第39話 スタンピードと新たな開拓能力
「「「それでは行って参ります」」」
ガトーに話があると言われ、騎士隊は渡し舟でクワトロ大森林へ向かった。
何でも王都で確かめたいことがあるらしい。
俺は潔く認めて、ガトーやフェインたちを見送った。
「父ちゃん、早く帰ってきてねー」
「きてねー」
「父上、行ってらっしゃいませ」
「あなた、気をつけてね。ダイチ神様のご加護を……」
「あぁ、すぐに帰って来る」
個人の事情に深くつっこむのは趣味ではないからな。
ガトーたちを見送った後、拠点の整備でもしようかと思っていた時だった。
「ダイチ殿! 大変だッ! はぁ、はぁ、はぁ……」
「ルナリス、お前がそんなに慌てるなんて珍しいな。何が大変なんだ?」
「帰らずの森でスタンピードが発生したみたいなんだ」
「スタンピードだと!?」
確か、何かをきっかけにして一斉に魔物が逃走、もしくは暴走することだったか。
《マスター、緊急任務〈No6〉が発生しました》
緊急任務:〈No6〉帰らずの森で発生したスタンピードを阻止しよう。
達成条件:スタンピードを阻止する。
達成報酬:10,000開拓ポイント。尚、未達成の場合は、5,000開拓ポイントのペナルティを受ける。
とりあえず、迎撃はモンスタースポットを使うとして、戦えない住民には自宅待機でもしてもらおうか。
『皆の者、帰らずの森でスタンピードが発生した。直にこちらへやって来る。戦えない者は自宅待機を命じる。力ある者は見張り台へ上がってくれ』
と、ちょっと格好良く言ってみたかった。
「さすがはあたしの旦那だ♡」
「うっ、痛え、苦しい、折れる折れるッ!」
「あっはっは! なーに、これも愛情表現というやつだぞ。それではあたしも見張り台へ先に上がっておくぞ」
「ゼェ、ゼェ、ゼェ……」
死ぬかと思った。
ふぅ、気を取り直して作戦を考えなければ拉致があかなさそうだ。
「プラン、スタンピードの原因は何だ?」
《原因不明です。領域外の何かが引き金になったと推定します》
分からないってことか。
確かにあの砂煙というより、砂嵐になっている所を見ると、ここに来るのも時間の問題だな。
「ちなみに魔物の数は?」
《A級からD級まで総数5,218体と断定します。ただしさらに増加すると推定します》
「五千以上だと!?」
その数であれば、いくらあのモンスターたちでも厳しいか。
ルナリスたちの魔法部隊と合わせても、迎撃にはかなりの時間が必要になる。
手持ちのポイントは心許ないし、何とも微妙なタイミングでS級のあいつらや、ガトーたちが渡し舟で行ってしまったからな。
むむむ。あ、そういや帰らずの森もちょっとばかり領域に入っていたな。
ということは、アレならどうだろう。
◇
「魔法隊、放てッ!」
アイルが魔法使いたちに合図を送った。
「「「「ウインドカッター!」」」
「「「ウインドアロー!」」」
「「「ウインドランス!」」」
「「「ファイアボール!」」」
「「「ファイアアロー!」」」
「ん。ウインドストーム」
「「「ガウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッッッ!!!」」」
「おおーッ! 圧巻だな」
「ダイチ殿、流石にこの群れは、あたしでもゾクゾクするぞ……」
「ですがダイチ様のお陰で、また一方的に攻撃できますね」
「さすが御領主さまでございますわ。綺麗な一本道ができましたわね」
「まー、あの帰らずの森がちょっと小さくなったけどな」
俺は領域内にある帰らずの森の大木を、根こそぎ<配置変更>して並木道にした。
並木道から外れた魔物は少なく、ほとんどの群れが大木で覆われた道を突き進んできた。
領域内にある大木は、今や俺にしか動かすことができないため、ヤツらが破壊することは不可能だ。
つまり両サイドは身動きが取れないため、直進することしかできない。
「今回はエリスのお陰だけどな」
「いえ、わたしはウインドクイックを使っただけですよ」
エリスの支援魔法、速度上昇魔法によって、俺はすさまじい速さで大木を移動することができた。
指の動きだけだが。
後は攻撃あるのみだが、この魔物の渋滞を見る限り、丸一日はかかりそうだ。
たまに空から美味そうなチキン…ではなくフライノドンだったか。
「ダイチ殿、あのチキンはあたしに任せてくれ! うおおおおぉッ、食らえええええぇッッ!!」
ルナリスまでチキンとは……まぁ気が合うということだな。
んじゃ、空はルナリスと魔法隊に任せて、俺もとりあえずやるだけやってみるか。
