第93話 祖母の復活
*・*・*
そこに行く時は、皇帝も同席するとの事になったので、彼が到着してから玉蘭はまた霊体となって
『わかったかい? 恋花』
「うん、
中には、あの日玉蘭と二人で食べようとしていたのと同じ『あんぱん』が入っていた。
『……それが答えかい?』
霊体でも表情ははっきりと見えた。苦笑いに見える笑顔は、恋花の答えをきちんと受け止めているようだ。
「うん。先読みを通じて、私は先の世の
そこに玉蘭が加わるか、それは本人次第ではではあるけれど。
恋花がはっきりと思いを言葉にすれば、玉蘭の霊体かほとばしる程の光が放たれた。まぶしすぎて、麺麭を落とさないように気をつけて目を閉じれば……すぐに、温かい手が恋花の頭を撫でた。
「
霊体特有の反響したような声ではない。
梁がずっと化けていた時と同じ、年相応の祖母の声そのもの。
目を開ければ、身体がきちんとある玉蘭が優しく微笑んで見下ろしていた。
「奶奶!」
本当に元に戻ったのだと抱きつきに行こうとしたら、指ひとつで止められてしまったのだ。
「これ。せっかくの麺麭を台無しにしたらよくないだろう?」
「……ごめんなさい」
お互い料理人なのだから、食の大事はよく理解していると言うのをここでも指摘された。この言い方こそが、玉蘭らしいとここにいる誰もが共感しただろう。
せめて梁に包みを渡してから、恋花は今度こそ玉蘭に思いっきり抱きつき、大声で泣いたのだった。玉蘭も十年ぶりなのか、静かに泣いたのが頭に落ちてきた雫でわかった。
ひとしきり泣き終わったら、玉蘭は
「な?!」
「あたしの孫を娶る覚悟はあるんだろ? これくらい、親代わりとしてさせてもらうよ」
「……はい」
「め、めと!?」
「おや、そのつもりなんだろ?」
「そこは……」
結婚の適齢期ではないが、早すぎることもない。その恋花を嫁にと紅狼は考えていたのか、目尻を赤くしていたが。
そのやり取りを見て、皇帝は紅狼の背を強く叩いた。
「ははは! 俺が
「……穏便にさせないのか」
「国を救った料理人だぜ? そんな生ぬるい処置はしないぞ」
「わ、私がですか!?」
「そうさ。紅狼と共に根源を叩き切ってくれたんだ。……恋花はこいつ嫌か?」
「め、滅相もございません!」
「だとよ?」
「……順序立てくらいさせてくれ」
玉蘭を復活させただけでなく、将来の伴侶も得たと言う。
大きな出来事が、一気に起きたけれど恋花はもう泣いたりせずに笑った。
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