第41話 潜入作戦

「お前たち、一体何をしているのか分かっているのか?」

「ふっはははははッ! いい気味だな、元隊長さんよ。いや、大罪人の大悪党めが」

「何度も言っているが、オレたち騎士隊は一度足りとも罪など犯していない。一体何をしたというのか言ってみろ」

「ふっ、では冥土の土産に教えてやろう。貴様らの罪状は―・―・・」


 ◇


「と、捕らえられただと!?」

《はい。一時は生命の危機に陥りましたが、別の者が現れて拘束させたようです。今は警備所にある牢屋に全員投獄されています》


 騎士隊が命の危険にさらされたというのか。

 間近で戦闘を見たことはあるが、あいつらも大概人間離れした強者だぞ。


「そんな簡単に捕まるようなヤツらでは無いはずだが」

《武力による衝突は起きていません。ガトー様が敢えて降伏したようです》


 抵抗せずに降伏したということか。

 何か言えない事情でもあったんだろうが、ガトーたちを見捨てる訳にはいかない。


 すぐに救出へ向かう。


 まずは、ショコラたちに連絡しておくか?

 いや、今は下手に不安を煽らない方がいいよな。

 それであれば仲間を連れて行くのもやめておくか。


 みんな、新しくなった施設を楽しそうに見回っているし、何も言わない方がよさそうだ。


 ここは俺一人で助けに行く。

 領域内にいるのであれば、まずは念話が先だな。


『ガトー、俺だ。大丈夫か?』

『………………』


 応答無しか?


《マスター、皆気を失っています。念話での連絡は不可能と断定します》


 急がなければマズいな。

 それには最短ルートで行く必要があるが。

 

「お客さん、住民割りで二名様で銅貨二枚だよ」

「ほら、お母さん言った通りでしょ?」

「あら本当ね。ようやくお父さんにお花を添えられるわね」

「毎度あり〜。それではどうぞご乗船ください」


 渡し舟か。

 あの舟にバイクを載せていくか?

 いや、それならそのままバイクで向かった方が早いか。


 だがその先はどうする?

 一度だけしか森に踏み入ったことは無いが、あそこは帰らずの森と違って、生い茂る木々が行く手を塞ぐからな。

 とてもじゃないが、<配置変更>をしながらバイクで爆走して突っ切るには不可能だ。

 

 それなら転移魔法陣ならどうだ?

 確か、〈超転移魔法陣〉に進化していたな。


 超転移魔法陣:領域内であればどこへでも転移できる超すごい魔法陣。

 効果:不壊

 必要KP:30,000(進化使用時)



「よっしゃあああああああああぁッッ!!」


 きたこれ。

 後は装備類をチェックだ。

 スーツよし、聖剣よし、傘よし、アレよし。コレよし。


 いざ参る。


 ◇


「おい、フェイン起きろ」

「うぅっ……た、隊長。ご、ご無事でよかったです」

「あぁ、気を失っていただけだ。皆も命までは取られていないようだ」

「ここはあの牢屋ですね。どうやら俺たちは騙されていたようですね……」

「ようやっと目覚めたか、ガトー隊長。いや、元隊長と呼べばいいのか?」

「なッ!? まさか、お前が……とんだ食わせ者がいたようだな。なぜだ? なぜ王国大使であるお前がこの様な卑劣な事をする? 答えろ、クラン!」

「ふっ、まずはガトー隊長とフェイン元副隊長には感謝をしなければならんな。よくぞこれまで従順に従ってくれた。お陰で我々の計画通りに事が進んだというものだ」

「計画だと……?」

「ふっ、ただ死の荒野でくたばらなかったのは計算外だが……」


 ◇


《マスター、あの建物の地下に捕らえられています》

(了解)


 うーむ、それにしても数が多いな。

 森を警備するのにこんな大人数が必要だとは思わないが、やはり騎士隊がらみってやつか。


 問題はどう侵入するかだな。

 正面突破なら武力行使で行くか、それとも慎重に行くかだが……。


「ピュ〜イ」

(しまった!? おい、ペン銀! お前何で付いてきてるんだよッ!)

「おい、今何か聞こえなかったか?」

「あぁ、あの木の方だ」


 やばっ、こっち来てるし。

 あ、こういう時はあれだ。


「ワンワンッ」


「……何だ犬か。驚かせやがって」


 うんうん、我ながら完璧だな。

 困った時は動物の鳴き声で何ともなる。


「おい、こんな所に犬がいればそれこそ大騒ぎだぞ」

「確かに犬なんて大物の魔物がいるわけないか。ということは、そこにいるのは誰だッ!」


 は? 嘘だろ。

 俺の完璧なまでの誤魔化し方に一切のミスは無かったはずだが。


《マスター、犬の鳴き真似は一級品でしたが、犬はA級の魔物です。ここに犬がいるとなれば、冒険者含めてこぞって討伐に来ます》

(マジ……?)

《マジです》


 おい犬だぞ、犬。

 犬がA級の魔物だとか、ふざけんなよ。

 クソッ、バレちまったじゃねえか。

 もうそこまで来てるし。

 

 仕方ないか。


「ピュ〜イ」

『おい!? 出て行くんじゃねえ!』


「ん? なんだ、ペン銀かよ。驚かせやがって」

「ほら、あっち行け。邪魔だ、シッシッ」


 ペン銀はいけるんかーい!


《マスター、ペン銀はこの辺りにも生息しています》

(お、おう……)


 とにかくギリギリセーフだったな。

 ただ、どちらにしてもヤツらを何とかしないとダメか。


「おい、お前たち! もうまもなく来られるぞ。位置につけ!」

「「「「「はっ!」」」」」


 ん? 整列何かしてどうしたんだ?

 あー、馬車か。

 誰か乗ってるな。


「お待ちしておりました。クラン大使様」

「うむ、して、ヤツらを殺してないだろうな?」

「はっ! 気を失っているだけです。どうぞご案内いたします」


 あの偉そうなヤツは誰だ?

 こういう時に〈鑑定〉ができれば良いんだがな。


《周辺の者、56名を住民にしました》


 あ、領域内だから住民にできたな。

 それじゃ早速、<住民鑑定>。


 砦の中に入って行ったが、間に合ったみたいだな。


 名前:クラン・ベレト

 LV:68

 性別:男

 年齢:458才

 種族:魔族

 適職: 執行者・大使

 スキル:<身体強化LV10><闇魔法LV10><威圧><統率><狡猾><恫喝><恐喝>

 称号:<人族キラー><獣人族キラー><エルフキラー><ドワーフキラー>

 忠誠:無



「は……?」


 魔族だと!?

 それに今まで見てきたヤツの中で一番レベル高いぞ。

 あいつは親玉か?


(プラン、王都に魔族なんて住んでるのか?)

《いえ、人族になりすましている様です。さらに王都は領域外のため、他に潜んでいるか現状確かめることは不可能です》


 ヤツは間違いなく敵だな。

 魔族であれば、遠慮なくぶっ倒しても問題ないよな。

 ただあの兵士共は人間なんだよな。


 やはり、ここはあの手でいくか。

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