第94話 変わった事
*・*・*
「なになになにぃ〜??」
「これ……食べ物ぉ?」
「
「……うん。皆に試食をお願いしたくて」
あの事件が解決し、各署への処置が落ち着いてから。恋花は点心局で変わらず、
未来の自分と約束したことを成し遂げるために、残ることを選んだのだ。
今は、詰め所で
カレーパンではないが、菜葉の油炒めを入れた『おやき』。
「「食べていいのぉ!?」」
「自分らでいいんすか?!」
「緑玲妃様や陛下に召し上がっていただく前に、点心局長が皆の意見も聞いてって。
「「わーい!!」」
「食べるっす!」
恋花がどうぞ、と言ってあげれば彼女らは食べたいと思った麺麭を手に取り、ためらわずに食べ始めた。噛んで口の中に広がった味に感動してくれたのか……顔がすぐに輝きに満ちた。
「「「美味しい〜!!」」」
「しょっぱ過ぎない?」
「「ちょうど良い〜!!」」
「ふんわりしてないのも食べ応えあるっすね。ふわふわより逆に合うっす!」
「そっちは中身を変えることが出来るの。他の野菜や甘いのとか」
「くぅ〜! 食べてみたいっす! 緑玲妃様もお喜びになられると思うっすよ!!」
「……そうだといいな」
例の
なので、皇帝からも美味い麺麭を作ってくれないかと頼まれたこともあり、今試行錯誤しているのである。
『恋花、玉蘭が呼んでいる』
「あ、わかった」
談笑している途中で梁が壁からすり抜けてやってきたことで、話は中断。林杏らには麺麭は好きに食べていいことを告げて、
廊下をゆっくり歩くと、あちこちで修繕作業は進んでいたが、皆苦しそうな表情はなかった。緑玲妃が皇妃になることで、逆に浮き足立っていることが多い。それほど、彼女は皆から慕われているのだから。
「恋花」
城へ通じる廊下に差し掛かるところで、向かい側から
「
「俺もだ。共に行こう」
「はい」
以前は後ろを歩いていたが、今は横に並んで歩くことが出来る。その距離の縮み方が、恋花には嬉しかった。この美しい男性が、自分の恋仲だと……まだ自信がない部分もあるが、事実だと微笑んでいる顔を見て実感は出来た。
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