第2話 彼は、今、何を運ばされているんだ?ラストが、笑えない。ホントに、日本のリアル。気持ち、ほっこりしたいのになあ。

 「謎の、運び屋事件」

 意味がわかると、何とも言えない話の、続きです。

 「くそう…。どうして、こんな仕事を引き受けてしまったんだ?」

 少女に言われ、気が、ゆるんでいたか?

 「こんな仕事は、やめたい」

 でも…。

 やめたくないという気持ちも、ある。

 「やめたら、負けになりそうだ」

 だろうね。

 「あ、何だ?」

 箱の中から、冷気があふれはじめた。

 不安、不安。

 「冷凍…。ちょ…。殺されて凍らされた人間が、入っているんじゃないだろうな?」

 が、それはちがうだろうと、すぐに気付かされる。

 「…いや。…人間が入っているのなら、もっともっと、重いはずだ」

 余計に、気味が悪くなってきていた。

 「この箱の中身は、何なんだよ!」

 どう考えても、謎。

 「…ダメだ。何も、できそうにない」

 箱の中身を見ることは、できなかった。

 開けてしまったら、中身がバラバラになって、取り返しのつかないことになるかもしれないじゃないか。

 「それに…。やっぱり…」

 運び屋をあきらめ、中身を見てしまったのなら、負けた気になってしまう。

 「…ふう」

 何とか、目的地にたどり着いた。

 「この場所で、良いはず。けれど…え?」

 荷物を下ろした先は、コンビニ。

 驚いた。

 フツーの、フツーのコンビニだったのだから。

 ただし、コンビニから出てきたジャージ姿の高齢男性が言ってきたことは、フツーじゃなかった。

 「おや、運んでくださったんですね?さすがは、シューショクヒョーガキ世代。さとった世代のあの子に、上手く使われましたね?ひひひ…」

 …おい!

 何を言いだすんだ、この高齢者野郎は!

 「ひひひ…。ちょっと、待っていてください」

 この高齢男性は、何者?

 …待つこと、 5分。

 高齢男性が、コンビニの制服を着て、彼の前に現れた。

 何だと?

 このコンビニの、店員だったのか?

 が、そんなことはどうでも良いんだ。

 「この箱の中身は、何なんだ?」

 彼の興味は、そのことでいっぱい。箱に、チラチラと目をやっていた。

 そんな彼を見て、高齢男性が、やおら、ほがらかに、ゆったりまったりと、顔をゆがませる。

 「そうだ。礼をしなければ、なりません」

 高齢男性が、箱を開けはじめた。

 ついに!

 ああ、ついに!

 ついに、箱の中身が明らかになるのだ!

 「…え、あの。え、え?何だと!」

 驚いたの、何の。

 「おでん?」

 箱の中には、冷凍されたコンビニおでんセットが、びっしりと敷きつめられていた。

 「…そうか。冷気が、感じられたはずだ」

 高齢男性は、なお、すまし顔。

 「運んでくださって、ありがとうございました。おでんセットを 1つ、持っていってくださいな。外国籍の孫娘も、喜んでいることでしょう」

 「…外国籍の孫娘だと?やられた!」

 人材不足な、物流社会。

 そして、コンビニ社会の闇。

 「外国籍の人が、日本に、たくさんやってくるのか?困るなあ」

 そうは言っても、外国人労働者にきてもらって働いてもらうしか生き残りの道はないような、今の日本。

 わけが、わからない。

 コンビニのおでんや、今の日本の、暑さ寒さのようにな。

 夏のリバウンドも、いい加減にしてほしいもんだ。

 「日本は、おかしくなりすぎだろ。…でも、こういう日本がいつきても、おかしくはない気がする」

 おでんを、一口。

 「…まずい!」

 温めるのを、忘れていた。



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外国人の少女に、「運び屋」をさせられる!この荷物、何?悲しく、ラストに納得。 冒険者たちのぽかぽか酒場 @6935

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