第27話 新たな開拓能力

「――ん? このぷにょぷにょと、バインバインの柔らかい感触はまさか……」

「「ハァ…ハァ…ハァ……♡ 」」

「なッ! スフィアだけでなく、レーナまで!?」

「ダイチ様、昨夜はとても素晴らしいお手前でした」

「御領主様、まるで魔獣との戦闘を彷彿させるモノがありましたわ♡」


 え……?

 そのようなことは、全く記憶にございませんが?


《マスター、エルフが隠し持っていた酒をスフィア様とレーナ様が飲んだ後、マスターのベッドに忍び込み、きゃっきゃっうふふな夢を見ていたと推定します》


「……た、ただの夢ってことか」

《年頃の魔族やエルフにはよくあります》


 何それ怖い……。

 ま、事故ってなくて何よりだが、このままだと俺の聖剣がうなりを上げる時も近いぞ。


「あら? 私としたことが寝ぼけていたようですね」

「わたくしも、つい飲み過ぎてしまったみたいですわ」

「夢と現実を間違えてんじゃねー!」


《所でマスター、東から難民が向かって来ています》

「どんなタイミングだよ……」


 ◇


「村の者たちよ! 私はフェイン。ティシリス聖教国から旅をしてきたのですが、どうか食料と水を恵んでほしいのです! この通りお願いします!」


 フードを外した茶髪の男が声を上げた。

 

 フェイン?

 確か、ガトーがその名を言ってたような気がするな。


「領主様! あの者は私の部下です。是非お助けしていただきたく」

「詳しい話は後でいいから、お前が案内してくれればいい」

「感謝致します。フェイン! オレだ、無事で何よりだ」

「ガトー隊長!? 隊長もここにたどり着いたのですね。王国へ向かっていると思っていましたが、こうして会えてよかったです」

「あぁ、オレもだ。見た所、お年寄りと子供たちばかりだが、バーグやフライたちはどうした?」

「実は……」

「何かあったということか。まぁ立ち話もなんだ。オレが案内するからついて来るといい」


 また住民が増えることになるな。

 そうだ、家を建ててあげないとな。


 あ、そういえばエルフたちの家も建ててなかったな。

 昨夜は宴会で疲れて寝てしまったし、完全に忘れてた……。


 周りを見ると、地べたに寝ている者もいれば、スーパー温泉からゾロゾロ出てくるあたり、宿代わりにしていたようだ。


「「「ダイチ様、おはようございます」」」

「「「救世主様、おはようございます」」」

「みんな、おはよ」

「キャー♡ ダイチ様が挨拶を返してくれたわ」

「さすがは我らの救世主様」

「まだお若いというのにしっかりされてますな」


 ただ挨拶を返しただけなのに、そこまで言われるとは……。

 それに、みんな俺を見る目が普通じゃない気がする。

 

《人族38名が住民になりました》

《一日経過しました。3,060KP獲得しました》


「え、もう住民になったのか?」

《ガトー様が薦めて二つ返事で了承していました》


 それなら早いとこ家を建てるとするか。

 長屋をいくつか建てれば足りるよな。


《マスター、お待ちください。召喚をする前に施設の<強化>を推奨します》

「ん、強化?」

《拠点レベルが上がり、新しく開拓能力が解放されています。まずは拠点ステータスの確認を推奨します》


 あー、そういえば拠点レベルが上がってからチェックを後回しにしたな。


 ま、あの時はそれ所じゃなかったし。


 拠点:難民の村

 LV:5

 住民:305

 開拓:<召喚><強化><?>

 任務:64

 スキル:<念話共有><配置変更><?>

 領域:半径5km、北5km、帰らずの森北入口から半径2km、南側直径60km、クワトロ大森林南入口から半径2km

 KP:6,125(1日経過+3060KP)



 あ、村の名が変わってる。

 〈難民の村〉。

 うんうん、何て素晴らしい村の名だ。

 これを考えたヤツはネーミングセンス抜群だな。


 領域もレベル3の時に比べると、10倍になってるし。


「それで、<強化>で何ができるんだ?」

《設置済みの施設のレベルを上げることが可能です。そこの家屋で試すことを推奨します》


 エリスが修繕した家屋だな。

 あれ、ディスプレイに強化が見当たらないぞ?

 

《施設に対して念じてください》

(むむむ……お、見えたぞ)


 <強化前>   <強化後>

 普通の家屋 → 家屋(小)12.5

 普通の家屋 → 家屋(中)50

 普通の家屋 → 家屋(大)200

 普通の家屋 → 家屋(特)800


      <残り6,125KP>

ーーーーーーーーーーーーーー



 ん? 強化だと消費KPが元の半分になるのか。

 それなら普通に召喚するより、一度建ててから強化した方がコスパがいいよな。


 だから、プランは待てと言ってくれたのか。

 

「家屋(特)は特大のことか?」

《その通りです。マスター》


 それなら家屋(特)に強化するか。

 

「あれ、できないぞ?」

《マスター、家屋(特)にするにはスペースが足りません。家屋を移動することを推奨します》


 そういうことか。


 <配置変更>で、隣の家屋を動かして、スペースを作ってから再度試みる。


「これだけ空けても、まだできないのか」


 どれだけ大きいんだ?

