2017年7月21日

永遠とも思える学校長のあいさつから解放され、学期末の集会が終わった。

いよいよ明日から夏休み。

特に予定があるわけではないが、長期休暇というだけで正直うれしかった。

青春を謳歌する高校生は充実した夏休みを過ごすのだろうか。

そんなことを考えながら下校の準備をしていると、クラスメイトの一人が大きな声を上げて注目を集めた。

「おーいみんな、夏休みどっかで肝試しでもやらない?」

他のクラスメイトもそれに賛成のようで、いいねー、いつやる、といった言葉が飛び交う。

パスとは言いづらい空気が流れる。

当然、夏休みの思い出を作りたいとは思うが、自分に肝試しは無理だ。

楽しめるはずがなかった。

自分は誘われてはいないのだというように身支度をすませ、教室から出ていこうとすると、聞きなじみのある一人の生徒が声を上げた。

「俺、パスで」

一瞬扉を開ける動きを止めてしまったが、気にせず外へ出る。

昇降口のある一回へ向かうために教員用エレベーターを待っていると先ほど聞いた声に話しかけられる。

「肝試しなんか行かないだろ?俺も行かないからさ」

そう彼は言うと、エレベーターへと乗り込んでいく。

僕は自分の中にある疑問をぶつけてみたが、案外単純な答えが返ってきた。

「俺おばけとか幽霊とか無理だから」

勉強に続き垣間見た彼の知らない一面に笑みがこぼれてしまう。

「あー今笑ったな、しょうがないだろ怖いもんは怖いんだから」

「ごめんごめん、かわいいなと思ってつい、ね」

会話してて思った。

クラスの行事に一人で参加しないでいいことが予想以上に気楽で、後ろめたさを軽くしてくれることに。



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