶買って公園でお菓子食べよ)


近くに公園あるし自転車側に置いて食べたら横にちょこんと丸い白に茶模様の宇宙人みたいに目が大きい猫がいた。でも首輪ないし 汚れてるし野良だなーと思われる。


鼻ぺちゃだ。かわえ〜!触りたい。


いつの間にいたのだろうか。

やけに人馴れしている。人間にエサをもらっていた経験がそうさせているのかと感じた。


にゃっ!と猫喋る。



どうやら自分の手に持ってるお菓子やお茶に興味深々らしい。

 

しかし、この公園には餌やり禁止文言があるし、猫には食べてはいけない物があるのも事実。


「ごめん!またどこかで会ったらエサあげるから」

と触りたいのをぐっとこらえ帰路に着いた。


翌日、昨日見た猫について講義中調べる。


捨て猫を見るのはあれが初めてではないがあれからあの猫の姿が個性的で気になりなかなか寝付けなかった。その猫の種類には検討がつく。


講義中、スマホに昨日見たあの子の写真は撮ってなかったので特徴をスマホの検索画面に入れヒットするのを試していた。


するとたまた席を一個開けて座っていると宇都宮に声をかけられた。


先月、宇都宮や女の子に声は掛けてもらったが結局人に囲まれる人種には自分からは近づけない。


相変わらずその隣は彼が話しやすいのか男女で固まっている。

「猫好きなの?」と宇都宮が聞くので


「あ、うん。近所にいて」と仕方なく答える。


「え、マンチカン?」と驚かれ

「やっぱ珍しい?」と返す。


野良猫にしてはなかなか見ない種類な顔なのだ。

「首輪してた?」

「いや、なかったと思う」

「どっかからか逃げてきたんじゃない?」

(え!?)

しかし宇都宮が言っていた事を考えると腑に落ちる点がある。


「少し怪我してた。手とか」

「傷から病気感染しなきゃいいけど」と奴は滅多にしない考えこんだ顔をしている。


「宇都宮くん飼ってるの?」

と質問すると

「兄貴が」と複雑そうな顔で言われたので

いたんだ!と驚いてしまった。 


「まあ、そいつに聞いたらいろいろ分かるかも

ライン交換しとく?聞いてみる」

と聞かれたが飼うなんて無理だし友達は欲しいが気を使う知り合りあいが増えるのは億劫だし何より宇都宮とライン交換してないとは思うけど大学以外で奴と会話なんて想像つかない。


とりあえず「大丈夫」と遠慮すると奴は

「そう」とあっさり手に持ったスマホを素直に引いた。


講義を終えると外だ。


行きたくない気持ちを抑え一旦帰ってバイトに向かう。


嫌とは感じたものの頭で片隅ではあの猫が心配ではあった。


大丈夫。あの子だって伊達に野良じゃない。


雨は猫は苦手だし、きっと今頃安全な場所に隠れているはずだ。



翌日、困った事が起こった。

「松田さん、ごめん!兄貴に話したらライン交換しろだって」

ごめん!と両手を合わせ宇都宮を通してラインの友達申請をしてきたのである。


(なんて事をしてくれたんだコイツは!!)

普段の宇都宮も存在がウザいが、この時は憎らしかった。


「いや、まだ飼うか分かんないし」

「そんな事言わないで。せめて一言返してあげて。事情話したら納得すると思うからー!」

「ええ?宇都宮くんから言ってよ」

そう軽く反撃したのに驚いたのか分かったとすごすご宇都宮はあっさりとライン交換を諦めた。


孤高=コミュ症ぼっちは年上の異性とライン交換なんて無理なんだよ!


と思っていたバイト帰りまたも公園でこの間の猫を見つけた。


猫はと言うと呑気なのか危機感ないのかベンチ下にいてまわりには小学生くらいの子ども達に可愛がられている。


勿論、それを遠くから拡大して動画を映す。


授業中、音量を0にしてスマホ写真見てると宇都宮くんが「めっちゃ可愛いいじゃん」と机に置いていたスマホを指指すと宇都宮の隣に座っていた女の子も気になったのかなになに〜?と宇都宮に聞いてきたので「松田さんのスマホの猫が可愛いいって話」と言うと見せて〜とその子が言って来たので断れずスマホを渡す。


「え?かわいい〜、待って、この子捨て猫なの?」


やはりマンチカンが捨て猫は珍しい事らしい。

頷くとその子は

「うちの近くにも保健所のパトロール厳しいんだよね。大丈夫かな」

と言って来たのでサーっと蒼くなった。


そのやり取りを見ていた宇都宮は

「まあ、大丈夫だよ。ほらなんかあったら連絡して」まあ、松田さんが飼う飼わないにしろカナならなんとかすると思うからとさっき言ってなかった事を宇都宮が言う。


(早くそれを言え〜!)

