復讐の方法

//ーーーーーーーーーーーーー

学内である事件が起きた。その犯人として噂されたのは目付きが悪く、ひとりぼっちの主人公。主人公は無実であるにも関わらずみんなから蔑まれ、誰一人として味方の居なかった。しかし真犯人はクラスの中心である人間であった。主人公は濡れ衣を着せられただけだと知ったみんなのとる行動は二つに一つ。謝るか何もしないか。


これは謝られた被害者、主人公の対応の小話

//ーーーーーーーーーーーーー


「すまなかった!まさかあいつがあんなことをするやつだなんで思ってなかったんだ。だから、だから本当にすまなかった」


「私も、いいように騙されてた。ごめんなさい」


1人が謝ったことを皮切りにクラスメイトが次々近くに来て謝りだした。


「みんなの言いたいことはわかった」


笑顔を浮かべてみんなに告げる


「確かにあいつの方が容姿もみんなへの人当たりも良かった。確かに目付きの悪くていつも1人ぼっちのやつと比べればそっちを信じてしまうのも無理はないねー」


にこやかに、且つ穏やかに話す。そうすればみんな安堵した顔を浮かべてくれる。


「それで、言いたいことは終わりでいいのかな?」


声のトーンを変える。困惑が拡がる。誰も声を挙げず近くのもの同士顔を見合わせるだけ


「そう、わかった。みんなはただバカにするために謝るという機会を使ったわけだ」


「そんなこーー」


「『あんなことをするやつだとは思わなかった』、『いいように騙された』。だから僕、私は悪くありませんって言いたいわけでしょ?逆に言えば、あなたに人望がないのが悪いって言いたいんでしょ。それで謝ってるってよく言えるよね」


相手の言葉に被せて、まくし立てるように言い放つ


「尤も、まだ大人になれていない状態じゃそういう考えに至らなくても無理もないとは思うよ。俺だって同じようにしたかもしれないし。それにきっと大人でも今みたいなことを言って謝った気になってる人もいるだろうしね。でも決定的に違うのは大人の謝罪には何かしらの形で損害に対する補填をしようとする動きがあるところだと思うんだ。大きいところで行けば罰金、小さいところだと菓子折りみたいにね。だけど君らにはそれがない。これだけいて誰一人ね。まぁ裁判があった訳でも、ましてや直接関わったわけじゃないから当然と言えば当然だね」


何も言い出せないように、矢継ぎ早に言葉を紡ぐ

分かっている。理不尽なことを言っているのは。ただ、それよりも理不尽な目にあったんだからちょっとくらいいいだろう?


「そしてもうひとつ、君たちは間違えたんだ。ここでの正解は直接関わりのない人間は謝らない事だったんだよ。そうすれば見て見ぬふりをしていたという罪悪感で償いになった。だけどみんなは謝ってきた。罪悪感から逃れるために。自己満足のために。


だから今謝ってきたみんなには改めて償いをしてもらう。」


青くなっていたみんなの顔には安堵の色が見える


(そう来なくっちゃ)


目いっぱい口角を上げてみんな一人一人とと目を合わせたあと横を向いて言い放った


「誰も許すわけねぇだろバーカ!!!」


ポケットから取り出したカッターナイフで首にある動脈を大きく切り裂き、血飛沫を撒き散らす。みんなへ向かって。トラウマになるように。顔を笑顔に大きくゆがめて。


(復讐は何も生まないと言うけれど、こんなに清々しい気持ちになれるじゃないか)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある物語の一幕 @ChihaG

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