第3話 ファミレスでの出来事①

 その後、下駄箱で靴に履き替えた青木空は駐輪場に行き自分の自転車に乗ると、空と同じく自分の自転車に乗った水野詩月の背中を少し距離を取って追いかけて。


 高校の傍にあるファミレスに二人は入り、空は詩月と机を挟んで向かい合って座り。


 入店した以上何も注文しない訳にもいかないので、二人は取り合えずドリンクバーを注文し、各々自分が飲みたい飲み物をコップに入れて来て再び席に座ると。


「……それで水野さん、今日僕を誘ってくれた理由は何ですか?」


 最初に空が詩月に向けてそう質問をすると。


「因みに青木くんは今日はどうして私に誘われたと思いますか?」


 詩月はそんな事を聞いて来たので。


「まあ普通に考えたら僕が図書室で拾った水野さんの手帳に関する事ですよね、僕と水野さんの関係なんてそれくらいしか無いですから」


 空がそう答えると。


「まあそうですね、私が今日青木くんの事を誘ったのは私の手帳の事に関して2つお話したい事があったからです」


 詩月がそう言ったので。


「そうですか、それでその話というのは一体なんですか?」


 空がそう質問をすると。


「1つ目の話は私の手帳を拾ってくれた事に付いてきちんとお礼を言いたかったからです、あの時は急だったのできちんとお礼を言えてませんでしたから」


 詩月がそう言うと、一呼吸置いてから。


「青木くん、私の手帳を拾ってくれてありがとうございました、あの手帳は私にとってとても大切なモノだったので本当に助かりました」


 詩月はそう言って、その場で頭を下げたので。


「あっ、いえ、そんな気にしないで下さい、僕はただ図書委員としての仕事をこなしただけですからわざわざ感謝されるような事ではありませんから」


 空がそう答えると詩月は頭を上げてから。


「……そうですか分かりました、青木くんがそれで良いと言うのならそういう事にしておきます」


 少し不満がある様子だったが、それでも詩月は一応は納得した様子でそう言ったので。


「ええ、僕は別に水野さんに恩を売りたくて手帳を拾った訳では無いので本当に気にしなくて良いですよ、それで2つ目の話しというのは一体なんですか?」


 空はそう質問をすると。


「2つ目の話しですか、そうですね……青木くん、今から私は少し失礼な質問をしますが怒らずに聞いてもらえますか?」


 詩月はそんな事を聞いて来たので、空は一瞬黙ってから。


「ええ、分かりました、自分で言うのも何ですが僕は余程の事が無い限り怒る事は無いと思うので大丈夫だと思います」


 空がそう答えると詩月は納得したのか。


「分かりました、それでは失礼を承知で質問をします」


 そう言うと、詩月は一呼吸入れてから真剣な表情で空の瞳を見ると。


「青木くん、もしかしてですが私の手帳の中身を観たりしましたか?」


 先程までとは違いかなり真剣な口調で詩月そんな事を聞いて来た。

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