社畜おっさん(35)だけど、『魔眼』が覚醒してしまった件~俺だけ視える扉の先にあるダンジョンでレベルを上げまくったら、異世界でも現実世界でも最強になりました~
第31話 社畜だけど今度こそやらかしてしまったしれない……
第31話 社畜だけど今度こそやらかしてしまったしれない……
「…………」
…………さて、どうしたものか。
ダンジョンでゲットした短剣は、ただの短剣だと思いきや、とんでもなくレアな骨董品だったらしい。
思わず『鑑定』に文句を言ってしまったが、こればかりは仕方がない。
ただこの手のアクシデントが多発するのは困るので、今後は『鑑定』のレベルを最優先で上げていく必要があると思った。
それはさておき、ロルナさんやフィーダさんである。
今のところ、二人はとても理性的だ。
いきなり俺を捕まえたり、問い詰めたりするような雰囲気はない。
今もこうやって俺が黙り込んでいるのをじっと待ってくれている。
ただ、この短剣の出所を話さずに解放されるのも難しそうな様子ではある。
そこを踏まえて、誤魔化すか正直に話すかを迷っている。
うーむ……
どちらの選択肢を選んでも、悪い方に転がる可能性はあるんだよな……
思い起こせば、聖女さんがあのダンジョンのこと『聖地』とか言っていた気がするし。
お花とか供えられていたし。
日本でも宗教的な理由から禁足地に指定されている場所とかあるからな……
『貴様、あの遺跡に土足で入ったのかー!!』みたいな流れになったらどうしよう。
とはいえ、誤魔化すのもあまり気が進まないのは確かだ。
こっちはこっちで、今は凌げるかもしれないが後々ボロが出てロルナさんの信頼を損ねてしまう可能性があった。
うむむむ……
俺はしばらく迷ったのち……正直に話すことにした。
「すいません、正直に言います。この短剣は、あの森の奥にある遺跡の……内部で拾ったものです」
「…………」
「…………」
…………あれっ?
なぜか二人が固まってしまったぞ。
怒られたり詰問されたりみたいな、悪い意味で想定したような態度ではなかったが……二人とも、なんか俺のことをお化けが出たみたいな顔で凝視している。
これはさすがに分かる。
どうやら今度こそ、俺は何かをやらかしてしまったらしい。
「あの……もしかして、あそこって入ったらダメな場所でしたか? でも、内部に入るための転移魔法陣も普通にあるし、特に柵とかもなかったし……もしかして、宗教的に重要な場所だったとかでしょうか? それならば本当に申し訳ないのですが……」
「いや、メディ寺院遺跡は特に禁域指定を受けた場所というわけではない。だが……」
「だが?」
困惑したように言葉を濁すロルナさん。
彼女はしばらく視線を宙に漂わせていたが、やがてためらいがちに口を開いた。
「ヒロイ殿。あそこに、遺跡内部に通じるような場所はない。もちろん転移魔法陣など存在するはずがない。何しろあの遺跡は五百年以上前のものだからな」
彼女が続ける。
「転移魔法陣があれば誰かしらが見つけているはずだ。もちろん貴殿が嘘をついていないのは分かる。だが……それゆえ、にわかに信じられる話ではないのだ」
「そうだぞ。あの場所がダンジョンならば、すでに俺らが探索し尽くしているはずだからな。ありえん話だ」
ロルナさんに、フィーダさんが同調する。
あー、そうきたかー……
そういえば俺の魔眼、普通の人が見えない扉とかが見えるヤツだったわ。
となると、あの魔法陣は外部からは完全に隠蔽されているか本来存在しないものだということだ。
それを魔眼が見破ったか、あるいは強制的に具現化させたということか。
最深部で転移魔法陣を見つけたときはダンジョンの扉を見つけた時のような灼熱感がなかったから分からなかったが、まあそういうことなのだろう。
あの感覚があるときと無いときの違いが分からないが、何か条件があるのだろうか。
まだまだこの魔眼の仕様には謎が多いな。
まあ、今はいい。
それよりも、どうやって二人にこの短剣の出所を信用してもらうか、だ。
となれば……まあ、俺ができることは一つしかない。
「あの……どうしても信用できないのでしたら、遺跡のダンジョンまで案内しますが……」
「なんだと!?」
「ほほーう?」
俺の提案にロルナさんは驚愕の声を上げ、フィーダさんは好戦的な笑みを浮かべた。
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