第40話 進化の嵐と不穏な気配

「そこで止まれ」

「すまないな。オレは騎士隊隊長のガトーと申す。訳あって手形は無いが通らせてもらいたい」

「「「ふ、ふっはははははははッ!」」」

「何がおかしいと言うのだ?」

「騎士隊隊長だと? 貴様がか? 騎士隊の間違いではないのか?」

「あー、こいつらは五年も前に追放されたんだ。時が経って忘れちまったんじゃねえのか?」

「「「ふっはははははははッ!」」」


「なッ!? 何を言うかと思えばオレたちが追放されただと? ふざけたことを抜かすものではない」

「そうだ! 俺たちはな、森で警備兵をしてるヤツらに舐めたことを言われる筋合いはねえ! とっとと通しやがれッ!」

「「「そうだッ! 俺たちが何をしたと言うんだッ!」」」

「まぁ無理もないか。今や貴様たちは王国から指名手配がかかっている賞金首だ。大人しく縄に入れば痛い目を見ずに済むぞ?」

「やめておけ。何かの間違いだ」

「隊長、やはり様子がおかしいです。コイツら俺たちを殺すつもりですよ」


 ◇


「プラン、進化できる施設を見せてくれ」

《承知しました》



 <進化前>     <進化後>

 家屋(特)   → 家屋(極)(3,200)

 長屋(特)   → 長屋(極)(6,250)

 五右衛門風呂  → 十左衛門風呂(40)

 スーパー温泉  → SUHMG温泉(2,000)

 大聖堂     → 大神殿(10,000)

 料理ガチャ   → シキ神様(20)

 団地      → 超団地(40,000)

 魔導二輪車   → 超魔導二輪車(1,000)

 転移魔法陣   → 超転移魔法陣(30,000)

 武器屋     → すごい武器屋(2,000)

 防具屋     → すごい防具屋(2,000)

 美容院     → すごい美容院(1,000)

 服屋      → すごい服屋(1,000)

 靴屋      → すごい服屋(1,000)

 植物園     → すごい植物園(2,000)

 学校      → すごい学校(5,000)

 養鶏場     → すごい養鶏場(2,000)

 養豚場     → すごい養豚場(3,000)

 牧場      → すごい牧場(4,000)

 スラスポ    → すごいスラスポ(200)

 ドラスポ    → すごいドラスポ(100,000)

 すごい畑    → ものすごい畑(100)

 すごい果実の木 → ものすごい果実の木(100)

 すごい公園   → ものすごい公園(1,000)

 すごい目安箱  → ものすごい目安箱(100)


       <残り119,674KP>

ーーーーーーーーーーーーーーーー



 う、俺の言い方が悪かった。

 これまた見づらいから、次からは簡略化してほしい。


 進化リストには色々と気になるのが出てきたが、家屋(極)なんてものもある。

 今の家でも見回れてないというのに、これ以上大きくなってしまっては迷子になるだけだ。

 まー、見るだけならタダか。


 家屋(極):重厚な魔石造5階建ての家屋というより大極邸。大魔石露天風呂、大魔石便所、エアコン、極み キッチン、極ダイニングルーム、極キングベッドルームなど家具備品完備、庭、噴水、プール、リムジン、専属料理人、警備兵、メイド付。

 効果:不壊・清潔・防音耐性・環境耐性

 必要KP:3,200(進化使用時)



「大極邸とは一体……なッ!? メイドだと……「紅茶をお持ちいたしました。ご主人様」とか言っちゃう昔ドラマで見たやつだ」


 うむ、悪くはない。いや、むしろ進化させよう。

 後はざっと見た所、〈超〉と〈すごい〉と新たに〈ものすごい〉シリーズへ進化するみたいだ。

 

「ん、SUHMG温泉? 読めないぞ? スー…」《スーパーウルトラハイパーミラクル極楽温泉の略です》


 ――な、何と素晴らしいネーミングセンスなんだ!

 うんうん、まさに天才とはこういう事を言うんだよな。

 おっと、ついテンションが上がってしまった。


 後は料理ガチャがまさかの〈シキ神様〉になるのか。

 ま、これは進化させないと罰が当たるというものだ。


 他に気になるものといえば、スラスポとドラスポって、これも進化できるのか!?

