第4章 あらすじ
〇国軍の異動
アストゥーリア王国では有名無実と化していた“光竜隊”が再編され、その隊長にアルストール・トラストリア公子が着任し、王都やその周辺の警備を担う事が決まった。
エーミール・ルファス公爵とその対立派閥との調整と妥協の結果だった。
光竜隊の再編に合わせて、炎獅子隊でも異動が行われる事になる。炎獅子隊においても幹部会議が行われた。
その中で、光竜隊への異動が決まっている副隊長の一人クリスティナが、フォルカスをアークデーモンに変えた容疑者としてフェルナン・ローリンゲンの名を上げた。独自の情報源を持つ彼女は、そのような疑惑を掴んでいたのである。
会議では、遅れ遅れになっていたヤルミオンの森での妖魔討伐遠征についても話し合われた。
また、会議の後、現炎獅子隊長メンフィウス・ルミフスと隊長補佐兼副隊長であるギスカーは、エイクの事について語り合った。
メンフィウスはギスカーに、アストゥーリア王国が抱える深刻な懸念を教え、是非エイクの力が必要だと告げる。炎獅子隊長に最もふさわしいのはエイクだ、と。
軍には、そのようにエイクに大きな期待を寄せる者もいたのである。
〇会議
ゴルブロとの戦いを終えて、エイクと孤児院“大樹の学舎”との関係に変化があった。院長のバルバラがエイクの配下として仕える身になったのである。エイクは、孤児たちの前で己の剣技を披露したり、孤児の一人であるオルリグと立ち会ったりした。
そして、エイクは配下の者達と重要な会議を行う事になった。メンバーはアルターとセレナ、ロアンに加えて、新たにエイクに隷属するようになったサキュバスのシャルシャーラだ。
エイクらは、エイクの父ガイゼイクの仇を“虎使い”と呼ぶことにして検討を加えた。そして、ダグダロアの預言者についても話し合われた。“虎使い”と預言者は同一の存在である可能性もあるが、絶対とはいえないので、それぞれについて検討したのである。
その強さや目的、対応策などについてだ。
敵対者の勢力は強大だと推測された。
特に預言者の影響はアストゥーリア王国だけにとどまらず、西方地域の広範囲に及んでおり、魔王と呼ばれるほどの強力な魔族すらその配下にしているようだ。
状況によっては、国家の枠を超えた巨大な規模の戦いが起こる可能性すら想定できる。
エイクは、今の自分の力では“虎使い”にも預言者にも勝てない事を認め、敵の敵を見出して味方に付けるという方針をとる事にした。
可能ならば、何年もの時間をかけてでも自分自身が強くなって、自分の力だけで仇を討ちたい。しかし、そんな時間を稼げる保証はないから、今出来るだけのことをすべきだと判断したのである。
と言っても、現状では不明の事が多すぎ“虎使い”の正体は判然としない。とりあえずは最も怪しいフェルナン・ローリンゲンを調査する事となった。
ただ、“虎使い”に関しては、複数の国の機関も調査を行っており、“虎使い”は動き難い状況だと推測された。エイクは、そういう事ならば今のうちに出来るだけ動いておきたいと考えた。
会議の席ではレイダーが支配していた盗賊ギルドを乗っ取る事なども話し合われた。
〇フィントリッドとの話し合い
配下の者達との話し合いを終えたエイクは、配下の者達と模擬戦をしたり、セレナから罠発見の技術を習ったりしてから、フィントリッドとの話し合いに臨んだ。そして、自身が知り得たダグダロア信者に関する情報を伝えた。
フィントリッドからは1つの提案があった。
フィントリッドが支配する森に女オーガが住み着いたのだが、腕試しにこれと戦ってはどうか? というものだ。フィントリッドは、そのついでに自分の配下の主だった者達を紹介しようと告げた。
この後にサルゴサに行く予定があったエイクは、サルゴサから帰還した後で良いならば、という条件でこの申し出を受けた。
またエイクは、炎獅子隊と衛兵隊による大規模な妖魔討伐遠征がヤルミオンの森で行われる事になった事も伝え、これに対応する為に、預言者配下の妖魔達に何らかの動きを見せるだろうとも告げた。
帰宅したエイクは、テティス達の冒険者パーティ、“黄昏の蛇”と名付けたそのパーティに、炎獅子隊の妖魔討伐遠征を補助する仕事を受けるように指示した。
以前妖魔から救ったチムル村も作戦範囲に含まれることを知って、チムル村へ駐留して村に被害が出ないように留意させることにしたのである。
〇迷宮都市サルゴサでの出来事
その後エイクはサルゴサの街に赴いた。
