幼馴染と結婚したが、まだ一度もヤってない

冬たけのこ🎍

幼馴染と結婚したが、まだ一度もヤってない

「康太、今日の晩御飯は何がいい?」


 朝ご飯を食べ終え、身支度をしていると、幼馴染で最近結婚した花梨が聞いてくる。

(どうしよう……昨日はハンバーグだったし……カレーは先週食べたし……正直、花梨の作るご飯なら何でもいいが、何か提案しないと悪い気がする……)

 花梨は昔から料理が上手く、家庭科の授業の時はよく先生に褒められていたのをよく覚えている。


「う〜ん、そうだな、オムライスなんてどう?」

「お、良いじゃん、玉ねぎも人参も余ってるし。あ、卵切らしてるんだった」

「じゃあ、俺が帰りに買ってくるよ。10個入りのやつでいい?」

「うん、それで大丈夫。ありがとね、康太」

「いえいえ、じゃあ俺もう出発の時間だから!」

「は〜い、いってらっしゃい!気をつけてね」


 そう言って、俺は走って会社へと向かう。

 花梨とは結婚して3ヶ月が経った、小学生の頃から、家が隣同士で毎日遊んでいて、高校生の頃、俺から告白した。

 最初は、恋愛感情は無いからと拒否されたが、何やかんや意識してもらえたのか、付き合い始め、そして結婚まで至った。


 世間一般から見れば、俺らはラブラブの新婚カップルであろう。

 同僚からも、『お前は、あんな可愛い奥さん貰って羨ましいよ』なんてよく茶化される。

 しかし、俺らには大きな問題があった。



 それは、『まだ一度もヤっていない』のだ!!



