第103話 社畜、教官になる
「わかりました。そういうことでしたら業務量と時間を調整しましょう」
「ありがとうございます」
翌日。
「ちょうどいいタイミングです。そろそろ廣井さんにも本格的に現場の子たちの指導をお任せしたいと思っていたんですよ。今回はその一環ということになりますね」
「そうだったんですか」
まあ配属時に俺の仕事内容は「魔法少女の育成とマスコットの管理」と言われていたからな。
もしかして現場に出て、場合によっては俺も妖魔とか怪人と戦うことになるんだろうか。
以前のように。
まあ、それは別に構わないが……
いずれにせよ、これまでの仕事内容はデスクワーク中心で少々身体が
ちなみに以前もらったマニュアルには、研修プログラムは座学と実戦指導に分かれていた。
座学については教本的なものも準備されているから教えることに不安はない。
実戦の方は先日ゴシックセイラこと加東さんの一件でざっくりどういうものか分かったので問題ない……というと語弊があるが、まあだいたいこういうものか、という感覚は掴んでいる。
まあ、戦闘経験だけはこちら側と異世界とで無駄に積んでいるしスキルの恩恵もあるので、魔法少女になって間もない子に教える分には問題ないはずだ。
で、朝来さんについては……これまではいろいろと
実力的にも、まだ彼女が暴れても鎮圧できるだけの力量差はあるし。
まあ、『バッシュ』は教えることができないだろうから戦闘の立ち回りを中心に教えていくことになろうだろう。
「それと……蒔菜さん以外にもう一人、廣井さんに教えて欲しいと言っている子がいるんですが、一緒にお願いできますか?」
「もちろん構いませんけど、どなたですか?」
「この前相談に来た、加東さんです」
「……ああ」
先日、郊外の廃神社で戦闘指導を行った子か。
あの子はあのときの戦闘でちゃんとトラウマを克服できたっぽいし、別に問題児でもないと思うが……
「実は最近の傾向として、妖魔の出現頻度そのものは微減傾向なのですが……そのかわりに一か所に軍隊でいうところの小隊規模――数十体まとめて出現することが多くなりまして。なので、各魔法少女でなるべく連携を取って行動するように現場部門で指示しているんですよ。そのうち、彼女たち以外にも何組かお願いすることもあるかと思います」
「マジですか……」
割と切実な事情による訓練依頼だった。
というか、複数人で連携しての戦闘とか、俺に指導を任せていいのだろうか?
一応それ系のスキルは備えているから、教えることはできなくないが……
こういうのはもっとこう、専門の人がやるべきでは。
まだ見ぬ、もうひとりの同僚殿とか。
しかし桐井課長は俺の胸中を見透かしたように付け加えた。
「あ、これは廣井さんの指導能力向上の訓練も兼ねてますからね。もちろん何回かは私が同行して指導しますからご安心ください。まあ、先日の加東さんへの指導を見るに心配してませんが……」
「なるほど、そういうことですか」
そうであれば是非もない。
確かにこの手の指導は人対人なので、頭で分かっていても実際にやってみないことには身につかないと思われる。
その辺りは普通のお仕事と変わらないな。
もっとも今回は二人とも顔見知りだ。
新規取引先との初顔合わせみたいに互いに探りを入れながらコミュニケーションを取っていかなくていいので気楽である。
「分かりました。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
そんなわけで、朝来さんと加東さん、魔法少女二人の戦闘指導を行うことになった。
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