コスプレオタク、手札を見てニヤつく
戦力の話。
わかりやすい切り札としてアッシュの『
「六人か。これでも少ない方だが……どうだアイリ、もう二、三人」
『蜘蛛』強襲にあたり、最低限の戦闘は考慮しなければならない、とアッシュは言う。
「うーん……」
出発を来週に控え、いまは最終確認のとき。
メンバー的にも戦闘は充分こなせるし、ボクとアッシュの
「オルテちゃんとシーザーさんのリスク見て即離脱コンボが強いんだよな……敵の前に突然アッシュ飛ばしてぶった斬るのも強いし。ディードスさんエフェールさんで一旦受けてからの後出しジャンケンで解決できない場面があまり思いつかない」
オルテちゃんの転移魔術、目の届く範囲で飛ばす対象からの抵抗がなければほぼノーリスクノーコストで使えるのめっちゃ強かった。王都の騎士団には内緒、ということなので、そういうことにしておこう。
「……えらくウチの部下を信頼してくれているな」
「そりゃまぁね」
この間慣らしで野良の魔物を退治しに行ったとき、充分痛感した。この面子だと一番使えないのボクだしな。基本後衛のご飯出したり傷薬出したり合間合間で服を直す担当です、ハイ。
「ボクみたいなお荷物が荷物持ちしててスミマセン……」
「何を言っているんだ。行軍で最も重要な役割じゃないか」
「……はい」
ちょっとマジめに叱られた。やむなし。
「――とりあえず、ボクはこれ以上メンバーを増やすべきではないと思う。下手に増やすと連携にノイズが入って、いらない犠牲に繋がるだろうし」
「ははっ」
「え、なに? いま笑うところあった?」
「いや、すまない……。俺も一度、イリスさまの指揮下に入ったことがあってな。やはり兄妹は似るものだな、と」
えぇ……お兄さまとォー……?
「すごく嫌そうだな……」
「嫌ですからね。ちなみに、どの辺が?」
「そうだな。兵のことをいい意味で駒扱いしているところとか、かな」
「……なるほど」
駒というか、トレーディングカードゲームのイメージだけど、ボクは。
「って、待ってアッシュ、ボクは別にそんなつもりじゃ……」
「悪い気はしないさ。むしろ誇らしさすらある……ちゃんと俺たちのことを見てくれているんだな、ってさ」
「…………そうかな。そうかも」
思ってみれば、アッシュたちは平民の出だ。ボクやお兄さまが、まぁ、貴族なわけで……うん、そういうのもあったんだろう。半年くらいずっとこの村に腰を据えていたからわからないけど、そういうのもあるのか。
「俺たちの命、任せたぞ」
「デカいデカい、期待とか色々重いって」
「荷物持ちにはちょうどいいじゃないか」
「あーたーまーをー撫ーでーるーなー!」
最近アッシュからの女児扱いがはなはだしい気がする。
しかしアッシュ、手が大きい。見た目の三割り増しくらいで大きく感じる。男性っていうのはそうなんだろう。
「ははっ。ついな、つい」
「つい、って……。妹とかいたの?」
「いないよ。俺は孤児だ」
「あ、そう……」
変なこと聞いちゃったな……。
「気にしてないよ、アイリ。それに、妹みたいに思ってるのとは……少し……違うというかな……」
「そうは言ってもなぁ……ホントごめん……」
気が沈む気が沈む。
「違うんだアイリ、だから……その……まぁ、だな……」
「あぁ、うん……うん……」
そのまま、アッシュとは出発の日まで気まずくなってしまった。
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