第23話 三姉妹の作戦①

「この写真は本当なの、葉月?」


「うん、たまたま歩いてたらね。先生がこの人と濃厚なキスしてて。早く椎名と琴乃に伝えないとと思って」


「流石葉月ですね。情報だけならどうしようもなかったですが、写真があれば出来ることはたくさんあります」


「私たちはちょっと甘かったようね」


 椎名は深刻そうな表情を浮かべて頬に手を添えた。琴乃は三人分の温かなココア、葉月は写真を凝視している。


「どうするの椎名。今まで作戦立ててきたのは椎名なんだし今回もどうにかしてよ」


「どうにかって、私の作戦がダメだったから先を越されたんでしょ。だから琴乃か葉月が考えてよ!」


「なんで逆切れしてるのさ!もっと優しい言い方してもいいじゃん!」


「逆切れなんかしてないし!私の指示が悪かったんだから言ってるんでしょ!」


「二人とも落ち着いてください。私たちが喧嘩してても何も変わりませんよ。私に考えがありますから二人とも聞いてくれませんか?」




 ☆


 今日は花澤家の家庭教師の日である。一週間ぶりということもあって結構楽しみな気持ちで溢れている。

 勉強は進んでいるかな。椎名ちゃんなら問題ないと信じてるけど。


 家庭教師の時間まで適当に時間を潰した俺は、花澤家へとやってきた。


「お邪魔します」


「いらっしゃいませご主人様!」


 家に入ると一番に葉月ちゃんが出迎えてくれた…のだが、なぜかメイド服姿をしている。

 それもスカートの裾が短い。ちょっとでもジャンプしたら全部見えてしまいそうだ。


「よくぞお越しくださいましたご主人様。今日はどのような御用でしょうか?私ですか?それとも私ですか?」


「それってどっちにしろ葉月ちゃんしか選べないよね?格好もどうしたの?」


 危なげないジャンプを繰り替えす葉月ちゃんから目を逸らしながら訪ねる。葉月ちゃんって会った時から明るいとは思っていたけど、このようなキャラだったっけ。


「なんとなくですよ、なんとなく~。それよりも先生はメイドはお好きですか?琴乃から聞きましたよ。家にいっぱいメイドが表紙に載ってる本があったって」


 あ、あの時だな。たまたま家に帰るときに琴乃ちゃんに見つかって家にあげたときに見られたのだろう。メイドが好きだなんて気持ち悪いと思われたかもしれない。


「それはその通りなんだけど…もしかして椎名ちゃんもそのこと知ってる?」


「はい、知ってますよ。なんなら私よりも面白おかしそうに話聞いていたと思います!」


「くっ…」


 はずかしい、琴乃ちゃんだけではなく花澤三姉妹全員に俺の趣味がバレてしまっているなんて。

 もしこのことが奥様に伝わったら解雇、なんて可能性も…。


「あ、安心してください。お母さんには話しませんから」


 心を読まれた⁈


「それとチョロインがお好きって聞きましたよ。確かチョロいとヒロインの略語でしたっけ?」


 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁーーーー。


「安心してください。チョロイン好きっていうのは私と琴乃しか知りませんから。まあ椎名が知るのも時間の問題だと思いますけど」


「それって椎名ちゃんに黙ってもらえたりしないかな?」


「え、なんでですか~?」


 葉月ちゃんはこの場を楽しんでいるように、ニヒヒと笑う。


「教え子にそんな趣味知られたらね、ね?」


「ね、って言われましてもなにも分かりませんよ」


「立つ瀬が無くなると言いますか…」


「じゃあ黙ってあげててもいいですけど、私の質問に一つ答えてもらってもいいですか?」


「そんなことでいいなら全然」


 そんなことで黙っていてくれるならお安い御用だ。どんな質問でも余裕で答えてやるぜ。


「先生って彼女いるんですか?」

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幼馴染に振られたからとりあえずイメチェンしてみた ミナトノソラ(旧:湊近) @kaerubo3452

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