 付き合っている頃から、何度もチャレンジしようとしたが、小さい頃から毎日遊んでいた影響からか、中々そういうムードにならなかったのだ。

 最初は、花梨が嫌がっている可能性も考えたが、どうやらそういう訳でも無いらしい。

 結婚までしたのだ、俺は何とかムードを作って、そろそろ童貞を卒業したい!そう思っている。




 会社に着くと、同じく最近結婚した、同期の友人が話しかけてくる。

「おう、高梨!元気にやってるか?」

「お前はやけに元気そうだな」

「そりゃ、まぁ、新婚だからな、毎日幸せを噛み締めてるよ」

「良かったな」

「あれ?高梨も最近結婚したんだろ?どうよ、新婚生活は」

「ご飯は毎日美味しいし、すっげー幸せだよ」

「ほうほう、それにしては、何か不満がある表情だけど……もしかして、夜の方が上手く行ったないだとか!?」

 思わず図星を突かれ、思わず『ぎくっ!』といった表情をしてしまう。

「あ!今、『ぎくっ!』って顔した!そっか〜夜の方がダメなのかぁ〜」

「何だよ、悪いかよ」

「いやいや、お前は肝心なところでビビっちゃうから、奥さんも大変だなって思ってさ」

「俺は、ムードとかそういうのを大事にすんだよ」

「そういうところだよ!」

「はいはい」


 こうして、友人の話をテキトーにあしらい、仕事を始めた。




 ***




 仕事を終えて家に帰ると、先に帰宅していた花梨がオムライスを作っている最中だった。


「ただいま〜」

「おかえり〜、卵買ってきてくれた?」

「もちろん!」

 そう言って、卵の入ったスーパーのレジ袋を花梨に渡す。

「ありがとね、お仕事お疲れ様、康太」

「ありがと、花梨も仕事終わった後に、ご飯作ってくれてありがとな」

「いえいえ、お気になさらず〜」


 俺は花梨が楽しそうに料理をしているのを横目に、ソファーでくつろぐ。

 今日も取引先に理不尽なことを押し付けられて、大変気が滅入っていた。


 少し、ソファーでうとうとしていると、美味しそうな匂いと共に、オムライスが運ばれて来た。


 卵はきめ細かく、ふんわりとしていて、上には、トマトソースとデミグラスソースの絶妙なバランスが取れたソースがかけられ、パセリが散りばめられた。

 早速、スプーンで掬って口に入れると、チキンライスの旨味と、卵のフワッとした食感が口に広がり、食べ進める手が止まらない。


「すっゲー美味しいよ、ありがとな」

 そう言うと、花梨は嬉しそうに、

「ふふっ、毎日そう言ってくれて嬉しい」

 と可愛らしく微笑んだ。




 オムライスを食べ終え、食器を洗う。

 ご飯を作ってもらっている身として、これぐらいはやらないと、申し訳が立たない。


 花梨はソファーに座って、のんびりバラエティー番組を見ている。


「ねね、康太、私今日、子供達に『だんなさんと、毎日いちゃいちゃ出来て楽しい〜?』って聞かれたんだけど、私上手く答えられなくて」

 花梨は、保育園で働く保育士だ。面倒見が良い花梨には、天職だろうと思っている。


「何だよ、最近の子供はませてんな」

「そんなこと言わないの、で、ほらその……私たち、まだヤって無いじゃない……?」


 いきなり、花梨からブッ込まれて思わずコップをシンクに落としてしまう。


「そ、そ、そうだな……」

(なんだ……?花梨もそろそろ俺とヤりたいと思っているのか……?)


「だから、私たち、そろそろヤってもいいと思うのよ!」

 花梨は、恥ずかしさより好奇心が優っているのか、興味津々といった表情だ。


「ちょ、ちょ、そういうことにはムードとかな……?必要だとは思わないか……?」

「そう言って、付き合ってる頃から全然ヤってくれなかったじゃない!もう今日は私から襲ってやるんだから!」

「いや、待って、それは男としての尊厳が……」

「何よ!全く、これだから童貞は」

「な!花梨だって処女だろうがよ!!」

「しょ、処女はステータスだもん!希少価値だもん!」

 花梨はどこかで聞いたことのあるセリフを言いながら、こっちの方を見つめている。


「とにかく、今日は絶対に襲ってやるんだから、覚悟してなさい!!」

 そう言って、花梨はお風呂に行ってしまった。


(つ、ついに花梨とヤることになるのか……でもこういうことには順序が……)

 なんてことを考えていると、いつの間にか、花梨がお風呂から上がってきて、俺のお風呂の番となり、湯船に浸かる。

(やばい、緊張で胸が張り裂けそうだ……)

 普段は特に何も感じない、湯船でさえも、さっきまで花梨が入っていたことを想像して、意識してしまう。



 お風呂から上がって、リビングでのんびりしていると、いつの間にかそろそろ寝る時間となっていた。

 俺は、花梨より一足先にベッドに行き、横になった。

(俺もヤりたくないと言ったら嘘になるが、こういうのはムードを作ってからヤるもんだ……そうだ、今日はこのまま寝てしまおう……)

 そんなことを考えているとーー


「ちょっと待ったあ!!何寝ようとしてんのよ!このばか!」

 いきなり、花梨が大声をあげて、寝室に飛び込んできた。

「わ、わ!花梨さん!!夜ですよ!静かに静かに!」

「康太が勝手に寝るからでしょ!今日こそは襲ってやるんだから!」

 そう言って、花梨は俺の上に馬乗りになってきた。

「花梨さん!こういうのは、ムードが必要というか……」

「そう言って、全然してくれないじゃん!もう、そんなこと考えてないで覚悟しなさい!」

 男女の会話として、真反対である。


(こうなったら、もうヤるしか無いのか……)

 そう覚悟して、上に乗っている花梨の腰を掴み、ベッドに押し倒す。


「花梨が、襲ってくるのが悪いんだからな……」

 そう言って、俺は前髪をかきあげる。


 すると、花梨は急に顔を真っ赤に染めて、

「あ、その……康太さん……そんな目で見られると……その……」

「え、どうしたの花梨……?」

「だから、その目で見られると緊張しちゃうでしょ!ばか!ばか!あーもう知らない!」


 そう言って、花梨は俺の腕をどかして、寝る体制に入ってしまった。

(え、なに……俺……やっと覚悟決めたのに……)

 そう思いつつ、ドキドキが止まない中、今日も俺と花梨は背中合わせで寝るのだった。






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