第12話 親友の様子がおかしい
冬弥の様子がおかしかった。
またもや高橋の補修を受けているのだが、全然内容が身に入らなかった。
日曜日、夕陽さんと出かけた、俺は冬弥に相談されてプランのアドバイスをした。
はっきり言ってこのお出かけは成功するとだろうと思っていた、失敗する要因なんて何もないと。
日曜日に連絡したときは何も問題がなさそうな感じで、きっとうまくいったのであろうと思い、追及は月曜日に回した。
どんな話が聞けるのだろうと朝早く教室に着いたのだが。
そこに冬弥の姿はなかった。
いつもであればコンビニに寄った冬弥が登校している時間帯であったはずなのに、教室には誰もいなかった。
たまたま遅いだけであろう、きっと昨日楽しみ過ぎて疲れているだけだと。
そう思い待っていたのだが。
いつまでたっても来ることはなかった。
俺が登校した数分後にドアが開き、やっと来たかと視線を向けると、開けたのは冬弥ではないくクラスメイトだった。
その後も、その後も登校してくる生徒の中に冬弥の姿はなかった。
『いくら何でも遅すぎる』
時間を確認すると、すでに俺がいつも登校している時間が過ぎて間もなく始業のチャイムが鳴る時間になっていた。
流石に心配になり連絡をとろうとしたところで、やっと冬弥が登校してきた。
流石に昨日夕陽さんと何かあったと考え話を聞こうとしたが、そこでチャイムが鳴ってしまった。
仕方ないと思い休み時間を使い話を聞こうとしたのだが。
冬弥は露骨に俺を避けていた。
もしかしたら俺のプランが悪く、それで夕陽さんと何かあったのではと考えた。
しかし、そうであれば冬弥は朝一番に待ち構えて俺に文句を言うはずだ。
なので俺のプランのせいではないと理解はできる。
……ではなぜ、冬弥は俺を避けている?
昨日夕陽さんと何かあったのか?何かまずいことでも言ってしまったのか?
だが、どれを考えたとしても俺を避ける理由にはならないはずだ。
連絡をしても帰ってこず、朝はギリギリ、休み時間は直ぐに消える、放課後は俺が補修。
そんなこんなあって、結局謎が解けないまま金曜日の放課後となってしまったのだ。
「明星君♪私の補修がつまらないのかな?」
「いえ、そんなことは断じてないです」
まずい、流石に上の空過ぎたか。
「まったく、そんな私より朝日君のほうが気になるのであれば、早く補修を終わらせなさいな」
「え?」
今冬弥の名前を出した?なんで先生が。
「冬弥君だって私の生徒ですもの、それに最近二人の仲が良くないのは見ていたからね」
そこまで見ていたのかこの先生、確かにいい人とは思っていたけど、ここまで生徒の事見てたのか。
「ほら、さっさと終わらせなさい、今回の課題は楽だからね」
「高橋先生……」
俺あんたの事さらに好きになるかも。
高橋先生から問題用紙を貰いさっさと終わらせようと挑む。
……ここで一つ言っておきたいことがある。
それはなんで真面目にやれば点を取ることができる、そんな俺が何故一週間も同じ補修を受けているのかというと……。
「先生、まったくもってわからないです」
数学だけはクソほどできないのである。
「明星君」
流石の高橋先生も頭を抱えてしまった。
時間としては、子供は帰らなければいけない時間帯になっていた。
茜色の空に映るカラスも流石に家に帰るのであろうなと思う。
マジで時間がかかってしまった。
結局最後のほうは高橋先生が横について一問一問回答していった。
『まるで小学生だな』
本当今日の補修が一人で良かったよ。
そんな訳でやっと下校できるようになったのだが、俺は今家の方向とは逆の道を歩いている。
スマホでマップを見ながらとあるカフェに向かっていた。
星空の家、冬弥のバイトしているカフェだ。
この一週間、ろくに話すことができなかったため、バイトしている冬弥に直接会うと決めた。
話ではどんなカフェかは聞いていた、一回も休まずに行ってるみたいだから流石に会えるだろうと。
「確か隠れ家みたいだって言ってたよな」
近くに来たからマップではなく周りを見て確認しているが、到底ここにカフェがあるとは思えない。
半信半疑になりながらも歩いていく。
