月面調査①

☆一話から読んでいただけると嬉しいです☆



 その内容というのは、新たな燃料として注目されている謎の物質、「ソラル」を発見、回収することだ。


「ソラル」は、石油、石炭、などの化石燃料とは違い、燃やした際に二酸化炭素が発生しないと考えられているため、現在深刻化している地球温暖化を解決する大きな一手になるのではないかと多くの研究者に期待されている。


しかし、実際のところ、私たち月面調査隊が五ヶ月ほど前にここに来てから二度に渡る調査を行ったが、二回とも、何の成果も得られないまま終わってしまったため、「ソラル」が存在しているかどうかすら分からなくなってしまい、振り出し、いや、振り出しよりもっと前の状態に戻ってしまっている。


そして、今日行われる三回目の調査でも成果が得られなかった場合は地球に帰ることが先週決まった。


私は正直諦めかけていた。認めたくなかったけれど、ネガティブな顔をした自分が確かにそこにいた。


「きっとみんなもそうなんだろうな。」

と思うことが、逃げ出したくなる気持ちを抑える唯一の精神安定剤だった。


そんなパッとしない日々が続いていたが、彼女だけは違った。そう、今朝も皿を割ったことで、ほぼ完全に「抜けてるやつ」のレッテルを貼られた咲良だ。


どんな日でも、彼女だけは明るい笑顔で周りの雰囲気を和ませてくれた。


私は今日、そんな彼女と酸素残量の関係上、二人きりで月面調査に行くことになった。


...


めちゃくちゃ心配だ。


いくら場を和ませてくれるやつでも、

おっちょこちょいなことに変わりはない。


「なんでこんな日に限って調査用酸素ボンベが切れるんだよ!」


とずっと思っていた。


咲良以外の隊員と行かせてもらえるよう、リーダーに説得してみたものの、万全の状態で動ける隊員が私と咲良しかいなかったため仕方なくこうなってしまった。


そろそろ準備を始めないといけない。

最新型の酸素スーツを見にまとい、

「もしも」の時のための遺言書を書き慣れた手つきで書いた。


流石の咲良も少し緊張しているようだ。


無理もない。


今日の私たちの成果によって地球の運命が変わると言っても過言ではないからだ。


「いつでも行けます。」


調査機体の準備も整ったらしい。


「よし、それじゃ、行くぞ」


ステーションの扉に手をかけ、外に出ようとしたその時...


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宙返り 奥村宇宙人 @Minteee

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