第22話

 気まずい。

 手を繋いだことがあるかという質問に答えた後からあからさまに和泉さんお機嫌は悪くなっている。

 恋人同士なはずなのに二人とも無言でただただ歩いているだけ。


 傍から見れば喧嘩中のカップルである。…今、実際喧嘩中と言ってもいいかもしれない。

 ただ和泉さんが怒っているのかと聞かれればよく分からない状況にある。機嫌が悪いのは間違いない。


 でもしっかりと僕と彼女の手は繋がれているのだ。指と指が交互して繋ぐ恋人つなぎというやつ。ちょっと最初より彼女の握る手に力がこもっている気がするけど。


 傍から見れば喧嘩はしているが、お互いのことを大事に思っているということを伝えているバカップルみたいだ。


 …ん?僕は何を言っているんだろう。


 そうだ、まずは誤らなくてはならない。わざとではないとはいえ、彼女を不安にさせてしまった。これは男としてしっかりと謝罪をして許してもらおう。

 どんなきっかけからこの関係が崩れるか分からないしな。


「ごめん、和泉さん」


「え?」


「不安にさせてしまって、本当にごめん」


「…」


 彼女は少し考えた素振りをしてこう答えた。


「私が質問して勝手に嫉妬しただけですから、侑都くんは何も悪くありませんよ」


 と。なんていい人なんだろう。確かによく考えてみれば質問を最初に投げかけてきたのは和泉さんなわけだ。僕が深く心配する必要はなかったのだ。

 まあ多分それでも僕なら無意識に謝ってしまっていただろうけど。


「おかしいですね、私の自業自得なのに侑都くんに謝罪させてしまうなんて申し訳ないです」


「いやいや、気にしないでよ。もう済んだ話だしさ。楽しも?」


「ありがとうございます」


 それから僕たちは二人で色々なところに周り九時ごろに解散した。責任もって和泉さんのことは家まで送り届け、僕も家に帰ってきた。

 

 ベッドの上に飛び込みデートのことに想いを馳せる。


 今日のデートはとても楽しかった。手繋ぎの話の後からは和泉さんも不安要素がなくなったのか手を繋ぐでは留まらず一つ上の段階である腕組を要求してきたのだ。


 最初は僕も緊張で身体が震えっぱなしだったが和泉さんが平気そうだったので、緊張が解けるのは案外早いものだった。

 ショッピングにいったりカラオケにいったり。


 最後解散するときにはお互い気持ちが昂っていたのかキスまでしてしまった。和泉さんとの初めてのキスはとても温かくて…柔らかかった。


 今日という日は僕の中で一生の思い出として残るだろう。和泉さんも同じだったら尚更嬉しいな。







 ☆


 侑都さんが知らない女と熱いキスを交わしていた。元カノの赤星さんじゃない。ならばあの人は誰なのか。


 新しい彼女だろうか。それにしては早すぎる気がする。侑都さんは赤星さんに振られてから傷心していたはず。


 それなのにこんなに早く新しい彼女を作るわけがない。それならあの人は誰なの?


 私たちの侑都さんを奪ったあのくそ女狐は誰なの?


 とりあえずこうしちゃいられない。急遽作戦会議を開催せずにはいられない状況になった。

 振られてまだそんなに時間が経っていないからと油断していた自分たちが悪いのだ。でも放っておくなんてことは絶対にできない。


 私たちの侑都さんを返してもらわないと。


 私はしっかりカメラに収めた侑都さんと知らない女のキス写真を持って自宅へと走った。

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