季節外れの自動販売機
稀造花
第1話
日も遠に落ち、残るのは夜風に煽られる寂寥感、それに反するように煩わしさを放つ熱波。
そんな夜更けに、街外れで人口光だけがその存在を示すかのような不安定にゆらゆらと揺れる影が二つ。
季節外れの服装、似ても似つかない二人が居た。
2人の居るこの場所が世界から隔離されているかのように感じさせられる、また暗雲立ち込める人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
そんな場所に2人は居る。
カランッと空気に溶け込むように綺麗な音が散布する。
ザッ、落下した銭と苔の触れ合う音が鳴る。
『あ』
二台の自動販売機の横目に2人の男女の目が合う。
自動販売機と彼らの隔たりには、道路でよく見る横線の入った溝がある。
なぜ2人が互いの目を見合わせるのかというと、そのグレーチングにお金が落ちたからである。
グレーチングと言っても鉄でできたモノではなく、昔ながらの重そうな石でできた、そして年季の入ったもの。
コインが落ちてから幾分経った後
「あらら落ちちゃったね。」
向かいの女性が言う。
「そうですね。」
それに相槌を打つように。
男性が言う。
「ねぇ、キミ私のモノにならない?」
その言葉に驚きながら、先程から彼女の整ったスタイルに影を作っているその自動販売機に目をやる。
からん、からん、
次に気づいた時には、手に持っていた小銭を落としてしまった。
季節外れの自動販売機 稀造花 @zo_ka
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