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「あ、ああ、あのコもいいね」
僕はそう言ったが、大人しそうなワンピースのコの方が、ちょい印象に残ったのだった。
現場の流水プールに着くと、すぐさま全員で区分けして、飛び込んだ。
僕と好雄は、ペアのようにして、プールの底を探し回った。
流水プールの水面下。
そこは、別世界である。
たくさんのお客様の、首から下の無防備な姿が見える。
特に、女のコの姿といったら!
まさか、水の中から見られているとは思いもしてない彼女たちの、え〜と何て言ったっけ、そう、「しどけない」肢体は、まだ十代の僕にとっては、何とも・・・
また、プールの中は、意外に「お金」が落ちているんだよね。
水着のポケットからこぼれ落ちたのであろう、百円玉や十円玉。
場合によっては、千円札がフワフワと目の前を泳いでいく時がある。
だが、僕らは痴漢ではない。
仕事で潜っているのだ。
そういった「薔薇色の欲求」は、自制心で押さえ付けねばならない。
それに実は、プールの中は危険が待ち構えてたりするのだ。
割れたゴーグルやメガネの破片(もちろん、通報があり次第、僕らが除去する)は当然だけど、一番危険なのは、それじゃない。
最も油断できないのは、泳いでる人の「蹴り足」だ。
特に、平泳ぎのキックが危ないんだ。
たとえそれが女のコであっても、脚の力は腕の数倍。
うっかりそれを腹にでも喰らったら、大の男でも悶絶しかねない。
実際、先輩の一人が、それでしばらく動けなくなったことがある。
というわけで、好雄と二人で慎重に探していたら、遠くでホイッスルの音がした。
これは、「見つかった」という合図だ。
やれ、良かったと、二人で休憩室へ帰り、腰を下ろそうとした瞬間、ドアが勢いよく開いて、人が飛び込んできた。
「た、助けて! と、友達が!」
見るとそれは、先ほどの大胆なビキニを着た女のコだった。
恋の宝箱(短編集) コーシロー @koshirou
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