第87話 記憶の中で②
両親や
淡い青。球体のようにしか見えないが底知れない力を感じる。前にいる
『唸れ、
『承知!』
名を呼ばれた九十九も声を上げた。球体から龍のように細長い青の靄が上がり、黒い方へと突進していく。当たった途端、霧散するかと思いきや少ししてまた元通りになってしまう。そこに、紅狼らがそれぞれ剣を振り下ろして割いても同じだった。
『面倒くせ!!』
『騒ぐな。表の道に侵蝕したらどうする』
『だって、紅が連れて来たんだろ? 誰だよ、恋花と遊びに来るのを邪魔すんの!!』
『つべこべ言わんと、祓っておくれよ!』
『へいへい』
『……承知』
祓う力。あの二人にはその能力があるのか。だが、紅狼の呪眼は真実を見抜くのに長けた異能。何がきっかけで、あの目になったのか……この先を見ていけばわかるのだろうか
固唾を飲んで記憶の流れを見ていると、ふいに景色が揺れ動いて違う景色が恋花の目に映った。
そこは、泣き叫んでいる幼い恋花。地に伏しているのは血みどろになった両親。玉蘭や紅狼達は生きていたが、かなりの重傷を負って……辺りは、闇に包まれていた。
(父さん……母さん!?)
この記憶が真実ならば、恋花の中にあった『流行り病で死んだ両親』の事実は偽の記憶と言うこと。
紅狼や斗亜にもその記憶を封じたのは……玉蘭本人。
何がどうしてと頭がうまく働かないでいると、誰かに肩を軽く叩かれた。振り返れば、『今』の紅狼が苦笑いしながら恋花を見下ろしていたのだった。
『呪眼を得たのは……生まれつきではない。呪が集まって、生じたあの靄が原因だ。この後にわかる』
その言葉を聞いてから、昔の紅狼の方を見てみれば……もがき苦しんでいて、痛いのか呪眼となった左目を強く押さえていた。斗亜が駆け寄り、顔を見ると彼はひどく驚いたようだ。
『……陛下は』
『斗亜の九十九……
この事実を知る者として、記憶は塗り替えられた。その儀式が始まったのか、玉蘭が印を組んで己の九十九に命じ……あたり一帯を青い靄に包み込み。
気がついたら、梁の姿はなく玉蘭が恋花を抱えていたが違和感を覚えた。彼女に傷がひとつもなく、周りの景色も一変するくらい……穏やかな風景に変わっていた。紅狼らは、どこにも居なかった。
『……どういうことでしょう?』
後ろにいる紅狼に聞くと、彼は指を鳴らして風景を変えてくれた。
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