第9話 準備って大事

「この中だと、やっぱこれかな」


 広場に戻ってきた俺は、廃屋から見つけた武器を見ている。

 武器に使えそうな物は、剣が12本、槍10本、弓4張、弓矢と鎌、クワは大量にある。


 その中でも、一際装飾が施された剣を手に取った。


「こんな錆びついた剣でもないよりマシだよな」


 <マスターの必須品>

 研魔剤けんまざい 50


    <残265KP>

ーーーーーーーーーー


 研魔剤けんまざい:錆びた武器も一塗りすれば元通り。

 効果:装備品の劣化を元に戻す。

 必要KP:50



 何これ? 

 普通のタワシにしか見えないんだが、もしや青タヌキのアイテムなの?

 凄すぎるチートアイテムを手に入れた俺は、早速適当に擦ってみる。


「おぉッ! ピカピカに輝いてるぞ」

《マスター、その武器は〈聖剣エルエス〉と呼ばれる伝説の武器です》


 聖剣エルエス? 

 聞いたことがない武器だな。

 エクスカリバーとかデュランダル辺りは、ラノベやゲームで鉄板なんだが。


 ま、聖剣と呼ばれるからには相当な価値があるはず。


 なぜこんな村に置いてあったんだろうか? 

 って、今考えても仕方ないか。

 運がよかったとでも思っておこう。


 試しに聖剣で素振りをしてみる。

 剣道や格闘技の経験も、ましてや喧嘩もロクにしたことがない俺でも、見えないほどの速度で振り回せるほど軽かった。


 試しに廃材を切ってみると、スパンッと豆腐のように切れた。

 コレなら俺でも戦えそうだ。


「準備は整ったな。と、その前に……」


 早くしないと、例のブツが出てしまう。

 俺は急ぎ召喚した。


 <マスターの必須品>

 和式便所   20

 洋式便所   50


    <残215KP>

ーーーーーーーーーー


 洋式便所:ティッシュ&ウォシュレット搭載。

 効果:爽快感(中UP)

 必要KP:50



「葉っぱじゃなくて助かった」

  

 和式はポイントを節約できたが、俺はもっぱら洋式派なんだ。

 ただ、家屋(小)我が家より高消費KPお高いトイレとは一体……。


 それに慌てて井戸の隣に設置したのも失敗だ。

 家の目の前に、井戸、五右衛門風呂、そしてトイレ。


 慌てすぎたうえに出来てしまったこのレイアウト。


「プラン、配置は変更できないのか?」

《現状では不可能です》

 

 うっ、やっぱ無理か……いや待て、現状といったな。

 いつか配置が変えれるかもしれない。

 今後に期待しよう。


《任務:〈No6〉を達成しました》

 任務:〈No6〉排泄をしよう。

 達成条件:便所を召喚して排泄する。

 達成報酬:10開拓ポイント。



 もはや任務の定義すら怪しい。

 ちょうど昼飯の時間だからと、腹ごしらえをすることにした。


 腹が減っては戦は、というやつだ。


【冷たい料理は冷たいまま、温かい料理は熱々ホカホカがモットー! いざ、レッツチャレンジ!】


 鉄:消費期限切れのゲテモノなど。

 銅:おにぎり、カップ麺、駄菓子など。

 銀:食堂人気メニュー、カフェ名物ロコモコなど。

 金:特製バーガーセット、特上寿司盛り合わせなど。

 虹:帝王の牛丼、超越ピッツァ、究極焼肉一人前など。



 見た感じだとランチメニューに変わっている。

 ただ、ぶっちゃけ鉄の蓋以外なら何でもよかった。


「よしッ! また金蓋が来たぞ!」


 昨夜と変わらず、金蓋のトレイが出てきた。

 今回も当たりだ。

 それに光の調整がされてちょっと眩しいな。と思う程度になっていた。

 

 今回はハンバーガーとポテト、コーラの特製バーガーセットだ。

 

「…………ごちそうさまでした」


 今回も美味すぎた。

 もはや中毒になりそうなほどの暴力的美味さに、五分とかからず完食した。


 よくある異世界転生もののストーリーでは、主人公が畑を耕したり、果実が成る木を育てたりするものが多いが、俺はこのガチャでなければやっていけそうにない。


「さあ、行くか」


 準備は整った。

 俺は左手にオーパーツ折り畳み傘の盾、右手に聖剣エルエスを装備して、祭壇の階段を下りていった。


 ◇


「ここって、まさか……」


 石畳みの通路。

 石壁にかけられた松明。


《マスター、ここはダンジョンです》

「やっぱダンジョンかよ……」


 ゲームで見たままの光景ですぐに分かった。

 歩くたびに足音が響き、より一層恐怖を掻き立てられる。


(プラン、魔物の気配はないか?)

《近くに反応はありませんが、奥に複数の反応があります》


 慎重に進んで行くこと一時間。

 ダンジョン特有の罠や魔物と遭遇することもなく、進んでいる。


(それにしても何も起きないな)

《マスター、気を抜かないでください。トラップや魔物の反応はありませんが、ここまで何もないのは不自然です》


 プランによると、ダンジョンは魔物がウヨウヨいるため、五分も歩けば必ずエンカウントする。


 あの帰らずの森と同じだが、それが一切無いことを考えると、ここは普通のダンジョンではなさそうだ。


 しばらく歩くと分かれ道に出くわした。


(右か左、どっちか分かるか?)

《魔力反応があるのは右です。左の道は何も反応しません》


『右に曲……が……て…』

「うわッ、また声がしたぞ。お前は誰だッ?」

『………………』


 反応なしかよ。

 右に曲がれって聞こえたと思うが、さてどうするか。

 

 あ、そうだ。

 声の主がどこにいるのか分かっているなら、プランならどんなヤツか分かるんじゃないのか?


《このダンジョンは拠点外のため、魔力反応だけを探ることは可能ですが、姿形までは分かません》


 拠点外なら姿形までは分からないのか。

 それなら俺が森にいた時は拠点はなかった。


 あの時、プランはなぜここに村があると分かったんだろう。


《この場所に大きな魔力反応を感知したので、村と推測したまでです。結果的に村があってよかったです》


 憶測だったのか……。


 ま、元々声が聞こえたからここに来たわけだし、罠と分かっていても、行くしかないよな。


 ◇


 現在の開拓ポイント:残165KP。

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