第25話 S級の魔物
「グフグフグフッ。あの魔物共はおめえたちの仕業だったか。だが今のオラでは何匹来ようが、ただのエサと変わらねぇ」
「シルフィリア、アレは本当にあのオークキングですの?」
「ん。分からない。でもすごく強い」
鋼鉄の筋肉と骨飾りと冠。
その目に宿すは闇の力。
大地を切り裂く大槍を持つオーク一族の長。
オークキングは、ゴブリンキングやメガタウロスを仲間と共に倒し、喰うことによって自身の力に変え、より強力な魔物へと進化していた。
《レーナ様、あのオークはS級のオークロードと断定します。二人では勝ち目はありませんので即撤退を推奨します》
「仲間がすぐそこにいるというのに……」
「ん。シルフィもそう思う。でもさすがにアレは無理」
◇
「リザザザッ。あの魔物はお前たちの仕業カ。今のワシに勝てる者などおらヌ。切り刻んで肉塊にしてやル」
巨大な鱗で覆われた赤黒い体。
炎を宿したような赤い瞳は敵を威圧する。
大剣と大盾を装備したリザードマンの長。
「ルナ姉様……本当にあのキングリザードですか?」
「以前に見たヤツとまるで雰囲気が違うな。だがあの時やり合ったヤツと同じはずだが……」
時を同じくして、キングリザードも群れと協力し、かろうじてレッドドラゴンやアークデーモンを討伐していた。
仲間は全滅したが、自身はより進化を遂げていた。
《ルナリス様、あのリザードマンはS級のリザードエンペラーと断定します。二人では勝ち目はありませんので即撤退を推奨します》
「撤退だと!? 父上や母上がいるんだ!」
「ルナ姉様、気持ちは分かりますが、さすがに私たちだけでは……」
「ふざけるな。エリス、支援魔法をかけろ!」
「し、仕方ありません! ウインドクイック! ウインドウォール!」
◇
《マスター、ルナリス様とエリス様がS級の魔物と戦闘を開始しました》
「S級だと! あのモンスターたちでも無理なのか?」
「ダイチ様、いくら数がいても、さすがにS級となると難しいかと……」
あの怪物の群れでもS級には届かないのか。
俺が行ったところで、大した戦力にはならないだろう。
俺は拠点の開拓しかできないんだぞ。
ん? いや待て。
俺には開拓する力がある。
「ダイチ様、どうしましょうか? こちらもS級のモンスターを召喚するとなるとDPも足りず……」
「大丈夫だ。突破口を見つけた。だがマップだけでは座標を合わせにくい。俺も急ぎ向かう」
◇
「なんだ、もう終わりカ? 威勢がいいのは口だけだったようだナ」
「あの弓の一撃を受けても……ば、化け物め……」
「ルナ姉様!? ウ、ウインドゲージ! 今のうちに逃げて!」
「リザザザッ。こんな生温い風の檻でワシを閉じ込めたつもりカ? 後ろのエルフを先に始末してやル。お前はそこで寝ながら見ているがいイ」
「や、やめろーッ! 逃げろエリス!」
リザードエンペラーが大剣を振りかぶる。
「ルナ姉様、ごめんなさい……」
「や、やめろーッ! やめてくれッ! エリスッ!!」
「ガキーンッ!」と突然、金属音が森に響き渡った。
「ふぅ、危ねえ。間一髪だった」
「ダ、ダイチ殿……?」
「領主様……?」
ギリギリ間に合ったな。
俺はリザードエンペラーとエリスの間に、
〈木柵〉を割って入るように設置し、ヤツの大剣を弾き返した。
「お前は誰ダ? まあ誰であろうとワシの敵ではなイ」
おっと、まだやることがある。
さらに四方を取り囲むように、左右後ろと三箇所に〈木柵〉を設置する。
これで頭上以外は完全な檻になった。
「なんだこの柵ハ? コんなもの叩き切ってくれるワッ!」
あー、それ無理だから。
この〈木柵〉の効果は〈不壊〉。
絶対破壊できないし、俺以外動かすことができない建造物だ。
「この檻は生温いなんてものじゃねえぞ」
だが、四方の動きを封じただけではまだ足りない。
コイツの頭上が空いているからな。
逃げられない様にしつつ、攻撃もする。
俺は<配置移動>で周囲の大木を、ヤツの頭上へ落とす。落とす、落とす、落としまくる。
「小癪な真似ヲ!」
おっと。
これだけ大木を振り落としてもダメージはないのか。
むしろ大木がへし折れてるし。
それなら、折れない物を落とし続ければいいだけだ。
「もう一つ〈木柵〉を召喚してと。コレならどうだ?」
「リザーッ!?」
うむむ。
大盾もあるから効いてなさそうだな。
鱗も硬すぎるし。
ならば、水棲のリザードマンならコレには弱いかも。
木柵の内側に8本の〈松明台〉を設置した。
壊そうにも壊れないし、火は消せないし、身動きも取れない。
「リザザザッ!」
お、コレは効いてるな。
あちちちって、聞こえる。
ゲームでは水属性は火や炎に強いことがあるが、あくまで耐性があるだけで、全く効かないことはないからな。
「リザザザザーッッ!!」
めっちゃ熱そう。
お、身体から煙が上がってきたな。
そろそろ燃え移るかも。
「リザザザーッ! リザーッッ!!」
全身火だるまになった。
今なら木柵も落とせばいけそうだ。
木柵の下が杭になってるから、猛スピードで振り落とす。
「木柵を落として上げて、木柵落として上げて、柵落とし上げ、落とし、上げ」
「リ、リリリザー…………」
あ、やっと大盾も割れたな。
よし、このまま続けよう。
「落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上落上!」
「ヤ、ヤめ…ろ……リ…………ザ………………」
《マスターのレベルが31に上がりました》
LV:31
スキル:<剣技LV3><盾技LV2><言語理解><柵技LV3><松明技LV1>
称号:<異界の開拓者><転生者><スライムキラー><リザードキラー><S級キラー>
称号効果:<開拓術・極><?><スライム与ダメージ2倍><リザードマン与ダメージ2倍><S級魔物与ダメージ2倍>
KP:2,065
お、レベル上がった。
でも変なスキルも増えてる。
それにしても、数十回繰り返してようやく倒せたな。
これがS級の魔物か。
「大剣と大盾が落ちてるな」
ドロップアイテムか、ってそれどころじゃない。
「終わったぞ、二人共」
「「…………」」
二人共、気を失っていたのか。
それなら、ここはスフィアに任せようか。
「プラン、スフィアに連絡しておいてくれ」
《承知しました。マスター、レーナ様とシルフィリア様も戦闘を開始しています。お急ぎください》
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