 転移魔法陣もそうだが、スフィアのDP産だぞ。

 これも開拓七不思議の一つということにしておくか。


 何にしてもポイント不足で全て進化することはできないから、たまにはプランに任せてみるか。


《お任せください。マスターはとても運がいいです。たった今、進化キャンペーンが始まりました。まとめ進化ですと、なんと一万開拓ポイントで進化可能です。早速進化させます》

「一万ポイントでいいのか……」

 

 ◇


 進化が始まり、戦争が起きたかと思うほどの轟音が鳴り響いている。

 ひとつひとつの施設がとんでもない大きさになり、さらに設置済みの施設は、自動で外へ外へと追いやられている。


 わざわざ自分で<配置変更>しなくていいから、プランに任せて正解だった。


「ピュ〜イ」


 早速、ペットにしたペン銀を引き連れて、新しくなった施設を見て回っている。

 ちなみにペン銀は住民からも好評で、通りすがりの者たちに餌を分け与えてもらっている。

 鹿に鹿煎餅を与えるように、もはや神獣扱いもいい所だ。


 そして何といっても手触りだ。

 こいつは見た目通り、鉄のように硬く、キンキンに冷たいし、ツルツルしている。

 さらに重すぎて持ち上げることもできない。


 だが見ているだけで、なかなかに癒される。

 俺はこうしてただ一緒に歩いているだけでいい。

 名前はまだ付けていないが、近いうちに付けてやろうと思う。


 しばらく歩いていると、人だかりができていたので立ち寄ってみる。


「みなさま! ご安心くださいませ! これもすべてはダイチ神様のお力によるものですわ! さあ、わたくしと共に祈りを捧げましょう!」

「「「「「あぁ……天にましますダイチ神様よ。我らを導き―・―・・」」」」」


 レーナが祭壇の前で演説という名の祈りを捧げてるんだが、天にましますって何? 

 俺ここにいますよ?

 それに、いつのまにやら白装束から俺と似たスーツを着ているのだが……うむ、あれらは完全に危ない者たちだな。

 無視以外ない。

 

 施設の進化は終わったものの、まだまだポイントは残っている。

 何か召喚でもしておくかと思った時だ。


 <住民の必須品>

 釣具屋 500

 孤児院 1,000

 プール 1,000

 遊園地 5,000

 城   100,000

 

 <残り109,674KP>

ーーーーーーーーーー


「あれ? ディスプレイが勝手に開いたぞ?」

《〈ものすごい目安箱〉の効果と断定します》


 あ、一括進化したから気付かなかった。


 ものすごい目安箱:拠点に必要な施設が召喚リストに現れるものすごい仕組み。

 効果:不壊・自動収集

 必要KP:100


 

 もはや箱では無くなった。

 ま、何にしても一覧に出てくれるのはありがたいことだ。


 で、結局〈城〉は必要になるんだな。

 俺はどうでもいいが、城壁があって城が無いのは確かにバランスが悪い。

 家屋(極)は王宮のように見えるが、一応家っぽいしな。


 お高いが建てておくとするか。

 拠点の真ん中に建てたい所だが、〈ものすごい公園〉がものすごく邪魔しているからな。

 

「あ、整地もプランに…」《お任せください。それでは拠点領域の中心に〈城〉を設置して、既存施設をいい感じに配置変更します》

「いい感じに……お、おう」


 城:領域を防ぐための要塞。

 効果:不壊・不登・迎撃・清潔・防音耐性・環境耐性

 必要KP:100,000



「おおーッ! これはあの有名な何とかシュタイン城みたいだな」


 高さ100mを越える巨城。

 一応、ここに住めるみたいだが、俺には家屋(極)ができたばかりだし、はっきり言ってただの見せ物だ。


 住民たちに見てもらえればそれでいいし、何なら勝手に住んでもらってもいい。

 とてもじゃないが、レッドカーペットがどこまでも続き、螺旋階段を上がる気にすらならないし、王の間とやらに行くだけでも、かなりのトレーニングになるのは間違いない。


 ということで、これでバランスは整った。


《マスター、ペットができて城も建って一喜一憂しているところ申し訳ないのですが、王国へ向かわれたガトー様一向が、クワトロ大森林を抜けた先の警備所にて捕らえられました。急ぎ救出することを推奨します》

「と、捕らえられただと!?」

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