第38話 追放と忠誠

 異世界生活七日目。


「「「「城主様! 大変申し訳ございませんでしたッ!!!」」」」


 朝起きていつものようにスフィアたちから逃げ出した俺は、四人の様子を見に来た早々、土下座をされるとは思いもしなかった。


「これは一体どういうことだ?」

《日付が変わったため〈改心〉の効果で更生しました》

「まさか赤バンに土下座されるとはな。確かに改心されたみたいだが、実は演技してるとかじゃないよな?」

《それでは<住民鑑定>を目視可能にします……変更しました。確認することを推奨します》

「ん、変更できるのか?」


 名前:メルセス・デベス

 LV:48

 性別:男

 年齢:28才

 種族:人族

 適職: 剣士

 スキル:<身体強化LV7><剣術LV9><威圧><統率>

 称号:<魔剣使い>

 忠誠:高


 名前:フォルクス・バーン

 LV:42

 性別:男

 年齢:27才

 種族:人族

 適職: 盗賊

 スキル:<身体強化LV5><短剣術LV8><罠解除><恫喝>

 称号:<盗みの天才>

 忠誠:信


 名前:オペル・コルッサ

 LV:38

 性別:男

 年齢:26才

 種族:人族

 適職: 道具使い・道具屋

 スキル:<錬金術LV6><調合LV8><鑑定><遠視>

 称号:<薬学士><薬好き>

 忠誠:高


 名前:ルーシェ・カレイラ

 LV:42

 性別:女

 年齢:28才

 種族:人族

 適職: 火魔法使い・先生・娼婦

 スキル:<火魔法LV8><学術LV7><魅了>

 称号:<放火魔><フェロモンの権化>

 忠誠:高



 なるほど、〈忠誠〉が記載されたのか。

 でも項目が多くて見づらいんだよな。


《それでは<住民鑑定>を簡略化します》


 名前:メルセス

 LV:48

 忠誠:高

 適職:剣士

 称号:魔剣使い


 名前:フォルクス

 LV:42

 忠誠:信

 適職:盗賊

 称号:盗みの天才


 名前:オペル

 LV:38

 忠誠:高

 適職:道具使い・道具屋

 称号:薬学士・薬好き


 名前:ルーシェ

 LV:43

 忠誠:高

 適職: 火魔法使い・先生・娼婦

 称号:放火魔・フェロモンの権化



 お、かなり見やすくなった。

 コイツらも全員称号持ちなんだな。


「ん? 忠誠の〈信〉って何だ?」

《〈信者〉です。一度〈信〉になれば決して裏切ることはありません》


 え……ということは、あの赤バンが俺の信者になったって言うのか。

 ま、まあそれは置いといて、もう一つ聞いておきたいことがあった。


「何でこいつら身ぐるみ剥がされてるんだ……?」

《昨夜のことですが……》

 

 ◇


「貴様ら、我が息子によくも不敬な真似をしてくれたな! エルフ族の鉄の掟により、ワシが息子の代わりに断罪してやるわ!」

「父上、殺してしまってはダイチ殿の寛大な処遇が台無しになってしまうぞ」

「確かにお前の言う通りか。だが息子は甘い。我々だけでなく皆が怒っているからな。閉じ込めておくだけでは気が済まないぞ」

「そうだ、そうだ! 救世主様に何てことをしてくれたんだ!」

「特に赤いバンダナ! お前はぜってえ許さねー。ウインドカッター!」

「ぐはッ! く、てめえ至近距離で卑怯だぞ! クソエルフがッ!」

「誰がクソエルフだッ! おい、みんな!」

「「「ウインドカッター!」」」

「ぐはあッ!」

「父上、鉄格子の隙間から風魔法が通る様です。殺しはダメだが、痛めつける程度であればダイチ殿も許してくれるかと」


 ◇


《と、この様なことがありました》

「鉄格子の隙間から魔法の連発か……」

《はい、さらに〈牢屋〉の中から攻撃は不可能なため、ルーシェ、いえ、メガネ娘が放った上級火魔法で四人は焼かれました》


 自爆したってことか……。

 まぁこいつらならこうして土下座してることだし大丈夫だよな。


《その後、石を投げる、牢屋の前で宴会をして「ほれ、美味そうだろ? お前らも食いたいか?」とあおる、弓を射る、長槍で刺すなど、瀕死にしてから装備をはぎ取り、スーパー温泉の湯をぶっかけて遊ん…報復していました》


