第7話 当たらないんだけど

「ねえオサムさん、宝くじが当たらないんだけどさ…」

 そう苦情を言ったことがあります。


「堀ちゃん…あれは継続して買わないと当たらないんだよ…」

 と応えられました。


「そこは友としてさ…『買わないほうがいい』とか言うべきじゃないの…」

「ハハ…」

 ごまかされました。


*****


「俺さファインナンシャルプランナーの資格とったんだ…」

 久しぶりに会ったとき彼に言われました。


「じゃあ預けようか…いくらから…運用モデルってあるのかな…」

 訊きました。

「3千万かな…」

 さらりと言いました。


 その場にいたヨット部OBは同じ顔をしました。

 僕は思わず言いました。

「オサム…変わっちまったな…」


「ハハ…」

 ごまかされました。


 そこは変わっていませんでした。


*****


 お子さんはできませんでしたが幸せそうでね…

 奥さんは裁判所に勤める公務員さんで…給与もよくて…

 彼は銀行員だし…いわゆるパワーカップルです。


「オサムさん…自分だけ幸せならいいのか…」


 もうさすがに僕もそんなことは言いません。

 私も今の生活を充実させるべく日々がんばっていますから。


 でもオサムさん、再度言うね




「宝くじ当たらないんだけど…」

 


      了

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オサムさんは… @J2130

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