第4話シンの物語2

朝めざめると、シンの精神的な部分においてある変化が起きていた。まだ、何か確実に掴め 切ったわけではないけれど、自分らしく、自分の中では人間らしい正直な生き方をしたくなっ た。 それは一言でなんなのか、などと今のシンからすると答えれそうもないことではあるが、 《いい》企業を辞めるという決断をする事は、彼の中では明確ではあったし、その決断はより 一層に、彼を明晰な人間へと変貌させるように、彼自身直感的に感じていた。 何よりも、彼はしばらくは直感というものはあまり信じてなどおらず、大きな決断をする時 は何かしらの情報か、誰かのアドバイスに従いきった傾向が彼の今までの生き方として、目立 ってはいたのであった。

そして、彼は無職なり、旅をした。 アジア、メキシコ、ヨーロッパ、さまざまな場所へと行った。 身体と貯金は細くなっていくのに、心は太くなっていっているようにみえた。 さらには、ながらくは溢れることなどなかった。自然な笑顔をすらした。 その姿はどことなく、風呂場に映し出される少年に似ていた。

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あなたが覚醒する物語 @hikarukawa61

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