直接的にはサルゴサの迷宮内でゴルブロ一味と戦った事に関する調査に協力するためだが、エイクは自身でサルゴサの迷宮にも潜りたいと考えていた。配下にしたサキュバスのシャルシャーラはサルゴサの迷宮の一部に対して精通しており、彼女から得た知識を活用したいと思っていたからである。
サルゴサの街に着き、街の様子を見聞したエイクは、サルゴサではアルストール・トラストリア公子の人気が非常に高いことを知った。
そして、迷宮内では、シャルシャーラから得た知識を用いて、隠し部屋でオリハルコンゴーレムという強敵と戦う事が出来た。
しかし、魔法によって守られたオリハルコンゴーレムに勝つことは出来なかった。エイクは、何か特殊な方法を用いてでも、より強力な攻撃を繰り出せるようになる必要があると考えたのだった。
更にエイクは、冒険者が大量の魔物に追われているのを感知した。実戦経験を積むためにその魔物たちと戦う事にしたエイクは、結果的に一人の女剣士と共闘する事になる。
女剣士は途中でゴーストに憑依されてしまい、エイクによって救われたものの意識を失う。
エイクはその後1人で戦い抜き、体力切れギリギリになりながらも、全ての魔物を倒し、女剣士と若い冒険者の姉弟を守り抜いた。
その後も若干のごたごたがあったが、エイクはさっさと王都に帰る事にした。
〇深まる疑惑
王都に帰ったエイクは、また配下の者達と会議を開いた。
新しい情報もあり、フェルナン・ローリンゲンへの疑惑はほとんど黒と断定してよいほどに強まった。
また、フェルナン、サンデゴに加えて、怪しい人物の名前が挙がる。賢者の学院に属する賢者の一人ナースィルという者だ。そのものこそが、フォルカスにデーモンに変身する魔術をかけた張本人かも知れないというのである。
だが、いずれにしてもまだ物証不足で、調査は続けられる事となった。
〇森の城での一時
次にエイクは、以前の約束通りフィントリッドの城へ赴くことにした。
そしてそこで、フィントリッド配下の幹部たちを紹介される。
氷水を司る最上位の精霊王フェンリルのストゥームヒルト、ミュルミドンの特殊個体ギィレレララ、アルラウネの特殊個体と紹介されたセフォリエナ、
いずれも強大な力の持ち主だが、エイクは特にサーラに注目していた。感知されるオドが他の者と比べても格が違うと言えるほど強かったからである。
エイクは、フィントリッドらと食事を共にしたりしつつ語り合った。
フィントリッドからは、オフィーリア王女の時代に起こった反乱について、現在では反乱を起こした貴族が極悪人とされているが、それは勝者によって書き換えられた歴史であり、実際には王の方が悪逆で、反乱貴族らは民の為に立ったのである。といった、アストゥーリア王国の隠された歴史が語られた。
エイクもまた、母の半生などを語った。
その中で、エイクが、もしも時が遡ったらという仮定の話をした時に、フィントリッドはエイクが戦慄するほどの、異様に強い反発を示した。そんな若干不穏な事もあったが、ともかく一夜が過ぎ、翌日エイクは女オーガと戦うために、フィントリッドの城を後にした。
〇“黄昏の蛇”はメンバーを増やしてチムル村に赴く
エイクがフィントリッドの城にいる頃、“イフリートの宴亭”にエイクを訪ねる者があった。サルゴサの迷宮でエイクと共に戦った女剣士だった。
彼女はサリカという名で、実はエイクとの間に因縁があった。5年ほど前に、サリカの父をエイクの父ガイゼイクが討ち取っていたのである。
だが、サリカはその事でエイクを恨んではおらず、彼女の目的は父の死後行方不明になっていた兄を探す事だった。兄がアストゥーリア王国にいるらしいという話を聞いたために、遠方よりはるばるやって来たのである。
そしてサリカは、兄はエイクに興味を示すかもしれないと考え、エイクに接近しようとしていた。また、命を助けてもらった恩返しもしなければならない。とも考えていた。
そのサリカにテティスがパーティへの加入を誘い、サリカはそれを受諾。
“黄昏の蛇”は5人で任務地であるチムル村に向かった。
〇女オーガと戦う
エイクは、予定通り女オーガと接触し、これと戦う事になった。
女オーガはアズィーダという名で、格闘術を身に付け、女でありながら破壊神ムズルゲルを信仰しているという、非常に珍しい存在だった。そして、竜に変身するという稀有な術を身に付けてもいた。
