筋殴
バキッ!!
首絞めで怪物の首の骨を折り、体が崩れ気絶したのを見計らって三咲のもとに駆け寄る
「大丈夫!?今どかすからね!」
三咲の足を挟む瓦礫を移動させようと力一杯加えるがびくともしない。
「ンッ!だめだ、重すぎて動かせない」
「お義姉ちゃん!後ろ!」
三咲に言われ振り向くと意識を取り戻した怪物が私に襲い掛かってきた。
私は瞬時に怪物の頭目掛けて回し蹴りをし、怪物を2メートルほど飛ばす。
「ググググググググッ……ハアァァァッ」
「目覚めるの早すぎるよ……」
早く、早く三咲を助けないと、でも怪物は襲って来る、一体どうすれば……。
「お義姉ちゃん!私のことはいいから逃げて!」
「三咲を置いて逃げるわけないでしょ!諦めない…絶対に!」
怪物はまたも私を襲いに接近してくる。
こうなったら、イチかバチか…怪物を倒すしかない!
「グギャッハハアァッ!!!」
ヒュッ
怪物の繰り出すパンチを瞬時にしゃがみ避け…。
「ファッ?」
ガシッ
しゃがんだ体勢から立つ勢いで怪物の顎と思われる部分を右手で掴み、そして…。
ドシャッ!!
自分の体重を右手に加え、その力を利用し怪物の頭を勢いよく地面に叩きつける。
「ゲバアァッ!!」
仰向けで倒れる怪物の上に乗り、それぞれの人差し指と中指を突き立て怪物の両目を抉る。
グチュ…
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
耳をつんざく怪物の悲鳴に一瞬怯みそうになるが、手を止めず両目を抉って今度は悲鳴で開いた怪物の口目掛けて右の手刀を刺し込んだ。
ガシュッ!!
「ンガッ!!」
刺した口の中の肉を抜き、怪物の口から噴水のように血が噴き出た。
噴き出るその血の色は人間と同じ真っ赤な色をしていた。
それからはあまり記憶がない、正気に戻った時には怪物の頭は潰されほとんど原形を留めていなかった。
「痛っ!」
痛みを感じた手両方を見ると、怪物のと思われる血痕や内出血、そしていくつか指が少し歪に折れ曲がっていた。
「なんか痛いなって思ったら、私ずっと…殴り続けてたんだね」
私は倒れた怪物の体から降りようとした、その時。
ガシッ!
「え!?」
死んだはずの怪物が頭がないにもかかわらず突如私の両肩を掴んだ。
ありえない光景に私は混乱した。
嘘!?まだ生きてるっていうの!?
すると怪物の体が急に上体が起き上がる、同時に首から新たに肉の塊が生成しだした。
グチュ…ガチュ…キシッキシッ…ジュジュジュ…。
怪物の首から頭と抉ったはずの目も再生し、出会った当初の状態に戻った。
「この顔…」
「イ、ィギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギッ!!」
怪物は歯軋りしながらこちらをじっと見ていた。
その顔は私に向けた怒りと憎悪に満ちた表情をしていた。
これ…やばいんじゃ…早く怪物から離れ――。
しかし、怪物に両肩を掴まれたせいで離れることができない。
怪物は怒り顔でだんだんと私の顔との距離が詰まっていく。
あまりの恐怖に体が震え、歯も震えカチカチと鳴る。
カパアァ
怪物は私の顔を食べる気なのか、口をくぱあっとゆっくり大きく開け始めた。
このままじゃ、喰われる!!
私は空いていた両手で怪物の顔を掴み、そして…。
ボキッ! グルンッ グリッ! パキッ…。
怪物の首を180度回転させ、喰われるのを回避しようとした。
しかし…。
グルンッ! バキバキッ!!
怪物もまたさらに自力で首を回転させ、ついに私の頭を喰いにかかってきた。
「いや…待って…無理無理無理!!」
怪物の手首を掴み、そして両足を怪物の腹に沿え押し出した。
「私はまだここで死ねないの!!」
怪物の腹を押し出すと同時に腕も引き千切り、喰われる寸前のところでなんとか怪物から離れることができた。
「ギャフッ!!グウウウウッ…」
怪物は立ち上がり、千切れた両腕も瞬時に再生した。
「再生って…こんなのありなの」
すると怪物が突如下を向き猫背の姿勢になる。
「ウググググッ…」
怪物が唸り始めたと思ったら、体中の筋肉がさっきよりも盛り上がり、だんだんと肥大化していく。
黒い皮膚だった怪物は全身ではないにしろ、体中不規則に黒色から銀色へと変色していった。
「なにこれ…」
一体怪物に何が起こっているのか、その時の私にはわからなかった。
殺れ……殺れ…小娘ごときに……殺せ…殺せ…あの娘を殺し……またさらに愚かな人間たちを殺めるのが、”罪人”に科せられた使命……殺れ!殺れ!殺れ!!
「グギギギギギギギギイギギギギギギギギギギッギギギ!!!」
殺めた人間は62人、あと38人……38人の人間を殺め魂を喰えば……前世の記憶と知能を取り戻し、筋殴の能力をさらに強化できる。
だが、それを成すにはまず……。
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
小娘!!まずお前を殺す!!
怪物が距離を詰めた。
肥大化した拳が私目掛けて襲い掛かる。
バゴンッ!!!
攻撃を躱すが、怪物のパンチは凄まじく、後ろの壁が瞬く間に崩壊する。
「くっ、強い…」
「ギギギギッ……」
怪物は続けて拳の打撃や蹴りを繰り出す。
現状私は避けることしかできず、反撃の機会を見いだせなかった。
これ、一発でも当たれば間違いなく即死だ、一体どうすれば……。
考えても中々いい方法が出ず、ただ時間が経過するにつれて体力が削れていくだけ。
だめ、ここで諦めたら三咲を助けられない、あの怪物だって人間離れした化け物でも、生き物に変わりない、絶対何か倒す方法が必ずある。
「ギギャアアアアアアアア!!!」
怪物の攻撃を躱し、その先の地面に怪物の拳がめり込んだ瞬間、打撃の影響で生じた振動が私の体に伝わり、体がよろけ体勢を崩してしまった。
「しまった!」
もちろん怪物はこれを見逃さず、肥大化した拳がよろけた私目掛けて振り下ろされた。
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