男子トイレに駆け込んだら女子がいた
畜生
第1話 カフェインの摂りすぎは体に毒
午後16時20分、鈴木緋色(16)はとてつもない危機を感じていた。
クソつまらない古文のおばさん、若林の念仏のような声が他の生徒たちの頭を落としていく中、緋色は自身の額に冷や汗が流れていく。
(トイレしてぇ……ッ!漏れるぅ…)
原因は昼に購買部で買った紅○花伝であることは自明であった。
と、ここで授業の終わりを告げる鐘がなる。生徒たちがパラパラと顔を上げ、礼をする。普段ならそのままトイレへ駆け込めるため一安心なのだが、この若林はそうとはいかない。
何故か?
「はい、じゃあそのままHRを始めますよー」
若林がこのクラスの担任だからである。しかも更に厄介なのが話がクソ長いことだ。
緋色が彼女を睨みつけながらも、冷静に状況を分析していった。
(このクラスから最も近いトイレは1年トイレ、だがそこは部活にいく生徒たちで溢れかえっている。漏れそうな俺に他の生徒がしているのを我慢できるかと言われたら怪しい、それならいっそ……!)
「はい、じゃあ気をつけてお帰りください〜」
「もってくれよ……俺の膀胱…!」
緋色の通っている公立江坂高校は1階が3年教室、2階が1年教室、3階が2年教室、4階が職員室等となっており、さらにその上に屋上がある。今頃はHRが終わった他クラスの連中が男子トイレにたむろしているはずだ。漏れそうな緋色は自身のいる2階からさらに登って5階の屋上前にあるトイレに一直線で走り出す。
───数分後
「っふぅぅ………気持ちいい……」
残尿感を微塵も残さない、気持ちの良い排尿。もちろん途中で決壊してしまったわけではなく、屋上のトイレに滑り込んだ上で便器に向かって用をたすことができた。
「あぶねー…この歳でおもらしとか洒落にならねぇ…」
間に合った安心感で思わず独り言も多くなる。1種の賢者タイムというべきか、冷静になってトイレ内の様子を見渡す。
どうやらほとんど使われておらず、しかし掃除はされているため、トイレ内はほかの階に比べてかなり清潔に保たれていた。
「ん……?」
だから、気づいてしまった。
男子トイレ内に3つある個室、そのうちの1番右、ドアと床の間にある隙間から見えたもの。
(女子用の靴…だよな?)
それは所謂ローファー……少なくとも男子生徒が履くはずのない靴であった。
男子トイレに駆け込んだら女子がいた 畜生 @olutosu-77
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