第26話 討伐と救出

「グフグフグフッ! おめえらエルフは脆い」

「やめて! レーナを離して!」

「に、逃げて……わたくしは大丈夫ですから!」

「オラ逃がすと思っているのか? まずこのでっけぇ乳のコイツ喰う。チビのおめえ、そこで黙って見てる。グフグフグフッ」

「ウ、ウインドカッ……ち、力が入らない。もう魔力が……」

「おめえらはオラの肉。アァーーン…」「木柵落としッ!」

「グフーッ!!」


 オークロードの頭に、木柵が「グサリッ」と突き刺さり、膝から崩れ落ちた。


「レーナ、大丈夫か?」

「ご、御領主様。ううっ…わたくしは大丈夫ですが、シ、シルフィリアをお願いしますわ……」

 

 シルフィを見ると、ボロボロになって倒れている。


《マスター、シルフィリア様は魔力切れにより気を失っています。ただし早急な治療を必要とします》

「クソッ、シルフィもレーナも……もう少しだけ我慢してくれ」

「は、はい……」


 そのままレーナは気を失ってしまった。

 俺はレーナを抱きかかえて、離れたところにいるシルフィの所まで移動させる。


「プラン、今すぐここに転移魔法陣を設置するように伝えてくれ」

《マスター、転移魔法陣の設置はスフィア様のDPが足りません》

「なら他に手はないのか?」

《今の残りKPであれば…マスター避けてください!》

「うおっ!?」


 あ、危ねえ……。


「今のを避けるとは、おめえ運ええだな」


 頭部破壊しても再生したっていうのか。

 もはやオークではなくトロルじゃねえか。


 それにしても、何だこのプレッシャーは……。

 相対しているだけで動けなくなってしまうな。


「俺は昔から運だけはいいからな。残念だが、今は豚と話をしている暇はないんだ。速攻で終わらせてやる。木柵木柵木柵木柵松明台松明台松明台松明台松明台松明台松明台松明台!」

 

 リザードエンペラーを完封した俺の必殺技だ。


「グフッ? なんのマネだ?」


 こいつ火が効かないのか?

 オークだから豚の丸焼きが完成するはずなんだが。


「グフグフグフッ! オラはオークロード。火無効化する」

「それならこれはどうだッ! 落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上ッ!」



 完全に肉塊と化したオークロード。

 だが、肉の断片が集束を始め、先ほどよりも早く再生していく。


 う、気持ち悪い。

 あの攻撃でも無理か。


「グフグフグフッ。オラ痛みねえ。オラ無敵」


 無敵か。

 ゲームなら死神やレイス系は無敵だったりするが、コイツはあくまでもオークだからな。


 ま、無敵なんてことはないだろ。

 どちらにしても、身動きは取れなくしたし。


 それじゃ、コイツで試してみるか。


「おい豚。これならどうだ?」


 俺は木柵の隙間へ、聖剣を突き刺す。


「グギャーッッ!!」


 お、今度は再生してない。

 コイツは闇属性だな。


 何となく黒いオーラみたいなものを纏っていたから、もしやと思ったが、当たりだったようだ。


「痛みを感じないんじゃなかったか?」

「そ、その剣はなんだべか!? や、やめてくんろ!」


 俺はあらゆる角度から聖剣で突き刺す。

 

「突き刺しては抜いて刺す。突き刺して抜いて刺す、突き刺して抜く、突き刺し抜く、突く、抜く」 

「グギギギギギギギャーッッ!!!」


 やっぱ痛いんじゃねーか。

 ったく、何が無敵だよ。


 後はひたすら高速で繰り返す。

 

「突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜突抜ッ!」


 とにかく突き刺しまくった。


「グギギギギギギギャーッッ!!!」


 オークロードは断末魔を上げながら光となって消えていった。


《マスターのレベルが36に上がりました》


 LV:36

 スキル:<剣技LV5><盾技LV2><言語理解><柵技LV4><松明技LV2>

 称号:<異界の開拓者><転生者><スライムキラー><リザードキラー><オークキラー><S級キラー><拷問好き>


 称号効果:<開拓術・極><?><スライム与ダメージ2倍><リザードマン与ダメージ2倍><オーク与ダメージ2倍><S級魔物与ダメージ2倍><拷問時精神耐性大UP>

 KP:2,055



 お、またレベル上がった。

 変な称号も獲得したが、ドロップアイテムまである。


 〈大槍〉と〈冠〉か。

 消失したところを見ると、オークなのに食えないんだな。

 まー、不味そうだからいいけど。


《マスター、オークキングまでは食べれます》


 そうなんだ……。


「あ、レーナとシルフィは!?」

《マスター、急ぎ〈温泉〉を設置してください》


 <マスターの必須品>

 温泉     250

 スーパー温泉 1,000


    <残2,055KP>

ーーーーーーーーーーー


 温泉:怪我を回復させる秘湯の温泉。

 効果:不壊・清潔・体力回復・魔力回復・怪我回復・病気予防・老化予防

 必要KP:250


 スーパー温泉:すべてを回復させる神秘の温泉。

 効果:不壊・清潔・体力完全回復・魔力完全回復・気力完全回復・状態異常完治・病気防止・老化防止・バフ効果

 必要KP:1,000



 すごッ!?