『それにしても冬弥に何があったていうんだよ』
あの調子からして良いことではないのは一目瞭然だ、だからこそ話を聞いてやりたいし相談に乗りたいとも思える。
『たとえそれが自己満だとしても』
角を曲がり、カフェがあるはずの方向をみる。
「……どこだ?」
確か曲がってすぐにあるはずだったけど。
周りを見てもただの住宅街にしか見えないが。
もう一度確認しようと立ち止まったとき、いきなり横にあった扉が開いた。
「あら、お客さんかしら?」
「はい?」
いきなりおばあさんに話しかけられ戸惑うが、出てきた家を見る。
そこは確かに隠れ家のような家があった。
「ここのカフェ見つけにくいわよねえ」
「すみません、ここは……」
「ん?星空の家っていうカフェだよ」
本当に見つけにくいし、カフェだとわかってないと立ち寄んないだろ……。
おばあさんに会釈をしてからカフェに入ろうとする。
「冬弥、逃がさないぞ」
木製の重そうな扉を開け中に入る、中では入店を知らせるベルとグラスを磨くマスター、それとカウンター席に座っているウェイターが俺を出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、初めての人かな」
「はい、そうです」
パット見たところ冬弥の姿が見えない、もしかしたら厨房にいるのかも。
「はい!新規のお客さんご案内!」
「晴美さん、何回も言うけどここは居酒屋じゃないからね」
「いいじゃないの、新規の人は元気よく迎えなきゃね」
店内の雰囲気とクラシック音楽の落ち着いた雰囲気とは裏腹なアットホームな雰囲気で迎えられてしまった。
「驚いたよね、お好きな席にどうぞ」
「ありがとうございます」
カウンター席に晴美さんという女性から少し離れて座る。
『ここで冬弥はいつもバイトしているのか』
始めてきたはずなのにどこか懐かしいと思えるようなカフェで、もう少し早く知りたかったと思えてくる。
というか、冬弥もこんなに雰囲気がいいのなら連れてきてくれてもよかったのに。
「はいこれメニュー表ね、因みにおすすめはオムライスだよ」
「コーヒーもすすめてくれると嬉しいんだけどね」
「はは、ではコーヒーをお願いします」
オムライスはまた今度食べに来ようかな。
注文を受け取ったマスターがコーヒーを入れ始める、豆をひいている姿は見たことがなかったため新鮮かも。
ついつい見とれてしまう、のだが。
『なんかすごい見られてる?』
横にいる晴美さんがすごい見てくる、なんで?オムライスを頼まなかったから?
兎にも角にも落ち着かない……。
「ねえ君」
「はい!何でしょう」
いきなり話しかけてきた?やばい謎の緊張が。
「その制服って冬弥君と同じ?」
「え?嗚呼はいそうです」
「やっぱり!なんか見たことあると思っていたのよね」
なんだ制服を見ていたのか、オムライスを頼まなかったことを突っ込まれなくてよかった。
「晴美さん、今気づいたんだ」
「何よ、気づいてたのなら言いなさいよ」
「普段見てるから、知ってるものかと」
制服一つでここまで言われるマスターが不憫に思えてきたかも。
「冬弥君に勧められてきたの?」
「いえ、今日は冬弥に会いに来たんですよね」
「そうなんだ、でも残念ね、冬弥君暫く休みなのよ」
「……え?」
思ってもいなかったことを言われ硬直してしまう。
「その理由って?」
「それがわからないのよ、この人がいきなり冬弥君はしばらく休むって言ってね」
あの真面目が理由も言わないで休むなんてらしくない。
ますます冬弥の中で何が起こっているのか気になってきてしまう。
唐突に厨房から勢いよく飛び出してきた美人がいた。結構な勢いだが俺の目はそれを逃がすことはない。
などと考えていたらその美人は俺の前で止まる。
「君、冬弥君の友達?」
「はい、そうです」
「なら、彼が何をしたか教えてくれないかしら」
美人に問い詰められいつもなら喜んでいるのだが、この人の発する圧が強すぎてたじろいでしまった。
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