第2話 月が翳る夜にはザリガニを
荷物の中身を見たレイチェルと
「お前はこの中身がなにかわかっているのか?…こんな物を運び込みやがって、まさか本当の娘さんと入れ替わってるんじゃないんだろうな?」
そう言いながら酷く険しい表情をしている
「ほ、本当です!!わたし本当にお父さんの娘です!! 名前は
「まず中身を知っていたのかを聞いている。どうなんだ、知っていたのか。それとも知らなかったのか?」
「し、知りませんでした…」
「次の質問だ。【
「おに…なんですかそれは…?」
「知っているか?知らないのか?」
「し、知らないです…!!」
「次の質問だ。ここに場所はどうやって知った?」
「えと…お父さんっていつも日記を書いているんですけど…そこに皆さんの写真とその日に起こった事とかが書いていて…あ、あと場所はお父さんがよく向う道をなんとか見ていたので頑張って探しました…」
「頑張ってねぇ。
「そこはどうなんだ? 嘘を付いてもすぐバレるから正直に答えろよ?」
レイチェルの質問を聞き、
「えと…それは…」
その質問にどう答えて良いのかわからない様子の
そして直ぐに
「ッ…!?」
「お前…【
「なるほどね?
「兄貴マジでふざけんなよ!!コレは完全に俺等の手に負える範疇を超えてるだろ!?」
先程までの小綺麗な少女の姿は見る影もなくなる。腕や顔の肌はやや赤黒く変色し始め、少女特有の艶とハリがあった肌は、見るからに硬さを増してひび割れのようなものが大量に現れていた。
「あ、あの!!」
厳戒態勢の3人を見て
「ごめんなさい!!怖がらせるつもりはなかったんです!! だ、だから
慌てながらも流暢に人間の言葉を話す異形を見て3人の心に更なる驚愕と困惑の感情が押し寄せてくる。
「ちょっとなんで【
「そんな事を俺が知るかよ!?」
「たしか名は
レイチェルと
「は、はい。なんでかわからないんですけど、わたしは他の人みたいに自我をなくすことがない…ってお父さんが言ってました。わたしは他の人がどうなってるのかわからないけど…」
「そんな事あり得るのかよ…てかそんなやべぇやつが身近に居るのに、なんでボスに教えないんだ?」
「
「そうだろ?! そこんトコどうなんだよ!!」
未だ冷めやらな体の熱を感じながら言葉をまくし立てる。はたから見ると女児にブチギレる危ない大人であるが、そんな二人が冷静さを事欠いているのは仕方のないことであった。
それは何故か。
「ごめんなさい。わたしも自分がなんでこんな風になってるのかわからなくて…その
「【
そう本来の【
そして今現在の目の前にいる少女の姿は他の感染者と特徴が一致しており、【
そんな長年原因不明の…しかも極めて危険性の高い病の感染者が、普通の人間と同じ生活が出来る程に症状が発症していない者が現れたとなれば、その病を知る二人が冷静さ失うのも仕方ないと言えるだろう。
「…その姿からさっきの普通の姿に戻れるのか?」
未だ困惑する二人に変わって
「はい。ちょっと待ってください…」
そう言うと
「すげぇ…マジで【
「これって相当やばいわよね?本当にどうするのよ?」
「…やはり頭領の元へ連れて行くのはまずいと思うが、
「どうするって…」
「わたし皆さんのお役に立ちますのでどうか一緒にいさせて下さい!!」
「役に立つって言ってもなぁ…具体的に何が出来るんだ?」
それを聞いた
「え、えと…お料理…とかですかね?お父さんのご飯とか、皆さんのお夜食作ってましたので…」
「夜食か…うん?俺達の夜食...?」
そこで何かを思い出したのか
「はい…わたしのお夜食をお父さんが皆さんに持っていってると日記には書いてありましたが…」
「採用ねこれは」「採用だろこれ」
先程まで微妙な反応をしていた
「…それで良いのかお前らは」
「だってあれだろ?あの滅茶苦茶美味いザリガニとかの…」
ザリガニという単語を聞いて
「
「いやぁ...あれはマジで美味かったな」
「確かに辛かったけどあれは美味しかったわね。やっぱり採用でしょこれは…これからよろしくね
先程まで敵対的な雰囲気とは一転して、まるで子供を可愛がる親戚のような対応をする二人に
「えぇ…は、はい…」
「それで良いのかお前らは…」
そんな
「いやよく考えろ
「俺達の食事と懐事情が解決される方がよっぽど重要だ!!一ヶ月にどれだけ食費がかかるかわかってるのか!?あの腐れ料理人のクソ共に足元見られなくて済むだけでも価値はあるだろ!!」
「まあそもそも、私達で料理できるのはこの間死んだ…えーと、誰だったかしら…新規で入ってすぐ死んだあの生意気な...」
「新規で生意気…
「そうそいつ!! そいつ以外は元々誰も料理なんて出来ないから貯金すらなかったものね」
「そういうことだ。まずは俺等が変われないと意味がねぇからな!!どうせ連れて行っても暫くの路銀だけだろ?じゃあ俺達で匿うほうがマシだ。もし【
「口裏を合わせればバレねえよ!!」っと言って先ほどとは180度どころか一回半転するほどの手のひら返しをする
そしてテーブルに近づいた
「ほら
「おっ!!いいね海鮮系が少しと薬味とかは一通り残ってるから自由に使っていいぞぉ」
「前の料理担当は死んでるしね!!」
そう言って
「…
「あ、はい。心遣いありがとうございます?」
溜め息を吐きながら
「ハハハッなんで疑問なんだよ!!信用されてねえなぁ
「あんた顔が怖いから早速嫌われたんじゃないの?
「ハッ!!お前みたいな精液臭え女を好きがる子供がいるかよ!!」
「んだと間抜け面ァ!?」
「ハハハッ!!レイチェルがキレた!!」
レイチェルはテーブルから立ち上がり
「あの…えとお名前…
二人の尋常じゃない剣幕に若干狼狽える
「…気にするな、いつものことだ。それより料理をするなら早くしたほうが良いぞ。酔いが回る前に止めないとよけいにダルくなる」
「は、はい!!すぐ作ってきます!!」
そう言って
鬼の血族は骸の宮にて死を想う 萎びた家猫 @syousetuyou100
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