 スーパー銭湯じゃない所も気になるが、これってもうエリクサーの温泉だよね。


 温泉よりスーパー温泉を設置だ。


《任務:〈No86〉を達成しました》

 任務:〈No86〉スーパー温泉を建てよう。

 達成条件:スーパー温泉を一つ召喚する。

 達成報酬:10開拓ポイント。



 う、スーパー温泉が大きすぎて設置スペースが足りん。


 とにかく木が邪魔だ。

 俺は高速で木を<配置変更>して動かしていく。

 近くに人がいれば間違いなく即死するだろう。


「設置完了!」


 温泉というより、プール。

 いや、もっとデカい。

 温泉のテーマパークだな。


 おっと、マジマジ見てどうする。


 先にシルフィを抱きかかえて、温泉に入れてあげる。

 服を脱がすと、後で問題になりそうなので、そのまま入れる。


 といっても、すでに服はボロボロで、色々と見えてしまっているが、不可抗力だから仕方ない。


 続いてレーナを抱きかかえて温泉に入れる。

 レベルが上がったからか、重さを感じなくなってきた。


 それにしても、レーナのバスケボールはインパクトがすごい。

 こんな時に、何をゲスイことを考えているんだ俺は。


 このまましばらくすれば回復してくれるだろう。


 ◇


「ルナリス様、今ハイポーションを飲ませますからね」

「すまない、スフィア殿。あたしよりエリスを先に頼む……」

「エリス様は無事に回復されましたよ」

「ルナ姉様、無事でよかった……」

「エリスもな。早く仲間を助けに行こう」


 ◇


「御領主様、お助けいただきありがとうございます。それでは早速召し上がれ」

「お、おいレーナ。胸を押し付けるんじゃねえ……」

「レーナ、ダイチ苦しがってる。シルフィの方がちょうどいい」

「ちょっ、シルフィまでやめろ……」


 二人が回復して、すぐに俺はレーナとシルフィにパフパ…じゃなくて、何はともあれ元気になってよかった。


「御領主様、それにしてもあの巨大なお風呂のおかげで傷一つなくなりましたわ。魔力も、そしてヤル気もみなぎりましたわ」

「ん。シルフィも不思議。すごくヤル気でた。ダイチいつでもばっちこい」


 いや、そっちのヤル気かよ!


「とにかく、仲間が待ってるぞ」

「そ、そうですわ!」

「ん。気付いたらお風呂にいたから忘れてた」


 忘れるんじゃねーよ。

 それが本来の目的だろ……。


 ◇


《マスター、エルフ族257名の転移が完了しました》


《緊急任務:〈No3〉を達成しました》

 緊急任務:〈No3〉エルフ族を救助しよう。

 達成条件:エルフ村のエルフ族を救助する。

 達成報酬:2,000開拓ポイント。



「了解。何はともあれ、全員無事でよかった」


 あれからクワトロ大森林に建てた〈スーパー温泉〉を、村の南側に<配置変更>をして持ってきた。


 その後、傷付いていたエルフたちをスーパー温泉に入れ、みんな驚くほど元気になった。


 中にはひどい拷問を受けて、腕や足が欠損した者までいたが、すべて元通りになっている。


 さすが神秘の温泉だ。


「そなたが我が娘たちを救ってくれた救世主、ダイチ様ですな」


 切れ長の赤い瞳と、肩まで伸びた赤髪のエルフが話しかけてきた。


「救世主のような大層な者ではないが、俺が大地だ。あんたがルナリスたちの父親か?」

「あぁ。ワタシの名は、アイルディアス・ウィンドウッド・エルフィン。皆にはアイル村長と呼ばれている」


 ルナリスたちの親父さんは村長だったのか。


「ダイチ様は不思議な力を使うようだ。ワタシたちが捕らえられていた時、突然プランと名乗る者から話があると持ちかけられた時は、皆混乱したものだ。何はともあれ助けていただき感謝する。そしてこの礼だが、帰る村もなければ、渡せるものもない。そこで我が娘たちをもらっていただければと思う」


 ……え? 

 もらうって、もしかして結婚!?

 いやいや俺にはまだ早い。


「救世主様。母であるワタクシ、クラリスからも是非お願いしますわ。ほら、あなたたち。改めてご挨拶をしなさい」

「ダ、ダダダダダダイチ殿。そ、その、ふ、不束者だがよろしく頼む……」

「領主様♡ 今後も愛情をたっぷり込めてお口に合う料理を作らせていただきますね。所で子供は何人がよろしいですか?」

「御領主様、わたくしは何人いても大丈夫ですわよ。早速、今からでもお励みいたしましょう」

「ん。シルフィも頑張る」


 へ……? 

 いやいや、何でそうなる!?


「ダイチ様! 第一夫人なら私が先ですよ!」

「はっはっはっ。ワタシ共は一夫多妻。エルフ族の救世主様であれば何人いてもよかろう。これでエルフ族もお相手が人族とはいえ安泰というもの。今後は父、いやお父さんと言ってもいいのだぞ? 我が、ム、ス、コ♡」


 なんでお前まで目が♡なんだよ!


「俺はこの村を発展させるという志しがある。今はそのような…」「では我らエルフ族が全身全霊で息子に手を貸そうではないか。今宵は宴。皆で祝おうぞ!」


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあおおおおおおおおおおおぉッッッ!!!」」」」」

「「「「「ダイチ様ッ! ダイチ様ッ! ダイチ様ッ!ダイチ様ッ! ダイチ様ッ!――」」」」」


 アイル村長に朝方まで開かれた宴会(完全に祝賀会)は、翌朝まで開かれることになった。


 ◇


 現在の開拓ポイント:残3,065KP。

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