第7話 社畜、スキルを取得する

「……はっ!?」


 気がつけば朝になっていた。

  

 かなり長い夢を見ていたようだ。


 それに、やけにはっきりした夢だった。


 というか、めちゃくちゃ内容覚えてるんだが……


 その夢によれば。


 

「この左目、マジで魔眼だったのか……」


 

 いまだに真っ赤な視界の、左目を手で押さえる。

 

 まあ、変な扉が見えたり人の首筋に変なつるが巻き付いているのが見えた時点で普通の眼病でないことは分かっていたけどさ。



 ひとまずベッドから抜け出し、出勤の準備。


 それが終わった後に朝食のトーストを齧りながら、俺は昨日の夢の内容を思い出す。


 たしか、起きてるときでもステータスを確認したりマナの割り振りができるんだっけかな。



「……ステータスオープン」



 《廣井アラタ 魔眼レベル:3》


 《体力:120/120》


 《魔力:200/200》


 《スキル一覧:『ステータス認識』『弱点看破:レベル2』『鑑定:レベル1』『身体能力強化:レベル1』『異言語理解:レベル1』『明晰夢:レベル5』》


 《現存マナ総量……50マナ》



 うおぉ……


 マジで出てきたぞステータス……!

 


 目の前には、夢の中で出てきたものと同じ文字列が空中に浮かんでいる。


 一応、ステータスは両目で視認できるようだ。


 まあ、左目でしか見えないと見づらいから、これはありがたい。



 それにしても、俺のステータスって高いのか低いのか分からんな……


 こういうのは基準が欲しいところだ。ないけど。



 とりあえず、この『体力』っていわゆるHPのことだよな?


 よくよく考えると、HPってなんだ?



 ゲームだと敵の攻撃をどのくらい耐えられるかという数値になるけど、現実だと実際に強くなっている実感がない。


 まあ、体の耐久値が上がっていたりするんだろうか。


 殴られても痛くない、とか。



 正直、進んで試したいとは思えないな……


 まあ、それはともかく。


 俺の興味は、どちらかというと『魔力』だ。



 もしかして今の俺、魔法とか使えちゃうわけ?


 とはいえ、魔法の使い方とかわからないけどさ。


 

 そもそも、ステータスで確認できる『スキル』の中に魔法らしきものは見当たらない。


 もしかしたら、この中のどれかを使うと魔力を消費するのだろうか?


 いろいろ気になるものは多いが、これは試してみないと分からないな。



 ただ……スキルって普通に使っていいものなのだろうか?


 その辺はちょっと要検討である。



 あとは、この左目の色が元に戻ればいいだけどなぁ……


 とか思っていたら。



 《取得可能スキル一覧を表示しますか?》


 《はい/いいえ》



「おわっ!?」



 いきなり目の前に選択肢が現れた。


 どうやらステータス表示が俺の意思に反応するようになったらしい。


 これは便利だな。



 もちろん、答えは『はい』だ。


 

 俺がそう意識したのと同時に目の前に浮かんだ文字が消え、別の文字がどんどんと浮かんできた。



 《余剰マナ 50マナ》


  

 《取得可能スキル》



 《魔眼光:レベル1 30マナ》


 《威圧:レベル1 30マナ》

 

 《魔眼色解除 10マナ》

 

 《弱点看破:レベル2→3 200マナ》


 《鑑定:レベル1→2 50マナ》


 《身体能力強化:レベル1→2 50マナ》


 《異言語理解:レベル1→2 50マナ》


 《明晰夢:レベル5→6 1000マナ》



 とりあえず、現在取得できるスキルらしき項目はこれらしい。


 で、『余剰マナ』ってのはいわゆるスキルポイントに当たるものらしい。



 確か、夢の中では魔眼そのもののレベルを上げるときにも使用されていたように記憶している。


 おそらくだが、スキルポイントというよりは経験値とかそういうものに近いのかもしれない。



 まあ、単位が統一されているのは分かりやすくていい。


 で、どのスキルを選択するか、だが……当然決まっている。



「まあ、この中だったら当然『魔眼色解除』だよな」


 

 これこそが、俺の求めていたものだ。


 迷わず選択。


 すると一度全ての文字が消え、再度文字が出現した。



 《スキル『魔眼色解除』を取得しました》


 《余剰マナ 40》



 使い方は……おお、分かるぞ。


 どういう仕組みかは分からないが、スキルを取得した瞬間に頭の中に使い方が浮かんできた。


 とりあえず、そのやり方に従い、色が消えるように願いながら左目に力を込めてみる。


 すると……



「うん? これでいいのか?」



 なんか左目の熱っぽさが消えた感じがある。


 念のため洗面所で確認してみると、たしかに目の色が元に戻っていた。


 

「よ、よかった……」



 それを確認した瞬間、安堵で膝の力が抜けてしまった。


 両手を膝につき、どうにか立ちながらホッとため息を吐く。



 ちなみに元に戻そうとすれば簡単に戻った。



 これで今日から眼帯なしで過ごすことができるな。



 ちなみに、あと残っているポイント……マナは40だ。


 これは、今すぐ使用しなくてもいいんだよな?



 というか、魔眼そのもののレベルアップにも使うんだったっけ。


 ならば、当分はこのままでもいいかもしれない。



 新規スキルはどうも日常生活で使用する機会がなさそうなものだし、他のレベルアップにはポイントが少なすぎる。


 とりあえず、ある程度貯まるまでこのままでいいか。



 とはいえ、こうやってスキルとかポイントが出てくると成長させたいと思うのが人の性、というやつである。


 ……確か、マナは『魔物』を倒すと手に入れられるんだったっけかな。



 次の休日、またあの左目でしか見えないダンジョンに行ってみるか。


 今度は準備万端で。

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