避難
ハアッ ハアッ ハアッ
怪物たちが蔓延る中、私は義妹の三咲と共にひたすらに走った。
どこへ逃げた方がいいのか、正解を見いだせなかったが、とりあえず横山君が言っていた自衛隊の目黒基地へと向かう。
「お義妹ちゃん」
三咲が私に声をかける。
「どうしたの?」
「えっとその…大丈夫?そのなんていうか……お母さんのこと」
三咲の言葉に私は少し前のことを思い出した。
三咲と再会した後、私と三咲はまずは真っ先に自宅へと向かった。
自宅に着き、家の中に入ると中がかなり荒らされ、そこには無残な姿で倒れた母がいた。
「お母さん!」
すぐに母を抱きかかえたが、手遅れだった。
母の体は冷たくなっており、生気を一切感じなかった。
「お母さん……」
ほんとだったら今すぐにでも泣き叫びたかった、母を失い、友達も失い、私の心は限界一歩前まで追い詰められていた。
でも唯一、義妹だけは無事だ、せめて義妹をどこか安全なところに避難させないと……。
「お義姉ちゃん……」
三咲は今にも泣きそうな表情だった。
三咲を引き取る前から母も三咲と交流があったが、三咲が家族の一員になった後も母は私と同様に実の娘のように可愛がっていたし、三咲もそんな母のことが大好きだった。
私が弱い所を見せたら三咲が不安に感じちゃう、耐えるの私、ここで泣いてる場合じゃない。
「三咲ちゃん、こっち来て」
私は三咲を呼んで、母の遺体を目を向けさせる。
「ほんとは見たくなくても、目の前の母が死んだことに変わりはない、いい三咲ちゃん、これから私たちは母の分まで、そして…三咲のお兄さんやお姉さん、両親の分まで強く生きるの」
私の言葉に対し三咲は「うんっ」と頷く。
「私がずっと三咲と一緒にいれるとはかぎらない、だから、私にもしものことがあっても、三咲はもう16歳だから、一人だけになっても強く生きていくんだよ」
「…うん」
三咲は静かに頷きながら涙をぬぐう。
心が落ち着いたのか、少しだけいつもの三咲に戻った。
「うん、そうだよね、私、お義姉ちゃんみたいに強く生きるよ、ありがとう」
多少涙は堪えつつも三咲は笑顔で応えた。
三咲の心配に私は笑顔で応えた。
「大丈夫!なんたって、お義姉ちゃんは強いんだから」
三咲の不安を再発させまいと”強がった”。
やっぱり私……義妹にすらも嘘ついちゃうんだね、ほんと私って…ばかだな……。
走っていくと目的である目黒基地に近づいていってるのが地図アプリでわかる。
幸いにもまだネット回線は無事なようで、高速ギガを使用しないとだがなんとか地図アプリを参照することができている。
「お義姉ちゃん!見えてきたよ!」
三咲の指さした方向を見ると、画像の目黒基地の建物と同じ特徴の建物が視界に入った。
「お義姉ちゃん、私たちこれでやっと助かるんだね!」
「うん!あともう少しで着くよ!」
そしてついに目的の目黒基地に辿り着いた……けど。
「う、うそでしょ!?お義姉ちゃん!」
私と三咲が見たそれは、もう絶望としか思えなかった。
自衛隊の人たちが怪物と応戦しているが、素人の私から見ても明らかに劣勢……いやもう勝ち目一切ないのが目に見える。
生き残って応戦している自衛隊はほんのわずか、ほとんど四方八方に死体が散らばっていた。
「三咲、ここはだめ、別のところに――」
「お義姉ちゃん!後ろ!」
三咲の言葉に私は咄嗟に後ろを向いたが……遅かった。
私の視界に一瞬映ったそれは、三咲を襲おうとしたのを私が蹴り飛ばしたあのときの怪物だった。
「フギイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!」
怪物は私目掛けて拳を振り下ろし、躱したが怪物の拳が地面にめり込むと同時にそこから衝撃波が発生した。
「お義姉ちゃん!!」
「三咲ちゃん!!」
辺り一面にも強い振動が伝わり、強すぎる衝撃のあまり周りの建物などもいとも簡単に崩れ去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます