第2話 電車で寝過ごして、「小旅行」。スマホのKSも、謎だし。そして、言ってはならないことを言ってしまう。「お前の店は、もう死んでいる!」

 コスプレ喫茶で働くのも、楽じゃない。

 気楽な高校に通っていた影響が、彼を、緊張感のない人間にしてしまったんだろうな。

 過保護な世代は、こういうときに痛い。

 この仕事の採用面接でのことが、思い出される。

 「モナタ君?」

 「はい!」

 「モナタ君は、どんな高校生だったの?」

 「どんな、ですか」

 「そう。たとえば、成績…勉強は、どうだったの?テストとか」

 「学校のテストは、いつも、一夜漬けでした」

 こういう気楽なところが、「受けた」。

 「君、面白いねえ。はい、採用」

 同じく面接のときに、「小旅行」について話したのも、「受けた」。

 「モナタ君は…」

 「はい」

 「電車で、高校に通っていたんだったね」

 「はい」

 「疲れて、車内で寝過ごしたりした経験はないかい?」

 「はい!何度も寝過ごして、小旅行をしておりました!」

 この言い方も「受けて」、気に入られたんだろうな。

 「ははは…。モナタ君は、子どもっぽいねえ」

 ここで、疑問!

 「子どもっぽい」

 考えれば、謎の言葉じゃないか。

 「大人って、何?何歳からが、大人?」

 年齢は、面白い。

 「年齢を、教えてください」

 聞かれて、ビミョーな答え方をしてくる人がいる。

 「この子の、年齢ですか? 1歳と、 3ヶ月です」

 保護者が、答える。

 でも、こう答える保護者は、まずいない。

 「50歳と、 3ヶ月です」

 いないなあ。

 他にも、コスプレ喫茶で働きはじめて、客に教えてもらえたことがあった。

 「店員さん?」

 「あ、はい。何でしょう?」

 「LINEも、不思議です」

 「LINE、ですか」

 「既読スルーのKSって、英語的には、KSじゃなくてKTですよね?なのに何で、KS?」

 「あ…たしかに」

 世の中、おかしなことばかり。

 「いくつもの謎を解決するためには、レベルを、もっと上げなければならないんじゃないか?」

 オタクな、決心。

 しかし…。

 「この国では、オタクにたいする風当たりが冷たすぎる。それが、邪魔をしていると思う」

 彼なりの、陰謀論。

 と、そのタイミングで、ケータイに着信が入った。

 プルルルル…。

 「モナタ君?来週のシフトのこと、なんだけれどさ…」

 いつもの、店長の声だ。

 そうして、彼の口から出た言葉が、これだった!

 「久しぶりだな、店長!お前の店は、もう死んでいる!」

 翌日の、仕事先で。

 「モナタ君、さ…?」

 「は、はいい!店長!」

 「昨日、さ」

 「はいい!」

 「お前の店は、もう死んでいる!って、言ったよね?」

 「はいい!」

 「うん。ああいうの、好きだな」

 「やった!ラキスタ!俺も、好きです!」 「むむっ!」

 「店長?」

「何かね?」

「俺、今から、女子高生になっても良いですか?」

 「うん、良いだろう!」

 「やった!コスプレ喫茶、万歳!」

 「いやーん!」

 気付け!

 そういうことをしているから、客が減っているんだよ!

 だから、こう言われるんだよ。

 「ざんねんな店」

 店長が、楽器のタンバリンを握りながら、彼の肩に手を置いた。

 「パワーだ。パワーだ!オーラバトラー、タンバリン!知的生命体のパワーを、授けよう!」

 そして最後に、一言。

 「がんばれよ、モナタ君!」

 (店長?お前もな)






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きっと、コスプレ喫茶疲れ。医者に、あんなことを言われたし。宇宙人の陰謀なのか? 冒険者たちのぽかぽか酒場 @6935

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