2017年7月7日

今日は金曜日。

本来であれば週末というものは総じてうれしいものであるのだが今日は違う。

来週に控えた期末試験。

朝からクラスのあちこちでテストへの思いをそれぞれぶつけ合っている。

この高ヶ原高校では4日間にわたって試験が行われ、その結果次第で成績はもちろんのこと、夏休み中の各教科で提出しなければならない課題の量までもが決定する。

当然、課題は少ないほうが良いので、クラスのほとんどの生徒が気合を入れているというわけだ。

「昼飯いこう」

昼休みになると下空君がそう呟きながら席の後ろへ近づいてきた。

「みんなテストの話しかしてねぇな。まぁ俺も屋上行ってからしようと思ってるけど」

笑いながら話している彼の声はこの一週間で驚くほど自分の中で聞きなじんでいた。

というのも火曜日以降、彼と毎日昼食をとっている。

それまで一人で食べていたからだろうか、会話をしながらの昼食も悪くない。

楽しい。

だんだんと楽しめることが減っている自分にとって、彼との昼食は特別なものになっているのかな。

「下空君はテスト大丈夫そう?」

「大丈夫っていうか、心配すらできないほど何もやってないよ」

そんな状態でテストの何について話すつもりだったのか。

少し笑いそうなる。

「いや、聞きたかったのはさ、コウモリってどうやってテスト勉強してるのかなと思って」

「僕?うーんと、音声プレイヤー使って授業の内容を復習している感じかな」

やや特殊な勉強法に驚いたのか、彼は質問を続けた。

「音声だけってことは聞いて内容を暗記するの?すごく大変じゃん。しかも数学の田辺とか何言ってるかわかんないのに覚えられなくない?」

「確かに先生によって聞きづらかったりはあるから、時間かかる科目も多少はね。実際、僕数学苦手ではあるから一番時間かかっちゃうんだよね」

「じゃあ、俺の声録音すれば?」

彼からの予想もしていなかった提案に驚き、固まってしまう。

「え、下空君数学得意なの?」

僕の心配そうな表情が伝わってしまったのか、笑いながら彼は言う。

「心配するなって。自慢じゃないけど、授業中に教科書読んでおけばできるようになるんだよ。実際、入学してすぐにやらされた試験じゃクラスで一番点数高かったからな」

「そうなの?すごいな」

話すようになって一週間ではあるものの、彼のことを少し知ることができた。

だが、こんな話を聞くと感じる。

人の顔色をうかがうことができない僕には、彼の人となりを知るのにまだまだ時間がかかる。

だからこそ、会話をする必要があるのかもしれない。

「迷惑じゃなければ、わからないところ教えてくれる?その教えてもらってるのを録音させてほしい」

驚いて有耶無耶になってしまったので、改めてお願いすると、彼は気持ちよく、もちろん、と返事をしてくれた。


友達と一緒にテスト勉強ができるのか。

テストも悪いもじゃないかもしれないな。

彼と出会って世界が2回、色変わりしたような気がした。










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