第2話「茜色サマードレス」
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「全員、出動!! お客様がゴーグルを落とした!」
高橋先輩の声が、休憩室に響き渡った。
「どのプールですか?」
「流水プールだ!」
休憩室にいた全員が、外に飛び出した。
建物から出れば、ギラつく太陽。
まさに、炎天下だ。
真夏のプール監視員のアルバイト、時給も悪くないし、プールで遊べて最高! ってな調子で応募したけど、現実は甘くなかった。
とにかく暑いし、とにかくキツい。
休憩時間だって、今みたいに呼び出しが掛かれば、ソッコーで飛び出して行かなきゃならない(労働基準法違反では? よく知らんけど)。
ここは、S市立「水上公園」。
7つのプールを擁する、大レジャーランドだ。
僕は大学1年の夏休みに、生まれて初めてのバイト先に、ここを選んだ。
幼馴染で、幼稚園から大学まで一緒の好雄に誘われたのがきっかけだった。
「毎日プールで泳げて、水着姿の女の子、拝み放題、その上、お金が貰えるんだぜ!」
好雄の言ったことは、間違いではなかった。
だが、プールで泳げるのは休憩時間だけ。
監視員なので女の子の水着姿は確かに見放題だったが、人の命が掛かってるので、そうそう「そっち方面」ばかり監視しているワケにはいかなかった。
そして肝心の給料は、月末締めの翌月15日払いなので、まだまだ先だった。
「おい、見ろよ、あのコ。結構、カワイイじゃん」
早歩きになりながら(走るの禁止)、好雄はアゴをしゃくって見せた。
好雄の視線の先を見ると、水色地に幾つかのヒマワリの花を散らしたデザインの、ワンピースの水着の女の子がいた。
髪を肩の辺りまで伸ばした、色の白い、大人しそうなコだった。
「ああ、いい感じだな、ヒマワリの水着似合ってるし」
僕が答えると、好雄は呆れたような顔で、
「何言ってんだ、隣だよ、隣!」
そう言われてヒマワリのコの隣を見ると、驚くほど大胆なビキニの水着を身につけた、小麦色に日焼けした女の子が目に入った。
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