 見えないというのは不便なものだな。


 こういう時、ゲームのように設置する施設を、半透明で映し出してくれれば分かりやすいんだが。


《〈召喚〉の設定を目視可能に変更しました》


 おおッ! さすがプランだ。

 マジで見えるようになったぞ。


 ただ、この家屋(特)があまりに大きすぎて柵の外側まではみ出てるんだが。


 木柵の外に移動させるしかないな。


「よし、これで強化できるな」


 家屋(特):重厚な石造3階建ての家屋というより豪邸。大理石露天風呂、大理石便所、エアコン、システムキッチン、ダイニングルーム、キングベッドルームなど家具備品完備、庭、噴水、プール付。

 効果:不壊・清潔・防音耐性・環境耐性

 必要KP:800(強化使用時)



「でででででけええええええええええええぇッッ!!」


 実際に見ると、また違うものだな。



《任務:〈No51を達成しました》

 任務:〈No51〉施設の強化をしよう。

 達成条件:施設を強化する。

 達成報酬:10開拓ポイント。


《任務:〈No34〉を達成しました》

 任務:〈No34〉家屋(特)を建てよう。

 達成条件:家屋(特)を一つ召喚する。

 達成報酬:10開拓ポイント。



 消費KPに比べて、施設のグレードが高すぎる。

 ひとまずこの大豪邸にかなりの人数が住めるのは間違いない。


 一応、家屋(特)も強化できるか試してみると『これ以上は強化できません』と表示された。


「長屋も強化するか」


 ルナリスたちの長屋(中)を強化すれば、割安になりそうだし、一度聞いてみるか。


「あ、ルナリス。ちょうどいい所…」「ダイチ殿、あの大豪邸に引っ越すんだな! さすがはあたしたちの旦那だ! 早速引っ越しさせてもらうからな。あ、みんなにはあたしから伝えておくから、また後でな」

「ちょっ、ちょっと待……」


 ……走って行ってしまった。

 ま、あの家屋(特)なら部屋はいっぱいあるだろうし、みんなにはルナリスたちの長屋に住んでもらうとするか。


 <強化前> <強化後>

 長屋(中)→ 長屋(大)625

 長屋(中)→ 長屋(特)3,125


    <残り5,345KP>

ーーーーーーーーーーーー


 まずは設置スペースを空けないとな。

 隣はガトー家だから、そのままにしておくとして、右側の家屋を移動させていくか。


 「ドシンッ!」と響き渡ると、住民は慌てふためている。

 ま、こればかりは慣れてもらうしかない。


「さて長屋(大)にするか(特)にするか悩むな」


 長屋(大):重厚な木造2階建ての各部屋2LDKの連棟住宅。風呂、洋式便所のセパレート。エアコン、ダイニングキッチン、家具備品完備。

 効果:不壊・清潔・防音耐性・環境耐性

 必要KP:625(強化使用時)


 長屋(特):重厚な石造3階建ての各部屋3LDKの連棟住宅。風呂、洋式便所のセパレート。エアコン、ダイニングキッチン、ダブルベットなど家具備品完備、駐馬場付。

 効果:不壊・清潔・防音耐性・環境耐性

 必要KP:3,125(強化使用時)



 長屋(特)にしたい所だが、まだ木柵や堀を増設したいから、今は少しケチって長屋(大)にしておく。


《任務:〈No36〉を達成しました》

 任務:〈No36〉長屋(大)を建てよう。

 達成条件:長屋(大)を一つ召喚する。

 達成報酬:10開拓ポイント。



 部屋の中は少し広くなっただけだが、とにかく部屋数が多い。

 これなら200名は住めるはずだ。


「一応、もう一つ建てておくか」


 長屋(小)を召喚してから(大)に強化する。


《任務:〈No34〉を達成しました》

 任務:〈No34〉長屋(小)を建てよう。

 達成条件:長屋(小)を一つ召喚する。

 達成報酬:10開拓ポイント。



 これで合わせて400名分は確保できた。


 ついでに〈木柵〉と〈堀〉を外側まで移動させると、数が全く足りず、穴が空いてしまった。

 これでは柵と堀の意味がない。

 

「灯りも足りないし一緒に増やしておくか」


 <マスターの必須品>

 堀   1,500(※セール中)

 木柵  2,000(※セール中)

 松明台 500 (※セール中)

 

  <残り4,065KP>

ーーーーーーーーーー


「まだセールしてたのか……」


 ま、助かることに越したことはないし、このまま設置する。

 領域が広すぎて空き地は多いが、村の中心はかなり賑わってきた。


「ひとまずこんなものか」


 俺の作業を見ていた住民から、様々な声が聞こえてきた。


「おい、木柵が飛んでいったぞ……」

「堀があんな遠くに……」

「こんな所に松明台はなかったと思うが……」

「あの大豪邸を一瞬で作られたお方だぞ。あのぐらい造作もないことだろう」

「救世主様は我々の神に違いない」

「キャー♡ ダイチ様、こっち向いてー!」


 俺を見て怯える者。

 尊敬の眼差しを送る者。

 崇拝する者。


 なぜ、こうなった……。

 

 ◇


 現在の開拓ポイント:残65KP。

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