ニックネーム
ナナシリア
ニックネーム
僕が表に出している僕は、
僕は常に、表に対しては好青年かのような振る舞いをしているが、それは当然、本当の僕の姿ではない。
「名、今日のテストどうだった?」
僕は君たちとは違い、余裕で平均点を超えている。本心ではそう思っているが、当然それを正直に話すことはなく。
「赤点ぎりぎり。勉強しなきゃまずいかも」
「マジ? 俺今回平均点超えてた!」
それが普通だ。
「すげえ、勉強教えてよ!」
心の中に腹黒い本名を隠していても、適当に共感さえしておけばこの世界から外されることはない。
それを弁えていなくて、嫌われている生徒が僕の隣には座っている。
「隠村くんは彼よりも高得点なんでしょ。なんで言わないの」
「なんでそんなことを言うんだ? 正直に言ったらグループから外されることは間違いない」
「隠村くん、ダサいね」
「は?」
意味が分からない、この少女は、なんで僕のことをダサいって言うんだ?
「仲間外れになるのが怖くて、だから嘘を吐くんだ」
「悪いか?」
「他人に頼らないと自分を保つこともできないなんて格好悪い」
彼女は僕を貶めようと、傷つけようというつもりでそう言ったわけではないようだった。
だからこそ僕は不快だった。
一理あると思ってしまって、それで他人に頼らないと自分を保つこともできない自身を省みざるを得なくなって。
でも僕は少しずつ、嘘をなくしていこうと本名を名乗った。
——だというのに。
「先日、いじめで亡くなった生徒がいる」
僕の隣の席は空席だった。
いじめられて自殺したわけではなく、いじめがエスカレートして死に至ったらしい。
「お前が、一番だせえよ……」
物事をストレートに言いすぎたからだろう。だからといって殺すのはやりすぎだと、いじめの加害者に怒りがわいた。
でもそれより、他人に頼らないでも自分を保てたからこそ、いじめられて不運にも殺されてしまった。
なんと格好の悪い。
あんなことを言っておいて、勝手に死ぬとは。
「おい隠村、どこに行く!」
幸いなことに屋上の鍵は開いていた。
冬の空気を精一杯に吸って、僕は彼女が嫌いだったが、彼女は僕にとって意外に大切な存在だったことを実感する。
後ろから教師が走ってきていた。
「待て、何をするつもりだ!? 早まるな!」
「心配しなくても」
彼女は死んだ。でも僕は――
「命あっての物種です。格好悪い真似はしませんよ」
死なない。本名を名乗らず、本名と言って他人にニックネームを教え込んでも、生きてやる。
ニックネーム ナナシリア @nanasi20090127
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