第1章 神罰開始ー狂人
不審
「えーっ皆さん、一般受験まであと残り僅か三カ月を切りました、クラスの中にはもう推薦で決めている人もいるとは思いますが、羽目を外さず一般受験組に配慮した学校生活を送るように」
担任はそう言い、朝のホームルームが終わる。
ホームルームが終わってすぐ、聞き慣れた声で私の名前を呼ぶ。
「優ちゃーん!見て見て!」
友達の桃菜がスマホの画面を私に見せる。
画像には桃菜の推しアイドルのPV動画が上げられていた。
「昨日発表された新曲がもう二百万再生いってるの!すごない!?」
人気アイドルグループ『スターマイフット1』の新曲が話題になり、私も桃菜に同調する。
「うん!すごいね!一日で二百万再生なんてね」
こうして話を合わせるためにクラスメイト全ての趣味や好きなものなどをだいだい把握している。
相手を傷つけず、程よい関係を維持するために。
私は高校生でありつつ女優もやっている、何か一つ些細ないざこざでイメージダウンすることもあるから、波風立たないように振る舞い、いい友人を演じる、それが役者だ。
桃菜の他に顔馴染みの友人らも会話に入ってくる。
「いつか会いたいな、でも人気すぎてライブ入場券なんて滅多に手に入らないんだよね」
皆がため息をつく中、桃菜が私の方に視線を向けた。
「そういや優ちゃん、今日から放送される『ミツドモエの形』に優ちゃんとセンターの篠宮遥希君とで共演してたよね!」
「そうだけど」
「そのもしだけどさ、お願い!また共演するときサイン貰っておいて欲しい!」
桃菜の言葉に友人の一人がツッコむ。
「いや流れ的に入場券でしょ、あでも、サインの方が滅多に貰えないかも」
するとみんなは「お願い」と神頼みするように手を合わせ私に言う。
少し考えた後みんなに返す。
「わかった、共演した時頼んでみるよ」
そう言うとみんなは「やったー」と喜び皆にお礼を言われる。
ほんとはあまり篠宮君とあまり関わりたくないんだよな。
なにせアイドルにも関わらず数々の女優やアイドルにデートの誘いやらナンパの常習犯として芸能界では有名だからなあ。
当の私も篠宮君に誘われたことがあるくらいだ。
いつか週刊誌に載るんじゃないかと篠宮君の所属事務所はいつもヒヤヒヤしているそう。
篠宮君のことだから、絶対見返り求めてくるだろうな。
その後は皆とたわいのない会話を交わす。
桃菜を含むいつものグループメンバーとで話し込むうち授業開始の合図のチャイムが鳴る。
「ええーもう始まるのー、じゃあまた授業が終わった後に!」
桃菜はそう言って席に戻った。
私の周りを囲んでいた友人たちもそれぞれの席に戻り、教科書を机の上に出す。
数学Ⅲの教科書とノートは……あった。
チャイムが鳴って一、二分程経った後先生が教室に入って来て早々に授業が始まった。
数Ⅲの授業が始まって数分が経った、私はいつも通り先生の話に耳を傾けつつ問題を解いていく。
数学Ⅲの範囲はすでに終わっているため、今日の授業は主に難関大学が出題する数Ⅲの問題を主に対策する。
役者は必ずとも長く続けられるとは限らないのである程度学歴を付けるため進学に向け勉強にも専念している。
「よし、次の問題に…」
いこうとした瞬間、窓外の向こうの校庭から嫌な気配を感じた。
過去にゴシップ狙いの記者とか過激なファンとかに付きまとわれることもあったが、それとは違うゾッとするような気配…。
窓の外見たくない、でもなんだろう…今確認しないと後悔するような気がする。
私は先生の目を盗んで窓の外の向こうに視線を移す。
ん?何?…あれ?
正門正面に異質な”何か”が仁王立ちしていた。
目をよく凝らすと、その姿は全身は真っ黒いが髪は白く、細身ではあったが身長はそんなに大きくなく、私よりは少し小さいくらいだ。
異変に気づいたのは私だけでなく、前の席の男の子も正門を眺め、「なんだあれ?」と呟く。
すると、校庭に先生数人が正門に立つ不審な”何か”に近づく。
そのうちの一人がその”何か”に対し話しかけた。
「おいそこの君!正門で何をしている!」
俺は他数人先生を連れ正門に立つ不審者に近づき、先発で俺がその不審者に話しかける。
しかし、その不審者はピクリとも動かず、無言のままだ。
「おい!聞こえてんのか!何とか言ったらどうなんだ!」
俺がそう言った瞬間、不審者が突如動き始め俺の顔目の前で右手をかざした。
「ん?どうした?右手に何かあるのか?」
俺は不審者の右手に触れようとした瞬間、爆発音のような音と同時に俺の視界は真っ暗のまま意識が途切れた。
「えっ?何?…今の?……」
得体のしれない”何か”に近づいた先生の一人が爆発のような音と同時にその先生の上半身は失っていた。
そして下半身だけが残った身体はそのままバランスを崩し倒れる。
私と同様異変に気づいた前の席男の子は青ざめた顔で突如席を立ち、教室から逃げるように出て行った。
授業をしていた先生も「お前!どこに行こうとしてる!」と叫んでいたが一切返事はなく、教室に戻って来ることはなかった。
もちろんいきなりのことに私以外のクラスメイトと先生は呆然となる。
私は先生に訳を話そうと席を立った瞬間、外から何かが迫って来る気配を感じた。
私はその気配に悪寒を覚え瞬時に姿勢を低くしてしゃがむ。
「おい、どうしたんだ天内――」
ガシャンッ!!!
窓ガラスが割れる瞬間先生の声からクラスメイトたちの悲鳴へと変わった。
私は気配を消すように教室の隅っこに移動してうずくまる。
体を丸くする中、教室内は断末魔が響き爆発音などの嫌な音と共に血がこちらに飛び散る。
あまりの恐怖に自分も泣き叫びたくなるが、あまり存在を目立たせないよう目を瞑って歯を食いしばり堪える。
”何か”が教室に侵入して僅か二十秒で教室内が静かになった。
私は瞑っていた目を開けると、あまりに惨い光景が広がっていた。
「うっ!おえぇぇ……けほっ…けほっ…」
充満する血の匂いと誰のかもわからない臓器や遺体の山に嘔吐してしまった。
数々の遺体の中に無残な姿に変わり果てた桃菜の姿もあった。
嘘、これ、現実!?そんな…そんなことって……。
教室内はバラバラの死体と机、椅子が散乱しており、所々壁に返り血が付いている。
あれは!……。
教室中心にその”何か”がまるで獲物を見るかのような目で私を凝視していた。
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