と内心、憤怒し渋々ではあるがラインのIDを書いたメモを宇都宮に渡した。



『うちの近くにも保健所のパトロール厳しいんだよね。大丈夫かな』


講義中にさっき話していた女の子の会話が回想される。


(大丈夫かな?)


と心配すると同時に

飼う飼わないにしろカナならなんとかすると思うからと言う宇都宮の言葉を思い出す。


今日はバイトを入れていない。

よし!

そうと決めれば『あの子』を探す事に決めて公園に向かった。


公園に着くとそこは騒然としていた。 


今まさに作業着を着た人にあの子が捕まっていたところだった。


「その子うちの子なんです!」

咄嗟に嘘が口から出ると作業着を着た男の人に嗜められた。


「この付近で猫探しはなかったと思うから来たんだけどねえ。貴方本当に飼い主?」とじとーっと見られ萎縮する。

するとポコン!と開いていたスマホにメッセージが見えた。


カナさんだ!


そこからは馬鹿力だ。カナさんに助けを求める。


「変わって。仕事休みだから今から来る」



お待たせと1時間もしないうちにカナさんとなぜか宇都宮が来ていた。


カナさんの中性的でスレンダーな体型にパーカーを着た姿をしていたので想像していた人物像とは違った事に驚いた。


そしてなぜか宇都宮君は嫌そうな顔をしていた。


作業員は手の平を返したように

「いや〜、見つかってよかったですねぇ」と猫をカナさんに渡すと帰って言ってしまった。


「カナからライン来た時はびびった」

宇都宮はちょうど街にいたらしい。  


わざわざカナさんからお前も来る?とラインをもらったらしい。


カナさんになんとか名前を名乗り急に呼び出した謝罪とお礼をしどろもどろに伝えると

「気にしなくていいよ〜。ほら何かの縁だしね」

そう言って保護した猫の顔を見せながら言うと猫は私を見ながらジタバタする。


カナさんはそれを見て「松田さん、だっこしてあげて」と言ってくれたので猫を抱く。


「わ」あったかい。

でも毛は少し固い。


よしよしと顔の横を撫でると気持ちよさそうににゃーんと猫は鳴く。


「かわ〜!」

と3人の声がハモったので皆クスクス笑い合った。

「松田さんに1番懐いてるね」とカナさんが言うと宇都宮が頷く。


「いえ、そんな事は」と答えたが腕の中の猫はまさにリラックスした体制で『そうでーす』と言わんばかりにゃーんと鳴くとカナさんと宇都宮は笑った。


結局猫の件を家族に話した結果、猫の動画を送る事を条件に今のマンションの退去費用やペット可能のマンションの家賃を少し出してもらう事が出来て引越しが完了するやいなや餌や猫用おやつやおもちゃが送られて来た。その間猫はカナさんに預けられた。お猫様々だ。両親も動物好きで飼えなかった事も功をなしスムーズに猫をお迎え出来ることができた。少し大学からは離れたが結果オーライだ。


ベッドで寝転んでスマホを見ていると同じポーズをした『まりる』がまたにゃーんと鳴いた。

構ってほしいらしい。


そんな素直さに

「私もお前みたいになりたいよ」とまりるに話しかけるとフンと鼻を鳴らしポコポコしっぽを揺らしジッと顔を覗かれたと思うとドンマイと言わんばかりポンと床についた手の上にタッチされた。



まりるの視点------------------------------------

目を開けるとまぶしいって感じてすぐに起きた。

あ、そっか。ふわふわがあってその上で寝ていたんだった。


ここにはいつもえいるが寝ている。

えいるが寝ていたとこはあったかくて寝心地がいい。


怖い人間に怒られたけどえいるが助けてくれた。


変わり者で臆病な人間だけどなぜだか感じるの。


この子も1人だって。


ずっとあたしは1人じゃないって思ってた。


そうじゃないと本当に1人ぼっちだから。


でもね、だからあたしと同じような人と一緒になれたらそれはもう絶対『ウンメイ』なの!


だけどそんなあたしにも悩みがある。


友達なのにえいるがあまり部屋にいない。


だいがく?から帰っていつもばいと?っていってまた出かけてしまってる。


あたしがいるのに。



少し腹の虫が静まらないから目の前ウロウロしたのに何〜?って分からなさそうにしてるからパンチしたら怒られた。


軽くだったのに


怒りんぼうなのに・・・。だいがく行きたくないとか言うくせに。あたしのお友達は怠け者なのか真面目なのか分からない。



たまに「猫になりたい。隠キャ辛み」

って言うけどあたしが言えたことじゃないけどえいるにネコは向かないと思うの


「ああ、私の友達はまりるだけだよ」

と言われてびっくりした。


それでふふん♪ってなった。

そうでしょう そうでしょう


にゃーんと鳴く


あたしはえいるの最高のオトモダチなんだから!


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