第14話

 外周を走り、自宅に戻る。

「そろそろ、採集に行こうと思うんだ。」

「分かりました、サラさんから依頼されている分以外で、お店に必要な薬草はこちらになりあます。」

 ダイアがまとめてくれたメモを受け取る。

「見つけられるか分からないけど、採集に行ってくるよ。」


「これから森に入りますね~。今日は日帰りです。」

「分かった、この前のライターの話があるから、帰りに声かけてくれ。」

「了解しました。また帰りに。」

 ロバートと話をし森に向かう。


「森の奥まで行って、折り返して来ようかね。」

 薬草を探しながら、森の奥を目指す。


「冬が近くなったせいか、動物の痕跡が減ってきたな。」

 足跡等を見つけることなく、順調に採集を続ける。


「結構、奥まで来たな。ここから折り返すか。」

 今回は、日帰りでの採集だ。そこまで奥に行かずに折り返す。

「来た道を戻っても薬草は見つからないだろうし、少し道を変えて戻るか。」

 帰り道でも薬草を見つけながら森を出る。


「ただいま戻りました。」

 狩猟小屋に声をかける。

「おう、そこに座ってくれ。」


 ロバートに席を勧められる。

「この前貰った、ライター。あれ数を用意できるか?」

「できなくは無いですけど、まだ価格も決まってませんよ?」

「あぁ、分かった。とりあえず10個は用意してくれ、ここの猟師仲間たちがほしがってな。」

「分かりました。10個ですね、機巧師のクロウに伝えておきますので、受け取りをお願いしますね。」

「機巧師のクロウだな。分かった。」


「で、使ってみてどうでした?」

「火種を作りやすいのは良いな。メンテナンスも楽だし、多少手荒に扱っても壊れそうにない点がなお良い。」

「まぁ、そこは気を付けて設計しましたしね。」

「改善点はあります?」

「パイプに火を付けやすいように風防に細工をしてくれると助かる。」

「それは俺も感じてました。クロウに話をしてみます。」


 ロバートと別れ、サラの店を目指す。

「採集に行ってきたので、薬草を持ってきました。」

「あぁ、助かるよ。」


 サラに薬草を渡し、ライターの話を切り出す。

「この前、渡したライターの使い勝手はどうです?」

「あれは使いやすいね。もう2、3個あっても良いかな。」

「機巧師のクロウに注文をしておきますね。まだ価格も決まってないですが。」

「機巧師のクロウだね、分かった。店を覗いてみるよ。」


 サラの店を出て、クロウの店を目指す。

「クロウはいるか?」

「あぁ、こっちに入って来いよ。」


 クロウに招かれ、工房へ入る。

「狩猟小屋の猟師たちから10個、調薬師のサラから2、3個欲しいと注文があったよ。」

「そうか、思ったより反響が良いな。」

「サラは使いやすいと褒めてたけど、猟師からはパイプに火を付けやすいように風防を改良してほしいとリクエストがあったよ。」

「確かに今の形はパイプに火がつけにくいよな。少し改善策を考えてみるよ。」

「あぁ、助かる。猟師とサラにはクロウの店に行って欲しいと伝えておいたよ。」

「分かった、それでいい。」


「で、だ。」

 クロウが居住まいを正し、話を切り出す。

「このライターのレポートを提出して、機構と意匠の独占権を獲得したよ。」

「おぉ、おめでとう。」

「ここからが、本題だ。独占権を取れたので、大々的に売り出そうと思う。アイデアを出してくれたので、利益を配分したいと思っている。」

「そうか、助かる。」

「売値は80リンを考えている。原価は40リンぐらいだ。これから量産するともう少し原価は下がると思う。加工した火打石5個を4リンとライター用に配合した油140ガラを20リンで売るつもりだ。」

「なるほど。」

「ライターの利益の6割を渡そうと考えてる。もちろん付属品の売り上げも含めてだ。」

「そんなに良いのか?」

「あぁ、アイデアを渡してくれたんだ、本当は7割でもいいんだが、こちらも生活があるかなら。」

「分かったよ。振り込みは調薬師組合に口座があるからそこにお願いして良いか?」

「調薬師組合だな。分かった。」

「予想では、どれだけ売れると思う?」

「帝都だけでもかなりの数になると思う。取り分は期待して良いぞ。付属品で息の長い商売もできそうだしな。」

「それは良いな。」


「ライターを1つ分けてくれないか。」

「あぁ、良いぞ。持っていけ振込の時に引いておくよ。」

「助かる。」

 クロウの店を出て、自宅に戻る。


「戻ったよ。」

 自宅に戻り、ダイアに声をかける。

「サラには薬草を渡してきたよ。残りはうちの分だ。」

「分かりました。調合の方をよろしくお願いしますね。」

「あぁ、これから調合を始めるよ。それと、このライターを使ってみて欲しい。クロウと一緒に開発したものなんだ。」

「ライターですか?」

「あぁ使い易いと狭い範囲で評判なんだ。」

「使い易いんだか、使いにくいのかはっきりしてほしいんですが。」

「まだ正式に発売する前で数人にしか配って無くてな。渡した人からは好評だよ。」

「分かりました。使ってみます。あと、木工組合の方が来て、庭に木人を据え付けていきましたよ。」

「分かった。あとで確認しておくよ。」


 調薬を終わらせ、庭に出て木人を確認する。

「縄張りしてた場所に置いてくれたようだな。これで庭で修練ができるようになったな。功夫を積まないと。」


 店に戻り、ダイアに声をかける。

「木人の据え付けを確認したよ。」

「確認ありがとうございます。」

「問題なかったから、これから木工組合に行って受領書を渡してくるよ。」

「わかりました。」

「ついでに畜産組合に行ってビツーを買ってくるよ。」

「わかりました。戻ったら教えてください。」


 店を出て、木工組合を目指す。

「木人の据え付けをお願いして、問題が無い事を確認したから、受領書を持ってきました。」

「ありがとうございます。こちらで受け取りますね。」


 木工組合の次は畜産組合を目指す。

ビツーを飼いたいんだが。」

ビツーです? 肉ですか生体ですか?」

「生体の方で。」

「それならあちらの窓口で買えますよ。」

「ありがとう。」


 指定された窓口に向かい、雄を1羽、メスを3羽、購入する。どうやら明日持ってきてくれるそうだ。


「戻ったよ」

 店に戻り、ダイアに声をかける。


ビツーは明日持ってきてくれるらしい。」

「分かりました。」


 少しずつ生活基盤が整ってくるのを感じつつ1日を終える。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仙人のように暮らしたい @Baze1982

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