今回は〈石壁〉一枚(10)を召喚してから〈城壁〉に強化(50)だ。
「城壁を上げて落として踏み潰す、城壁を上げて落とし踏み潰す、上げて落として踏み潰す、落として踏み潰す」
「「「ガウガウッアアアアアアアアアァッッ!?」」」
お、結構倒せてるな。
よし、このまま続けよう。
「踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰踏潰!」
《マスターのレベルが37に上がりました》
《マスターのレベルが38に上がりました》
《マスターのレベルが39に上がりました》
「「「「「ガウガアアアアァッッ!!………」」」」」
LV:39
スキル:<剣技LV5><盾技LV2><言語理解><柵技LV6><松明技LV2>
称号:<異界の開拓者><転生者><スライムキラー><リザードキラー><オークキラー><D級キラー>< C級キラー><B級キラー><A級キラー><S級キラー><拷問好き>
称号効果:<開拓術・極><?><スライム与ダメージ2倍><リザードマン与ダメージ2倍><オーク与ダメージ2倍><D級魔物与ダメージ2倍><C級魔物与ダメージ2倍><B級魔物与ダメージ2倍><A級魔物与ダメージ2倍><S級魔物与ダメージ2倍><拷問時精神耐性大UP>
KP:224
レベルが上がっていくのはいいが、これじゃキリが無いんだよな。
「はぁ……手っ取り早く終わらせる方法は無いのか?」
《マスター、手っ取り早く終わらせる方法が一つだけあります》
「……え? あるの?」
《はい、魔物を住民にしますか?》
「――は?」
魔物まで住民にできるのかよ……。
俺の前世の知識にも無い初めてのパターンだが、とりあえずポイントが増えるなら住民にするか。
いやいや、そんな事ができるならもっと早く教えてくれよ……。
《マスターの意向に反するものと考え、黙っていました》
俺の意向?
確かに害ある者を住民にするのはいかがなものかと思っていた時はあるにはあるな。
「魔物を住民にするとどうなるんだ?」
《大人しくさせることが可能となりますので、住民にすることを推奨します》
お、おう……あ、どうせなら領域の魔物すべて住民にしてもらおうか。
領域内の魔物を住民にしておけば、より安全が確保されるだろうし、リブニットたちが来た方角には、ワームがいたとか何とかだったからな。
《承知しました。領域の魔物8,451体が住民になりました》
《マスターの拠点住民が5,000名を突破しました》
《拠点レベルが8に上がりました》
《レベルアップボーナスで800KP獲得しました》
《マスターの拠点住民が10,000名を突破しました》
《拠点レベルが9に上がりました》
《レベルアップボーナスで900KP獲得しました》
《一日経過しました。109,760KP獲得しました》
《緊急任務:〈No6〉を達成しました》
緊急任務:〈No6〉帰らずの森で発生したスタンピードを阻止しよう。
達成条件:スタンピードを阻止する。
達成報酬:10,000開拓ポイント。
《任務:〈No74〉を達成しました》
任務:〈No74〉拠点に襲来する魔物を10,000匹討伐しよう。
達成条件:拠点に襲来する魔物を10,000匹討伐する。
《任務:〈No78〉を達成しました》
任務:〈No78〉拠点外の魔物を1,000匹討伐しよう。
達成条件:拠点の外に出て魔物を1,000匹討伐する。
達成報酬:10開拓ポイント。
拠点:共存の街
LV:9
住民:10,966
開拓:<召喚><強化><進化><?>
任務:45
スキル:<念話共有><配置変更><住民鑑定><?>
領域:半径100km
KP:121,674(1日経過+109,670KP)
「おおーッ! 一万人突破したぞッ!」
いや魔物だから人でも何名でもなく、何体か何匹のはずだが、こうして住民に数えられるのは開拓七不思議の四つ目だ。
細かいことは気にしない。
拠点レベルが上がって〈難民の町〉から〈共存の街〉へと変わったが、うーむ、今回は何とも微妙なネーミングセンスだな。
俺なら〈人間とエルフと獣人と魔物たちの仲良しこよしタウン〉みたいな方が格好いいと思うが。
ま、レベルが二つも上がったし、よしとしよう。
ついでに開拓<進化>が増えて、何ができるようになったか気になる所だが、この渋滞の魔物たちを先にどうにかしないとな。
みんな唖然として攻撃止めた所だし。
さて、この魔物たちをまた森にでも返すか?
