きっと、コスプレ喫茶疲れ。医者に、あんなことを言われたし。宇宙人の陰謀なのか?

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 「俺のラキスタ(ラッキースタイルという意味、らしい)は、どこにある?」コスプレ喫茶で悩むオタク男子の、やばい時間がはじまりました。

 オタクな男子の悩みは、深っ。

 「大学を出たって、良いことが見えそうにない。本当に好きなこと(オタクな魂)を、レベルアップさせられる自信もない!」

 モナタ君は、悩みの中。

 「俺のラキスタ(ラッキースタイルという意味、らしい)は、どこにある?こうなったら…」

 気付けば、彼は、コスプレ喫茶で働いていていた。

 彼は、こう考えたのだ。

 「社会で働くのは、厳しい。なのに俺は、何なんだ?レベルも、装備も、充分とはいえない(こういうところが、オタク思考なんだよな)。魔法だって、使えやしない(やっぱり、オタク思考)」

 だから、こうなった。

 「世界を救うためには、コスプレ喫茶で働いて、経験値をかせぐしかない気がする!」

 ここは、ツッコミどころ。

 「なぜ?なぜ、コスプレ喫茶?」

 コスプレ喫茶での仕事は、ほぼほぼ、接客業だ。

 「客個人個人のもつ世界観を、良い感じに演出してあげる仕事」

 コスプレ喫茶の店員たちは、客の思い描く世界観に合ったような服を着たりして、その世界の住人のようなキャラになりきる。

 なりきったその姿で、店員たちが、客たちのいるテーブルを回ったりする。

 客たちは、大満足だ。

 この店の特徴は、「コスプレをして、客の要望にこたえるその店員」が、モナタという男性だということか。

 「執事様などの男性キャラ専用で接客する店。だから、男性が中心に働いている」というわけではなかった。

 あくまで、彼、モナタがコスプレ好きすぎたというだけ。

 オタクな道は、けわしい。

 そんなこんなで、ここ、とあるコスプレ喫茶は、こんな名前で呼ばれはじめた。

 「ざんねんな店」

 店長とモナタ君、がんばれ!

 しっかりと女性になりきって、客を増やすことが、できるのか?

 「どうしよう、モナタ君!」

 「何ですか、店長?」

 「君と私ががんばればがんばるほどに、客が、減ってきている気がするんだ」

 「宇宙人による、アブダクション?」

 「…うーん」

 「俺、ガキすぎでした?」

 アニメオタクとか漫画オタクの子は、なぜか、ガキ扱いされることが多い。その点だけは、彼も、承知していたらしい。

 「店長!」

 「何かね?」

 「男性系のコスプレのストレスで、歯が痛くなってきました!」

 「モナタ君?それは、仕事のせいじゃないのでは?」

 店長は言ったが、信じて良いものか?

 「店長?」

 「うん」

 「正解を、教えてください!やっぱり、宇宙人の陰謀じゃないんですか?」

 クリニックに、直行。

 「…あら、あら。モナタさんは、歯が痛んでいますね」

 「先生!」

 「何でしょう?」

 「やっぱり、仕事のせいですよね?」

 「いえ…。コスプレ喫茶の仕事で、歯が痛くなるとは思えませんが」

 医者も、店長と同じようなことを言った。

 「なかなか、やるな…。宇宙人の陰謀が、ここまで広がっているとはな!」

 女医の顔が、グレイと呼ばれる宇宙人にも見えてきた。

 「モナタさん?」

 「何ですか、先生?」

 「 MRI検査で、身体の画像を撮ってみましょう」

 「 MMR?」

 「ちがいますね」

 「冗談ですよ、キバヤシ先生?」

 「それも、ちがいますね。私の名前は、キバヤシではありません」

 「それで、先生?」

 「はい」

 「俺は、身体から何を取れば、良いんでしょうか?」

 「あなたの心の傷を、取ってください」



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