 すごい拷問ことされてた。

 

「長槍はガトーだよな。だけど騎士隊のガトーたちには顔を出すなと言っておいたはずなんだが」

《ドワーフたちが武器屋で槍を調達していました》

「リブニットたちが!? あ、槍を持って来いと言われたのか」

《いえ、率先して買い出しに行っていました》

「え……?」


 ◇


「ほーんと、みんな甘いわ。十数回ボコボコにしたぐらいじゃ懲りてないわ。だってこの人たちは王国でも有数の冒険者なんでしょ? 槍とか剣で刺しちゃえばいいのよ」

「ちょっ、ちょっとラミー、何てこと言うんだよ!?」

「だって、それくらいしないと反省すると思えないもん」


《その後、武器屋に買いに行っていました》


 ラミーって赤髪の子か。

 ただのツンデレではないみたいだ……。


 ま、何をされたにしても俺は許すつもりは無い。

 特に赤バンはな。

 ということで追放しようと思うが、それだけでは割に合わない。


「お前たち王国へ帰っていいぞー。いや、むしろ帰れ」

「い、いいのですか?」

「もちろんだ。ただし条件がある」

「いかなる条件をも受け入れます。僕たちが間違っていました。城主様に取り返しのつかない事をしてしまい、悔やんでも悔やみきれません」

「メルセスさんの言う通りっす」

「あ〜ら、城主様。お姉さんを好きにしていただけないのでしょうか?」

「おい、ルーシェ! 城主様に何てことを言いやがる! お前は立場ってのが分かってねえな! この方は俺たちの神だ。崇えなければならない方に何て事を言いやがる!」


 お前がそれを言うのか……。

 ま、まあいいか。


「それじゃ、よろしくな」

「「「「はい! では行って参ります!!!」」」」


 ちなみに俺が出した条件は至ってシンプルだ。

 俺は国を作りたい。

 そのためには住民が欲しい。とはいえ強制拉致なんてどこぞの国のような下劣なことはしない。


 あいつらには虚偽報告をしてもらう事にした。

 俺が出した条件は二つ。

 一つ目、厄介事を回避するため、ここには何も無かったとお偉いさん方に伝えてもらう。

 二つ目、王都に不満を持つ者だけを勧誘して移住希望者を募ってもらう。


 ポイントは王都に不満がある者のみを連れて来るようにした事だな。

 ま、あいつらを逆スパイにしたようなものだし。


 早速、四人が〈渡し舟〉で向こう岸へ渡ろうとしている。


「お。お客さんたち住民になったんだな。でも割引くことはできん。四名様で金貨百枚だな」

「行きは金貨十枚ではなかったかな?」

「あぁ? あんたら誰に迷惑かけたかまだ分かっとらんね」

「待て、メルセス! ここは俺が払う。いーや払わせていただきます」

「それじゃ〜、フォルクスにお願いしようかな。次はわたしが払うからね」

「割り勘でいいんじゃないっすか?」

「何をふざけたこと言ってやがる、オペル! 俺が払うんだよ!」

「毎度あり〜。それではどうぞご乗船ください」


 金貨百枚って百万円相当だよな。

 ぼったくられてる気はするが、俺のポイントになるからむしろもっとぼったくってほしい。


 ◇


「領主様、少しお話をよろしいでしょうか?」

「お、ガトーか。それにフェインたちまで騎士隊が揃いも揃いってどうしたんだ?」

「実は―・―・・』

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