第21話 和泉さんの狙い②
デートなんて何をしたらいいのか分からないのが僕、岩崎 侑都である。ずっと大好きだった幼馴染に振られて数週間、この間に色々なことがあった。
高校生時代まで友達がいなかったのに明るい友達が出来たし、嫌な思い出もあるが合コンにも行ったし、何と言っても一番嬉しいことは念願の彼女が出来たことだ。
彼女の名前は今更紹介する必要はないだろう………でも自慢したいから紹介させてください。
僕の彼女の名前は和泉奏。女性では平均的な身長で髪は肩上まで伸ばしてるショートヘア。胸は…ノーコメントで、他にも目やら口やら色々と褒めるところがある。
「なんですか、そんなにじろじろ見て」
「え?ごめん、僕じろじろ見てた?」
「はい。それはもう激しかったです」
その言い方は何か良からぬ疑いを招きそうだからやめてほしいが、どうやら僕は無意識に和泉さんのことを見てしまっていたらしい。
それも激しくという強調表現が尾びれについて。
「でも嬉しかったですよ。侑都さんに独占されてるって気がして気分が高揚しました」
「…それでどこに行こうか?」
「そうですね…やっぱりデートは男性にリードしてもらいたいですね」
来てほしくない展開がいきなりやってきてしまった。僕は優柔不断の権化といえるほど物事を決めることが苦手なのだ。
他人に関することは特に時間は要しない。だが自分の運命が関係してくると、不思議なことにきっぱりと物事を決めれない。
一体どうしたものか…ゲームセンターはNGだろう。記念すべき彼女との初デートでゲームセンターなどに行ったなんて誰かに話したらきっと笑いものにされるに違いない。
だとすれば王道の映画館か?
否、それだとありきたりすぎて面白みに欠けてしまう。
僕は彼女を楽しませたいのだ。一緒にいることで仲を深めると同時に和泉さんの僕に対する好感度を上げていきたい。
そうして熟考した結果…
「ショッピングに行きましょう」
最適解だったと僕は信じているぞ。
隣町の県内でも有数の大型ショッピングモールに僕たちはやってきた。昼過ぎという時間もあって多くの人で店内がごった返しており、ふと気を抜けば離れ離れになってしまいそうである。
「和泉さん、手を繋ぎませんか?」
は、僕は何を言っているんだ。僕みたいな陰キャが黄金に輝く和泉さんの手を握っていいわけがないというのに。
「え、もちろん。喜んで」
僕の手が和泉さんの手によって包まれる。僕は普通の手つなぎの構えをしていたのだが、いつの間にか恋人つなぎになっているし…それにしても柔らかすぎる。
女性の手ってこんなにふわふわしてるんだな。僕みたいにごつごつとしていない女の子の手。肌の物質は同じはずなのにどこで違いが生まれたんだろう。
「どうですか?」
「そ、それはもう。すごく…いい、です」
「ふふ、良かったです」
和泉さんは柔和な笑みを浮かべて僕のことを見つめる。だけど、何か違和感があった。
「侑都くんは今まで女の子と手を繋いだことがありますか?」
手を繋いだこと…それはもちろんある。でも感触は覚えていない。本当に昔の記憶だ。中学生の頃、まだ僕と赤星さんが仲良かった…はずの頃。
僕と赤星さんは毎日一緒に下校していた。今思えば下校している時に結構愚痴ラテていた気もするけど充実した日々だった。
なんだろう、なぜ赤星さんと手を繋いだんだろうか。
僕から誘ったのか、それとも赤星さんから誘われたのか。この二択なら多分前者が正解だろう。
「あるよ。とはいっても中学生の頃だけどね」
「誰とつないだのかは覚えていますか?」
「まぁ」
赤星さんの名前はもう聞きたくない。
「あぁ、なるほど。彼女ですか」
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