第20話 社畜、帰還する
「ふう……マジで疲れたな」
無事自宅に帰ってきたところで、どっと疲労感が押し寄せてきた。
どうやらステータスが上がったところで、疲労が溜まらなくなるというわけではないようだ。
ただ、身体が痛いだとか
ひと眠りすれば疲れも吹っ飛ぶだろう。
「じゃあ、ご飯にするか」
『フスッ!』
あ、これは完全に「はやくしろ」のフスッ! だな。
はいはい分かってますよー。
「クロには、これだ」
言って、俺は買い物袋の中から缶詰を取り出した。
帰り道の途中にあるドラッグストアで買ってきた、ワンちゃん用の缶詰フードだ。
今日はクロが大活躍したので、奮発して一番高いヤツを買ってきた。
まあクロは生物学上(?)犬ではないのでこれでいいのか分からないが、人間の食べ物をずっと与えるのには抵抗があるからな。
コイツの食べられるものが分かればいいんだけど……
どうやって調べたものやら。
鑑定先生のレベルを上げたら確認できるようになるかな?
それはそうとして、まずは食事だ。
俺はクロの為に床にお皿を置いて、その上に缶詰から取り出したフードを盛りつけた。
この手のフードって、匂いは本当に美味しそうなんだよな。
まあ、俺にはコンビニで買ってきた飯があるから問題ない。
今日は牛焼肉丼とチャーハン&激盛パスタの超漢飯セットだ。
『…………』
おっと、クロが「おまえふとるぞ」みたいな顔でこちらを見ている。
大丈夫だ、今日は人生で一番身体動かしたから問題ない。
このくらいならば大丈夫……のはず。
「さて、頂きます」
『…………』
俺が食べ始めると、クロもガツガツとフードを食べ始めた。
何も言わないのに待っているとか、賢すぎか? このワンコ。まあワンコじゃないけど。
それにしても、最近はコンビニ飯のクオリティも上がったよなぁ。
牛焼肉丼なんて、口の中に頬張るとなんだか炭焼きっぽい香りがしたりもするし。
チャーハンはいわずもがな。
激盛パスタは……とにかく量が多い。
いずれにせよ、独身おっさんの心強い味方だ。
まあ自炊もするけど。
「そうだ、今日のリザルトは……」
チャーハンを口の中に放り込みながら、俺はステータスを開示する。
《廣井アラタ 魔眼レベル:10》
《体力:345/350》
《魔力:250/570》
《スキル一覧:『ステータス認識』『弱点看破:レベル5』『鑑定:レベル4』『身体能力強化:レベル3』『異言語理解:レベル1』『明晰夢:レベル5』『魔眼色解除』 『魔眼光:レベル3』『威圧:レベル1』『模倣:レベル1』》
《従魔:魔狼クロ → スキルセット(1)『弱点看破』》
《現存マナ総量……40,000マナ》
《模倣:レベル1 により『隠密』を習得できます 取得マナ:5,000》
《模倣:レベル1 により『アンデッド召喚(スケルトン)』を習得できます 取得マナ:20,000》
《模倣:レベル1 により『ロイク・ソプ魔導言語(基礎)』を習得できます 取得マナ:500》
《模倣:レベル1 により『ドラゴンブレス(火焔)』を習得できます 取得マナ:25,000》
おお……!?
なんか新しい項目が出てきたぞ。
なるほど、『模倣』は見たり体験したりしたスキルを習得できるようになるスキルらしい。
これ、地味にチートな気がするぞ……
もちろん習得できるできないってのはあると思うけど。
で、習得できるスキルだけど……取得コストは総じて高めだ。
ただ、『ロイク・ソプ魔導言語(基礎)』というスキルだけはかなりお買い得のようだ。
ロイク・ソプてのは、たしか転移魔法陣を作った文明だったっけかな。
となると、この言語を習得すると転移魔法陣が使えるようになるとか?
