独白

口十

第1話

 私は神にでもなったつもりか。世界を創って徒に飽き捨てる。一ヵ月も触らなかったらその書き方を忘れ、その世界をどうでもよくなり、挙句の果てには覚えてないと法螺を吹く。それでも過去の未練からその世界を完全に捨て去ることは出来ずいつでも過去の栄光に縋りつけるようにとディスプレイの中に留めておく。何たる侮辱。到底誰にも理解されないであろう世界を作り上げて障害が発生したらそれを理由に投げ捨てる。

 まぁよい。問題はそこではない。神になったのも現代ではさして問題ではない。問題は、学びを辞めてしまったことだ。この数か月、私は書くための努力をしてこなかった。ペンを執らず、机にも座らず、果ては他の世界に触れることなく、ただ時間を浪費したのみ。それのどこが創作家だ。ただの人間にすら成り上がれない肉塊ではないか。

 まったく、困ったものだ。昔、私は神を信じなかった。だからこそあそこまで無敵でいられたのかもしれない。だが、今は違う。神に怯え身を潜めて過ごしている。誰にも見つかりませんようにと。

 それではこの話を書いているのに矛盾がある。これは誰でも見られるようになっているではないか。であれば、私は承認欲求と未だ折り合いがつけれていないではないか。恐らく私は、ここであれば誰かが認めてくれる。そんな馬鹿げた思いでこんなものを書いているのだろう。それすら判っていないんだ。

 恐らくこれは誰にも認められない。誰にも気づかれない。きっと神も見落とすだろう。だから書いている。どうしてもこの感情が恐ろしくて書いている。私はもう神にはならないと思っていたのに、どうしても書きたくて書きたくて仕様がないから書いている。止まらないんだ。何か気持ち悪いほどに何か書きたくてしょうがない。キーボードの打鍵音、道路を横切る車の音、凡てが気持ちいいんだ。

 恐らく私は再び何かを書く。紛れもない、私の為に。この感情の赴くままに。それがまた飽き、捨てられることとなろうとも、今が素晴らしいのだから書く。

 これはただの文字列。ただの亡霊。誰にも何も与えないし、受け取らない。だからあり続ける。

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独白 口十 @nonbiri_tei

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