第80話 ダンジョンクリア

 背中にすっぽりと雑木林が収まった巨大な亀。


 イメージ的にはポケモンのドダイ〇スを超でかくした感じ。 

 なんというか、スーパーとかが入っているでかめのホームセンターと相対しているような気分だ。


「ってかボス部屋もひっろ。ねえ、これほんとに私たちだけで倒せるのかな」

 

 あまりのスケールに石紅が思いっきり引いている。

 

「……魔法当てても、ダメージになる気が、しない」

「ですね……私もここまでのは初めて見ました」


 メアにAランクの魔物と強制的に戦わされた時、散々デカブツを相手にしたと思ったがこれは格が違いすぎる。

 逆に3パーティで挑めば倒せているトップギルドの連中が凄い。

 

「なあ……深層でいいとこまで行けたしてっきり俺たち実力だけならトップより上だと思ってたけどさ、もしかしてランダムダンジョンに籠ってるから大ダンジョンクリアする気ないだけなんじゃ」


 ここまで覚悟を決めておいてなんだが、嫌な想像が脳裏を過ぎる。


 ……が、俺の心配は杞憂だった。


「……遅いね」

「ああ」


 巨大亀は確かにでかくて、攻撃はあまり効かなかった。

 だが動きがめちゃくちゃ遅く、攻撃も単調な物理攻撃のみ。

 範囲が広いのと地面が揺れるのにさえ気を付けていれば、一切ダメージを受けないのだ。


「なるほど、単純に削り切るのに人数持ってってるパターンだなこりゃ」


 この世界の冒険者を舐めていたわけではないが、トップギルドが化け物みたいな強さじゃなさそうで安心する。


「そもそも私がAランクですからね。Sランクのギルドマスターたちはともかく、一団員にそんなとんでもないのはいませんよ」


 継戦能力に難はあるが、実際のところメアは強い。

 十戦やれば半分は俺が負ける。

 とはいえそれも常識の範囲内だ。

 

「三人で陽動を頼む。俺は覚醒技連発して頭を狙う。流石に頭ぶっ潰せば死ぬだろ」


 と、いうわけで俺はひたすら溜めて斬撃を繰り返し、最近買った高耐久が売りのマジックアイテムの剣がボロボロになった頃。

 その辺のマンションみたいにぶっとい巨大亀の頭が、真っ二つに割れた。


「蓋を開けてみればどうってことはなかったな……」


 だが俺の覚醒技があったから楽だっただけで、普通にやろうとすれば混合魔法を用いたとしても気の遠くなるような作業だっただろう。


 ボスは倒すと光の粒子となって消え、だだっ広いボス部屋の中心に巨大な宝箱が現れた。

 

「これがランダムダンジョンの攻略報酬か。中身は……」


 やたらと重たい宝箱をどうにか開けると、そこにはぼろっちいマントが一つだけポツンと置かれていた。

 恐らく何らかのマジックアイテムなんだろう。街に持ち帰って鑑定してみるまで性能は分からない。

 しかし、


「これはなんとも言えないがっかり感があるな……」

 

 半月以上費やして手に入ったのがこんな布切れ一枚では割に合わない。

 万一性能がはずれだったら発狂する自信がある。


「後はダンジョンを壊して帰るだけか」


 高額報酬が見込めるランダムダンジョンを国が独占せず冒険者に攻略させるのには理由がある。

 ダンジョンは周囲の土地から魔力を吸い上げ成長し、次第に中の魔物が外に溢れ出てきてしまうのだ。

 いわゆるスタンピードというやつだ。

 出て来る魔物は段々強力且つ大量になり、最終フェーズまで放置すればボスすらも出て来てしまう。

 こうなると戦争並みの大軍勢を用いて対処しなくてはならない為、国としては見つけ次第絶対に対処しなくてはならないのだ。


 まあ実際大ダンジョンと違ってランダムダンジョンのボスは一度しか現れない為特に不都合はないのだが。


「んで、これがダンジョンの核か」


 宝箱の中身を取り出すと、ボス部屋の一番奥の岩がぽっかりと消えた。

 奥には青白く輝く巨大なクリスタルが鎮座している。

 大ダンジョンで転移に用いるものに似ているが、その数倍は大きい。


 ボロボロの剣に魔力を込め、思い切りクリスタルをぶった切る。

 するとちょうど寿命を迎えたのか、剣がパキンと音を立てて折れた。

 同時にクリスタルも甲高い音を立てて砕け散り、室内に青白い魔力が渦を巻く——


 

「ぐ、なんだこれ……身体が?!」


 全身が内側から灼熱に焼かれ、意識がぐるぐると回る。

 吐き気を覚えて、かはっと息を吐きだす。

 やがてその熱さが心臓の辺りに収束していくのを感じて、直後。


 俺の意識はそこで途絶えた。

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親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたらしいが、魔法を極めて最高のエルフ嫁と楽しくサバイバルしてるので平気です~ くろの @kurono__

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