まあ(基礎)ってついてるくらいだから、そんな虫のいい話にはならないと思うが……
他で気になるのは、『隠密』かな。
これは多分ミミックかスライムのスキルだろう。
これは、絶対に定時に帰りたいときに気配を消して事務所から脱出するときに使えそうな気がする。これはマストだな。
まあ、あとで絶対にバレるやつだけど。
それ以外のスキル――『アンデッド召喚』だとか『ドラゴンブレス』なんかはこっちの世界で使えるかと言うと微妙だし、取得コストが高すぎるからパス。
それに今のところ『魔眼光』で遠距離攻撃は間に合っているし。
で、マナをどう振り分けていくか、だが……まずは『鑑定』をなるべく強化したい。
これまでの経験で分かったことだが、なんだかんだ情報は生命線だ。
また異世界に行ったときには、多分必要になると思う。
だからまずはこいつにつぎ込んで、それからマナが余ったら別のスキルを取得する方向で。
ちなみにだけど、『鑑定』はまだ人に対して使ったことはない。
なんとなくだが、使ってはいけない気がするのだ。
いや、だってさ……
知ってはいけない情報とか知っちゃったら怖いやん?
適当な通行人に掛けたら実はソイツが殺人鬼だった日には、その日から多分寝られなくなると思う。
それとか、実は課長の趣味が……実は女装だったりしたらどうするよ?
もう二度と目を合わせて喋れない気がする。
だから、俺は多分今後も『鑑定』を人に使うことはないと思う。
それはさておき。
マナをスキルレベルアップとスキル取得に費やす。
《廣井アラタ 魔眼レベル:10》
《体力:345/350》
《魔力:250/570》
《スキル一覧:『ステータス認識』『弱点看破:レベル5』『鑑定:レベル6』『身体能力強化:レベル3』『異言語理解:レベル1』『明晰夢:レベル5』『魔眼色解除』 『魔眼光:レベル3』『威圧:レベル1』『模倣:レベル1』『隠密:レベル1』『ロイク・ソプ魔導言語(基礎)』》
《従魔:魔狼クロ → スキルセット(1)『弱点看破』》
《現存マナ総量……7,600マナ》
結局『鑑定』はレベルを2ほど上げることができた。
残りのマナは『隠密』と『ロイク・ソプ魔導言語(基礎)』の習得で使った。
あとのスキルは、今後のお楽しみということで。
……それと、『鑑定』がレベルアップしたことにより、ステータスの『鑑定』が可能になった。
ということで、手始めに『身体能力強化:レベル3』を『鑑定』。さてさて。
《身体能力強化……筋力・反応速度・思考能力などあらゆる身体能力を向上させる。大気中のマナ濃度により能力向上の割合が上下する》
……うん。
まあ、こんなものだよね。
とはいえ、説明の後半に記載された情報はかなり重要だ。
思い起こせば、ダンジョンの中ではやたら身体が軽かったり、軽くジャンプするだけで2メートル以上跳躍できたりしていたからな。
多分ダンジョンはマナ濃度が高いということなのだろう。
これについては、ダンジョンと現実世界、あとは可能ならば異世界で、どの程度身体能力に差が出るのかを試しておいた方がいいな。
そんな感じでスキルに『鑑定』を掛けたり用事を済ませたりしていたら、あっという間に就寝時間になっていた。
「ふあ……」
シャワーを終え、ベッドに寝転がるとすぐに眠気が襲ってきた。
クロもベッドにチョコンと乗ってきて、俺の側で丸くなり準備万端のようだ。
というかすでに寝息を立てている。
「…………」
そういえば、休日をまるまる何かに費やしたのはいつぶりだろうか。
少なくともここ数年は、休みになると日ごろの疲れを取るためにベッドでゴロゴロしているか、近所に買い出しにいくかのどちらかだった。
たしかに身体はクタクタだ。
だけど胸の中は充実感でいっぱいだった。
今日はぐっすり眠れそう。そんな感じ。
そして実際、夢も見ずに気づけば朝になっていた。
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