第14話 最終話 信頼関係を築パン屋は発展して行く

 辰徳は内心ホッとした。アンナがそんなことをする訳はない。ボスに疑われてはやっていけないとか言い出したら収拾がつかなくなる。だが素直に認めてくれた。

「いやいいんだ、俺が怖いのは君と俺達の信頼が壊れることだ。君は従業員と言うよりパートナーだと思っている。だからアンナは責めない、弁済も要らない。問題はアンナを傷付けないような君が説得してくれないか、出来ればこれまで通りアンナにも働いて欲しい」

「ボス……貴方はなんと優しい方なんだ。日本人は優しい人が多いが貴方とママはそれ以上に優しい。僕も嫌われたくない。信頼を取り戻し為にアンナと二人で頑張ります」

「そうか、ありがとう。この話はこれまでだ。久し振りに二人で飲みに行こうか」

 二人は夜の街のネオン街に足を運んだ。二人共モヤモヤが消え更なる信頼という絆が生まれた。


 そんな事があり一年が過ぎた。息子の隼人も間もなく二才になる。そろそろ保育園に入れて理香子も復帰出来るようになる。脱サラして成功するかは正直難しい、しかしここまでくれば起動に乗ったと見て良い。これも理香子とマクのお陰だ。そんなある日、招待状が届いた。なんと以前勤めていた海山物産からである。なんでも創業八十周年記念ということだ。なんで退職して三年も過ぎた元社員に届いたのか。何かの間違いだろうと思って問い合わせて見た。

「ああ坂本様ですね。間違いありません。これまで我が社に貢献してくれた元社員を含めて優秀社員を表彰するそうです。それも坂本様は会長推薦ですよ。会長に認められるなんて凄い方なんですね。おめでとうございます!」

 優秀かどうか分からないが会長には目にかけて貰っていた。まっ嬉しい事ではないか。

「海山グループか日本で超一流の企業だ。いま思うと、良くそんな会社に入れたとものだと思う」


理香子に話し招待状を見せたら大喜びしてくれた。しかも会長推薦。理香子も改めて夫は優秀な人間だったんだと思った。それなのにパン屋に引きずり込んだ。少し申し訳ない気もするが、それだけに招待状は嬉しかった。

「貴方は優秀な人なのよ、辰徳さんは認められた。私の誇りでもあるわ」

「そうかなぁ、まぁ悪い気はしない」

辰徳は三年ぶりに海山物産本社ビルの前に立った。

「流石だなぁ一流企業は、俺もいつかはこんなビルを建ててみたい」


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街のパン屋さん 西山鷹志 @xacu1822

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