エイクは竜に変じたアズィーダを倒す。アズィーダはムズルゲルの教義に従いエイクに仕える事を誓った。
〇異様な存在と戦う
アズィーダを倒した少し後、エイクは今までに感じたことがない異様なオドを感知した。そのオドの持ち主は、形は概ね人型だが、体色は黒紫色で体中に無数の口を持つという姿をしていた。
その存在とも戦い、打ち勝ったエイクだが、その存在はフィントリッドに敵意を持っているらしかった。
アズィーダによると、その存在はアズィーダの故郷である大陸の西の端、スティグラントという地で発生するアンデッドの一種で、スクリーマーと呼ばれているとのことだった。
しかし、エイクが感知したオドは、アンデッドのオドとはかけ離れたものだった。エイクは、その存在とフィントリッドの関係も含めて関心を持った。しかし、今の自分には関係ないと考え、今は深入りしない事にした。
その存在は、確かにフィントリッドにとって軽視できない存在だった。フィントリッドらは、その存在を“過誤者”と呼んでおり、侵入を知り対策の為に会議を開くほどだった。
〇魔族軍の攻撃
フィントリッドの城に戻ったエイクに急報がもたらされる。“黄昏の蛇”の面々が駐留しているチムル村が、妖魔の大軍に攻撃されているというのである。
妖魔の攻撃はチムル村だけではなく、アストゥーリア王国軍の妖魔討伐部隊全体にも行われており、援軍は望めないとの事だ。
だが、妖魔軍全体を指揮しているらしい魔族は数十ほどの数で近くの森に潜んでいる。このため、それを壊滅させることが出来れば、他の妖魔も壊走するだろうという事も予想された。
エイクは、自身の女達を救うためにも、実戦経験を積むためにも、その魔族の指揮官を討つことを決める。
だがこの時エイクは、他者の命を守る事よりも自分の今後の戦いを有利にする事を優先して、新たに配下にしたアズィーダの力は隠し、時間をかけて十分な準備もしてから戦う事にした。その結果、兵士の犠牲が増える事を承知の上で、だ。
エイクは、他人の命よりも自分の目的を重視する人間になっていた。
だが、エイクは非情にもなりきれず、チムル村の村人達が犠牲になるようなら、その前に能力を隠すのをやめて戦うようにアズィーダに指示した。見知らぬ兵士は見捨てるが、知己であるチムル村の村人達は守る。という事にしたのだ。
自身でも中途半端なことをしていると考え、自己嫌悪を懐きつつも、エイクはそのような態度をとってしまったのである。
〇魔族の指揮官を討つ
エイクは気持ちを切り替え、予定通り十分な準備をした上で魔族の指揮官を攻撃した。
その魔族は、ダグダロアの預言者の手のものと思われていたが、案の定ダグダロア信者だった。
エイクは、比較的簡単に指揮官を倒した。だが、その直後に預言者によるものと思われる“神託”が下り、残された魔族たちは、ダグダロア信者に特有の自爆攻撃を敢行する。
優れた魔法耐性と強靭な生命力のお陰で命に別条はなかったが、自爆攻撃を仕掛けてくる者達の異様な有様を見てエイクは戦慄した。だが、ともかく魔族の指揮官とその側近達は全滅した。
そのエイクの戦いを、魔法装置をつかって見ている者達がいた。2人の男と1人の女だ。
どうやらその女が、名代として何らかの権限を与えられ、魔法装置を用いて“神託”を下したらしい。
また、男の1人が“主上”と呼ぶ存在へ今見た顛末を報告するために退出して行く。
その者たちは、何者かに仕えているのである。
そして、名代の女は、エイクに強く注目していた。
〇報告を受ける者
エイクが魔族の指揮官らを討ったことで、想定どおり他の妖魔は逃げ散り、チムル村は救われた。
妖魔討伐部隊の本隊を指揮し、チムル村の南方で妖魔と戦っていた炎獅子隊長メンフィウス・ルミフスは、妖魔軍を壊滅させた直後に、エイクの活躍でチムル村が救われたとの報告を受けた。
メンフィウスは、エイクの活躍を聞き高揚していた。
また、フェルナン・ローリンゲンも、ナースィルから妖魔を使った作戦が失敗したと連絡を受けていた。彼らはこのことについて語らったが、その内容は彼らがダグダロア信者で、エイクの父ガイゼイクの死にも関わっていた事を示唆するものだった。
そして、彼らは新たな行動に出る事を決めた。
大規模な作戦が失敗したにも関わらす、ダグダロア信者の動きは、より大きなものになろうとしていたのである。
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