いや、スタンピードの原因はさらに北で起きたってことだよな。
森に返せば、またコイツらが危険にさらされてしまうのか。魔物とはいえ住民になったし、さすがにこのままグッバイは可哀想かな。
開拓ポイントも一気に増えたし、ちょっとは可愛いがってやらないとな。
それであればペット枠か家畜だな。
家畜なら食えそうな魔物もいるし、これならわざわざ狩りに行かせる必要は無くなったかもしれない。
残りはペットか? でも気持ち悪い魔物もうじゃうじゃしてる。
あいつらはペットはまず無理だな。
「お、一匹だけメタリックな可愛いヤツがいるぞ?」
《マスター、あの魔物はC級の〈ペン銀〉と断定します。癒されます》
「ペン銀!?」
よちよち歩きながらパタパタさせてる所を見ると、確かにペンギンだな。
メタリックだけど……。
よし、決めた。
あいつをペットにしよう。
「で、残りをどうするかだよな」
《マスター、魔物に念話を送れば意思疎通が可能になると断定します》
なるほど、念話か。
やはり安全に暮らせる場所を用意してあげた方がいいか。
ひとまず魔物の収容場所か……あ、魔物園があるんじゃないか?
「魔物園で魔物を飼うってのはどうだ?」
《現状の〈魔物園〉では収容不可能です。<進化>させることを推奨します》
あ、進化か。
ひとまずやってみるか。
<進化前> <進化後>
魔物園 → 魔物パーク 2,000
<残り121,674KP>
ーーーーーーーーーーーーー
魔物パーク:広大な敷地で生きた魔物を飼育・研究して公開する自然公園。飼育員付き。
効果:不壊・清潔・環境耐性・美的感覚(大UP)・学習能力(大UP)・不老不死(魔物、飼育員)
必要KP:2,000(進化使用時)
「ん? 進化は元の施設の二倍のポイントが必要になるのか」
とりあえず進化っと。
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」」」」」
でかすぎるにも程があるぞ……。
半径5kmといった所か。
これまたコスパがいい。
もうここまできたら配置をどこにするかなんて言ってられなかったから、西側に追いやった。
魔物たちに念話を送った後、大木をずらすと空いた隙間からゾロゾロと魔物たちが〈魔物パーク〉へ向かって行く。
「さあ、みんな、こっちだよー。おーらい、おーらい」
飼育員たちが手を振りながら誘導している。
この施設は〈魔物パーク〉という名の世界自然遺産そのものだな。昔テレビで見たことがあるが、あそこを見回るには車が必須だな。
「ダイチ様、一見落着ですね」
「ダイチ殿にはまた驚かされてばかりだ」
「また、わたくしたちの見せ場がありませんでしたわ」
「ん。シルフィは沢山仕留めてレベル上がった」
よし、片付いたことだし、ポイントも貯まったから施設の<進化>でもするか。
◇
「やはり何も無かったではないか。ヌーロ丞相よ、ただの気のせいであったみたいだな」
「はっ。申し訳ございません。アイゼンフォートに行かせて正解だった様です」
「陛下、死の荒野はさておきまして、かねてより聖教国へ派遣、いえ追放した
「なんじゃとッ!? ならば、やつらはクラン大使の計画通りにいかなかったということか……」
「はっ。その件に関しまして、私にお任せいただければと…………」
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