第∞話 呪いの結末【ぼくとあいつ】

「今回も、ぼくの大勝利だね」


 そう言うと、サッと衣装替えをして、袴姿からサロペットに変身した。もう髪も伸ばさないし、背だってうんと高いんだ。あいつなんかに絶対に負けないために、あれが復活する限り、ぼくはぼくとしてまた生まれ変わらなければならない。


 ぼくに関わってしまったたくさんの人たちの記憶を書き換えてまで。


 けど、今回はすごくよくあいつを追いつめることができたなと思う。どうして内藤を狙ったのかは想像できる。あいつ、どうしても待子を手に入れようとしていたんだ。本当に最悪なストーカーだよ。


 さてさて。ユイカの記憶に残った残像。薔薇の香りはなにかが起こるか、あるいは起こった後による、ぼくのすり込み。


 ピクトグラムも、実のところきみもパーツの一つだったんだよっていう遠回しなネタバレ。グルグル回っていたのは遺伝子めいた謎かけ。


 ついに陰陽師にまでなってしまったぼくだけど、さすがに疲れちゃったから。あいつをナマゴロシにするのは辞めにして、灰の欠片も残さずに燃やし尽くした。


【お、おのれぇ〜、ノゾミの分際でっ】


 きみはもうおしまい。ぼくはもう疲れてしまったから、しばらく眠ってしまおう。後片付けは、東原のお爺ちゃんと、宮司の佐々木くんに全部任せて。


 あいつが呪うことを覚えたのは解せないけど、呪いごと、あいつもこのまやかしの境内の中で祓われつづけていることになる。このぼくのすべてをかけて、永遠に呪いが解けないようにするために。


 明日、内藤くんをお家に帰してもらったら、もう誰の目にもこの神社を見ることはできない。この場所ごと封印して、結界を張ってもらい、不気味な祠をたくさん作って、誰も近寄れないようにする。もちろん、原っぱなんて簡単なものではなく、きちんと『私有地』と看板を建ててもらわなくちゃね。


 呪いなんて、もう本当に勘弁してよね。みんなも、怪しい噂なんかに肩入れしてはダメだよ? だってほら。あいつは人々の黒い感情を集めて、復活してしまうかもしれないからさ。


 おしまい

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あなたの端末機、呪われていませんか? 春川晴人 @haru-to

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