第10話 ダンジョンとスキル

《任務:〈No75〉を達成しました》

 任務:〈No75〉拠点外の魔物を1匹討伐しよう。

 達成条件:拠点の外に出て魔物を1匹討伐する。

 達成報酬:10開拓ポイント。


《任務:〈No76〉を達成しました》

 任務:〈No76〉拠点外の魔物を10匹討伐しよう。

 達成条件:拠点の外に出て魔物を10匹討伐する。

 達成報酬:10開拓ポイント。


《任務:〈No77〉を達成しました》

 任務:〈No77〉拠点外の魔物を100匹討伐しよう。

 達成条件:拠点の外に出て魔物を100匹討伐する。

 達成報酬:10開拓ポイント。



「これで終わりだ!」

《マスターのレベルが14に上がりました》


 名前:切開大地きりひらだいち

 LV:14

 性別:男

 年齢:16才

 種族:人族

 職業:開拓師

 スキル:なし

 称号:<異界の開拓者><転生者>

 称号効果:<開拓術・極>

 KP:215



「お、ここに来て二回目のレベルアップだな」


 そういえば、ステータスに変化がなければ、わざわざ表示してもらわなくていいかもな。

 

《次回からステータス表記の簡略化を行います》


 あれから二時間ほど右に左にと、謎の声に誘導されたまま道を歩いていると、広間にたどり着いた。


《マスター、ここはスライムがリポップするスライムハウスのようです。少しレベル上げをするのはいかがですか?》

 

 プランに言われて、ここで俺がよく知るスライムと戦闘している。


 一分も経たないうちに湧いて出てくる魔物のほとんどは、十数匹の青いスライムがほとんどだ。

 たまに、緑やピンク、赤、黄、紫色のスライムが出てくるが、戦い方は至ってシンプル。


 昨日討伐したインビジブルスライムと同じ方法で、傘で押し付けながら動きを封じ、聖剣で一撃。

 そんな簡単なお仕事を一時間ほど続けている。


 疲れて先へ進もうかと思った頃にレベルが上がり、体力が回復して、そのまま続けていた。


「あれ、もう出てこないのか?」


 よほど狩りまくったのか、突然リポップしなくなった。


「そろそろ先へ進むとするか」

《マスター、お待ちください。大きな魔力反応を察知しました》


 広場の中央から魔法陣が出現し、見たことがないスライムが現れた。


「ん? 銀色のスライムは初めてだな。ちょっとデカいが一匹だけだし問題なさそうだな」

《マスター、あの魔物はシルバースライムという希少種です。魔力量を計測するとスライムハウスのボスと推定します》

「このダンジョンの中ボスってとこか」


 見た目はスライムに変わりないし、帰らずの森あの時の魔獣のような威圧感も感じないので、俺は冷静そのもので答えた。


「ちなみに俺でも勝てる相手か?」

《かなりの硬度がありますが、聖剣であれば討伐可能です》


 討伐できるなら逃げる必要もない。


 これまで色々なスライムが出てきたが、色が違うだけですべて膝下サイズの小さいヤツだった。


 コイツは、腰の高さまであるデカいスライムだ。


「ま、色やサイズが変わってもやり方は同じだな」


 俺は開いた傘を正面にして突撃する。

 相手に触れさえすれば、そのまま上から傘で押し込み、動きを封じたところを聖剣で突き刺す。


 今までのスライムもこれで瞬殺してきた。

 

「キュイッ」


 シルバースライムに傘が当たるその瞬間。

 甲高かんだかい声で鳴くと同時に、見えないほどの速度で回避された。


《マスター、右からきます。避けてください!》

「速すぎて見え…がはッ……!」


 俺の横腹に凄まじい衝撃が走ると、そのまま吹き飛ばされてしまった。


「……い、痛ててて」


 めちゃくちゃ痛い。

 車にはねられたかと思ったぞ。(前世あの時は死んだが)


《マスター、大丈夫ですか?》

(あぁ問題ないな。って、なんで怪我してないんだ?)

《マスターのレベルが上がり、身体能力が向上していることもありますが、装備オーパーツのおかげでダメージを受けることはほぼありません》

「このスーツすげえ……」(ただし痛い)


 俺はすぐに起き上がり、横腹を押さえながらシルバースライムを見る。


「キュイキュイーン」


 シルバースライムは、ゼリー状の全身をブルブル震わせながら鳴き声をあげた。


 俺を挑発しているかのように「かかっておいでよ。ボクちゃん」と聞こえ、無性に腹が立った。


「舐めやがって!」


 俺は再び傘を正面にして突撃した。


「キュイキュ」(ねー、また同じ攻撃なの?)


 シルバースライムは、先と同じく見えないほどの速度で傘を避ける。


「キュイーン!」(おバカさんだね!)


 俺はワンタッチで折り畳み傘を閉じて、その場でしゃがみ込んだ。


「キ、キュインッ……!?」(な、なんでッ……!?)

「おバカさんはお前の方だ」


 シルバースライムは何が起きたかも分からないまま、光となって消失した。


 俺に体当たりすることは分かっていた。

 その場でしゃがみ込み、聖剣だけを天井に向けて握っていた。

 後は聖剣に飛び込んで来るのを待つだけで、自ら真っ二つとなり、戦闘終了というわけだ。


 何というダサい勝ち方だ、なんて思わない。

 勝てば官軍、負ければ賊軍どころか死が待つ世界だからな。


《マスターのレベルが24に上がりました》


 LV:24

 スキル:<剣技LV3><盾技LV2>

 称号:<異界の開拓者〉<転生者><スライムキラー>

 称号効果:<開拓術・極><?><スライム与ダメージ2倍>

 KP:315



「おぉ! すげえレベル上がったな。それにスキルも称号も増えたぞ」

《シルバースライムは経験値特化の魔物のため、レベルは飛躍的に上昇します。それよりも不思議なことがあります》

「不思議なこと? ま、歩きながらでも聞くことにするよ」


 ◇


「なるほどな。そういうことか」


 再び歩き始めて一時間。

 あれからプランが不思議に思ったことを話し合った結果、ようやく答えが出た。


 まず、スキル<剣術LV3>の獲得スピードが尋常ではないということ。


 これは<スライムキラー>という称号も同じことがいえるが、どうやら<転生者>が影響しているのではないか、ということだ。


 本来<剣術LV1>を身につけるだけでも、どれだけ早くとも半年の修行が必要みたいだ。


 俺は昔テレビで見たものを、見よう見まねで剣を振っていただけ。

 魔物を100匹以上倒したとはいえ<剣術LV3>を獲得するには、さらにその100倍以上の経験と、たゆまぬ努力が必要らしい。


 後、<盾技LV2>は、その……傘だ……。


 つまり<転生者>は、能力の獲得速度のがあるという説だ。

 称号はさらに年数を要するため、おそらく間違いないだろうというのが、プランがいう不思議の答えだ。

 

《さすがマスターです。様々な力を要するだけでなく、あのフロアボスも本来であればS級冒険者でも手を焼くほどの魔物。そのような魔物を聖剣があるとはいえ、たった二分足らずで、さらに見たこともない奇策で討伐したのは偉業です》

「その場でしゃがんだだけなんだが……」


 プランと話をしていると、またも謎の声が聞こえる。


『そのまま真っ直ぐお進みください。私は扉の奥でお待ちしています』


 ◇


 現在の開拓ポイント:残315KP。

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