第1話 怪しい訪問者は娘と騙る
陽が沈み辺りは薄暗くジメジメとした雰囲気がいっそう増した骸の宮…その一区画である屍脚区のとある寂れた建物で、テーブルを囲み酒を飲み交わしながら駄弁る人達が居た。
「はーあ、やってらんねえよな。なんだって兄貴は俺達に何も言わず消えちまったんだ?ボスの司令を受け取れるのは、俺達の中じゃ兄貴しかいないのによー」
両の手を頭の後ろに回しながら、自らが座ている椅子を斜めにブラブラ揺らしている男が不満げな声色で愚痴を零す。
それに対して男の正面に座っている妖艶な雰囲気を漂わせている美女が、ブロンド色の長髪をかき上げながら溜め息を吐く。
「はぁ…
「それにしたってやることなさ過ぎだろうよ。なあ、お前もそう思わないか
寡黙そうな男…
「…その件に関しては"レイチェル"の言う通りだ。俺等は組織の構成員、勝手な行動は許されない」
「はー二人共お堅いねぇ、マニュアル人間かよ。そんなんだと大事なチャンスを逃しちゃうぜ?」
「うっさいわね。じゃあなんであんたは、お堅い私達なんかと同じとこにいるのよ?」
レイチェルは少しイラつきを覚えながらも、普段の
そんなレイチェルに対して飄々とした態度の
「ハハハッそりゃあ...俺が問題ばっか起こすからだ!!」
「それじゃあまるで私達が、あんたみたいな問題児と同レベルって言ってるように聞こえるのだけど?」
「そう言ってんだよアバズr「んだと間抜け面ァ!?」ハハハッ、レイチェルがキレた!!」
レイチェルは額に青筋を浮かべながら、
そうして二人が戯れていると、
「...静かにしろ。聞こえないのか?客人だ」
その発言に二人は怪訝な表情で建物の入口を見つめた。既に時間は深夜の0時を回っている、こんな時間に誰かが訪ねてくるなど普通はあり得ない。唯でさえ出歩く危険性が外とは比にならない骸の宮だと尚更だ。
「こんな時間に客人だ?なんか嫌な予感しかしねえなぁ…」
「ほら、間抜け面。客対応はあんたの仕事でしょ?さっさと出てきなさいよ」
「へいへい」
「何があるかわからん、警戒は怠るなよ」
「戦いは専門外なんだがなぁ。ほいほい、こんな夜更けにどちらさんですか〜っと...何だこの嬢ちゃん?」
「あっ、えっと…」
そこには骸の宮にしては妙に小綺麗な服を着ている少女が、黒い風呂敷のようなものを抱いてオロオロしながら立っていた。
その光景に一瞬唖然する
「あらかわいいわね。迷子かしら?むさ苦しい野郎しかいないから目の保養になるわねぇ」
レイチェルはそう言いながら酒をあおる。そこで冷静さを取り戻した
「...いやいやちょっと待て。ここは
「え…」
少女は予想外に警戒をされていることに驚愕したのか固まってしまう。そんな少女を見て
「ちゃんと頭を使って答えなよ嬢ちゃん。回答次第ではここで殺さなきゃいけないからなぁ」
「わ、私はお父さんの伝えでここに来ました!!」
「伝えで?嬢ちゃんのお父さんの名前はなんて言うんだ?」
「
兄貴分である
「
「俺は兄貴からそんな話聞いたことないな〜」
「同じく聞いたことないわねぇ」
「だそうだが本当にお前は
「えっと…これ父から預かった荷物で…」
そう言いながら少女は先程から抱きかかえている風呂敷を一番近くに立っている
「荷物?」
「はい。これを渡せば信用してくれるって…」
「妙に準備が良いところは
風呂敷を受け取った
「ちょっとこれ読んでみろ」
「なにこれ手紙?...ってこれ
「ああ、間違いなく
「えーとなになに?」
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その時の俺が死んでいるか、または何かしらの緊急事態に落ちいている場合、この手紙を俺の娘が持って来ていると思う。
俺が組織の中で一番信用できるお前達3人にこの手紙を送るように伝えてあるからな。そんなお前たちに一つ最後の頼みがある。
この手紙を持ってきた娘と荷物をどうか守ってほしい。もし屍脚区で匿うのが厳しいなら頭領に荷物を預けて骸の宮を脱出しろ。
頭領には既にこの話は通してあるから、荷物を引き渡し次第、逃走経路の確保と暫くの間の生活資金を貰えるはずだ。
どちらを選択するかはお前たちの自由だが、出来れば一番信用できるお前たちに守ってほしいと思っている。
頼んだぞ。
ps
俺用のプリンを定期的に補充する任務はこの手紙を以て終了とする。ご苦労だった。
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「これは間違いなく
「ああ、そうだな」
手紙を読んだレイチェルと
「ということだ。お前が兄貴の娘だということは信じてやる」
「本当ですか!? よかったぁ…」
「安心してるとこ悪いが、お前はこれから俺等のボスのとこに連れて行く」
その言葉にレイチェルは批判の声を上げる。
「ちょっと!!
レイチェルが言葉をまくし立てている中で
「ちょっと危ないじゃない!?」
レイチェルはそんな
しかしその隙間から覗く異質な物体にレイチェルは小さな悲鳴を上げ、
「ヒッ…なによこれ…」
「これは【
梱包材の中には入っていたのは、全体的に鬱血した様な赤紫色のミイラの腕が入っていた。
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