第5話 最終話

 ☆リサ・ムラタ視点


 「貴様のこのどデカい工房は、解散だ!解体して、レンガは陛下の別荘に使う」


 「はい、分りました」


 ・・・私は、お役御免になった。この小さな国に、工房は二つはいらない。ロバートさんに、鍛冶職おジョブが授かったようだ。


 でも、悲観していない。

 万物は流転する。 本質は、変わらないが、形は変える。


 まあ、簡単に言えば、他の地で工房を開けばいいし、勉強をしたい。


 お祖父様は言っていた。商売をするのなら、倒産、廃業は、想定内にしておいた方がいい。


 ということで、皆様に、退職金を渡して、私は遊学の旅に出た。


「ふう~皆様、今まで有難うございました。退職金です。ムラタ刀です。ええ、これは、ニホン刀の形をした軍刀ですから、売る際に、この鑑定ギルドの鑑定書を必ずつけて下さいね」


「「「お嬢様!!」」」


「どうか。お言葉を・・」


「分りました。作業の優勢順位は、安全第一、品質第二、出来高第三で、作業して下さい。


 品質も、出来高も、安全に作業した結果なのです。これは、かの世界の製造業の基本です」


「しかし、その作業順位をされているのは、お嬢様だけの工房で、他は・・」



「大丈夫です。ワシム陛下は、その作業手順でマニュアル化すると言っていました。紹介書も入っていますよ」



「お嬢様は、どちらへ」


「もう、ニラヤマ型反射炉は、陛下の命令により、無くなりましたわ・・・時計ギルドに行って、バネの技術を習うか。錬金術士ギルドに行って、薬剤の研究をするか迷っていますわ」



 そして、私は、子供のころから育った領地を出た。


 

 なるべく、街道を通っていたら、街中が、騒がしい。


「大変だ。増税王と馬鹿王子が、大国の王族を怒らせて、市街戦が発生したらしいぞ」


「王都の方で、内乱?大国の兵団が暴れている?準男爵位以上の貴族は緊急招集?」




 まあ、私には関係ないのだけどもね。


「あれ」


 取り囲まれた。相手は、騎士団だ。


「貴様!黒髪に、青目か?お前は、リサ・ムラタだな!」


「えっ、そうですけど、私、貴族籍を抜け出しましたから」


「喜べ。また、貴族に復帰する命令が発せられた。子爵家に任ずる!早急に、王宮に戻り。ホラズム殿下の妃になり。諸外国の兵を引かせる交渉をせよ!」


「断ります」


「「「逮捕だ!」」」



 バン!カチャ、バン!カチャ、バン!


 カチャ、カチャ


「「「ヒィ、何だこれは!」」」


 私は銃を撃った。勿論、当ててない。足下に向けて撃った。


 これは、祖父の文献に書かれてあった後装式ライフル銃だ。


 私の工房は、


 地球で言うと、19世紀のアームストロング砲の素材と同じレベルの鉄鋼を作れる。


 手作業の感覚で、金属を切磋し、部品を作り。ライフル線条を刻むことにも成功したが、課題は多い。


 バネは弱いし、薬剤の供給も安定しない。


 パタパタパタ!


 その時、空から馬が飛んできた。


 スランが運んできた。妖精馬である。


「ヒヒ~~ン。お姉ちゃん!乗って、乗って」


「馬が話したわ!」


 私は、馬に乗って、この国を出た。


「お姉ちゃん!どこに行きたい!」


「まずは、安全な所ね。貴方のお名前は?」


「ヒヒ~~ン、つけていいよ」


 妖精馬は、心の綺麗な人しか乗せないと言われている。


 安全第一を取る者は、収益よりも、人の命を大事にする決意をした者である。


 だから、妖精馬は、リサを乗せたのかもしれない。

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「馬鹿王子のくせに、婚約破棄も出来ないのか?」となじられ、国が滅亡した話 山田 勝 @victory_yamada

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